第90話  みんな満足

 砂浜でのんびり海を駆け周る元気な2人を眺めていると、波間から人魚さんがやって来た。実は人魚さんへのお願いとは、新鮮な魚介類を獲って来てもらう事なんだ。

 なんってたって今日のメインイベントは、白い砂浜でバーベキューだから!

 メリル王女、ミルシェちゃん、サラの3人は、尾びれでぴょんこぴょんこ飛んで近づく人魚さんの揺れる膨らみに釘付けだったけどな。

 うん……3人には、まだあの揺れは無理だね。

 イネスさんは、興味無さそう……戦うメイドさんには、男のロマンが詰まったお胸は不要な物なんだろうか?


『んちゃ~! 領主ちゃん、おひさしぶりっこ~!』

 しかし異種族ってのは、みんな相変わらず変な言葉だな……。

「お久しぶりです。新鮮な魚介類を持って来て頂き、ありがとうございます」

 ちゃんとお代は払いますよ? と、財布を取りだしたのだが、

『モチこんなのロハよロハ! バリ獲れたてめちゃうま激ヤバヤバよ! 食べてみそ!』

 まあ、そこまで言うのであれば、お言葉に甘えましょう。

 女性陣には人魚さんの宮廷語は、理解が出来ないらしい。

 まあ、そりゃそうだよな……俺だって完璧な理解は出来てない……こんなの雰囲気よ、雰囲気! なんとなくのニュアンスで理解出来ればオールオッケー!

 エルフやドワーフ達と同じように現状確認したりしつつ、婚約者2人を紹介したりして人魚さんと和気あいあいとした時間を過ごした。


 さて、そろそろ準備を始めましょうか。

 メリル王女とイネスさんは、バーベキューって何ですか? 状態なんで、ミルシェちゃんが説明してた。

 まあ、以前ミルシェちゃんと家族達とでやった時は熊肉で肉肉フェスティバルだったけど、今度は海鮮BBQ!

 土の精霊さんに竃を作ってもらい、火の精霊さんが薪に火を点け、煙は風の精霊さんが真っすぐ上に抜いてくれる。 

 水の精霊さんが綺麗に洗い流した魚介類を、イネスさんが捌く。

 そして俺が持ってきた野菜と一緒に串を打って、ドワーフさんに貰った調味料を塗って火にかける。

 やがてジリジリと焼けた味噌や醤油の香ばしい匂いで、みんな口から涎が……王女様、ミルシェちゃん、はしたないですよ? イネスさんも…ちょっと待ってね。


 焼きあがった物を皆の皿に乗せると、夢中で喰らいついた。

 うん、いい食べっぷり! どんどん焼くから、腹いっぱい食べて!

 俺は、BBQ奉行とでも言ったらいいのか、只管焼き続けました。

 もちろん、合間につまみ食いはしたけどね。

 ハマグリっぽい貝がめっちゃ美味! 焼いてちょっと口が開いた所に、しょうゆをたら~り…グツグツいったら、おつゆと一緒にお口の中に!

 ああ~最高! これを肴に酒が飲めたら最高なんだけどなあ。まだ子供だからね。

 

 そうそう、バーベキューしながら色々と話をしてたんだが、何人かの人魚さんが妊娠したらしい。

 めっちゃ喜んでたけど……それって、もしやあの風俗街で?

 え? 効率よく繁殖できる良いシステムを作ってくれてありがとう?

 いやいや、そんなシステムじゃないから!

 風俗街への受け入れを増やして欲しい? ローテーション待ちの人魚さんから苦情が出てる? あんたら、どんだけ繁殖したいんだよ!

 話を聞けば人魚さんの生態はかなり特殊で、異種族との交配でも100%人魚さんが生まれるらしいんだが、生れた人魚さんの99.99%が女だって言うんだから、男性を求めるのは……まあ仕方が無いのかもしれないけど。

 妊娠や出産の話のあたりで、女性陣全員が滅茶苦茶食いついてたけど……人魚さんみたいな肉食系女子になって欲しくないなあ。

 あんま不用意にツッコミ入れると藪蛇な気がするから、スルーしとこ。

 ちょっと人魚さん、男を悦ばせるテクニックとか教えないでいいから!

 2人にはまだ早いから! え? ちゃんと知っておかないと夫婦の危機? 

 そもそも、まだそんなことしてないって!

 何で2人とも残念そうな顔してんの! ちゃんとした知識は必要? そりゃそうだけど、もうちょっと純真無垢な少女でいようよ!

 ちょっとイネスさん、知らん顔してるけど聞き耳立てててるの知ってるからね?


 新鮮な魚介類を使ったバーベキューは、人魚さん含めて大好評だった。

 真っ白な砂浜でぽんぽこりんに膨れたお腹の女性陣が、陸に上がったアザラシみたいに転がってた。

 ちなみにデザートにヤシの実を割ったら、全員飛び起きてココナッツジュースと白い果肉を貪り喰ってた。

 いや、ココナッツの果肉にはダイエット効果が有るなんて言ってしまった俺が悪いんだが、食ったからと言って必ず痩せるとは限らないんだけどなあ……。

 特に、ぽんぽこりんなそのお腹には即効性は無いと思います。

 

 遠くに潮を噴き上げるクジラを眺めながら、のんびり木陰で食休み。

 サラは大胆不敵にも、イビキかきながら昼寝してやがった!

 何故に主人よりもリラックスしてんだこいつ? お前は一応メイドなんだが……。 

 楽しい時間を過ごした俺達だが、本日の最終バスの時間も迫ってきたので、お家に帰りましょう!

 こうして一般人では決して見る事が出来ない保護地区観光ツアーは、好評のうちに幕を閉じる事となりました。

 うん、みんな満足してくれたみたいで良かったよ。


『まだこの時は知らなかったんだ……俺達に迫る新たなる脅威を……』

 何だサラ、その変なナレーションは?

 と言うか、新たなる脅威って……今まで何か脅威が迫ったことあったっけ?

『知らぬ間に背後に忍び寄る黒い影。背中を流れる冷たい汗。微かに聞こえる衣擦れの音。何かが確実に背後にいる。それが何かを確認したいが、振りかえりたくない。その衣擦れの音の主は、やがて俺に……』

 ゴクリ……。

『機動強化装甲メタルガード、次回【新たなる脅威との戦い】。君は、生き延びることができるか?』

 途中までホラー映画の予告かと思ったのに、まさかのガン〇ム次回予告かよ!

 いや……でも機動強化装甲って格好いいな。

 しかし新たなる脅威? 変わらないサラの胸囲なら知ってるけど?

『変わってますーー! 去年より5mm増えてますーー!』

 んで、また何か事件でも起きるのか?

『まさかのスルーですか!? まあいいです。まだ正確には分かりませんが、まあ起きるでしょうね。放っておけば万単位の人が確実に死にますよ~』

 めっちゃ大事おおごとやないか!

『さ~何か創りたくなったでしょ~?』

 だが断る!

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