第75話  おやすみ

 それまでの喧騒が嘘の様に静まり返った石橋の上、敵陣に人はもうほとんど残っておらず、俺と父さんは顔を見合わせ互いに頷くと、ゆっくりと自陣へと歩いて戻った。

 

「いや~最初トールヴァルドがネス様にご降臨してもらうなんて言うから、何の冗談かと思ったぞ。まさか本当に降臨されるとは思わなかった」

 まあ、神様呼びつけるってどんな不敬だって思うわな。

「今朝、ネス様からご神託があったんだ。無辜の民を死なすわけにはいかないからってね。よかったよ戦争が起こらなくて」

「本当だな~! ネス様、父さんのマント見てくれただろうか? ネス様はやっぱり美しいな~!」

 父さん、めっちゃネスが好きだもんね。

「見てなくても父さんの篤い信仰心は伝わってると思うよ……」

 ふぁ~……めっちゃ眠い……。

「そうかあ~! そうか~!」

 うん……ほっとこ。


 自陣の前まで戻ってくると、第三王子様を筆頭に偉いさんが揃って俺達を出迎えてくれた。

「ヴァルナル伯、トールヴァルド卿。此度は大任、誠にご苦労であった。其方らのおかげで誰一人欠ける事なく国元に戻る事が出来る。特に聖なるネス様の使徒トールヴァルド卿よ。これからもネス様によく仕えて欲しい」

 ははー! って、こればっかだな。

「ささ、疲れたであろう。幕舎でゆるりと休むが良い。この後は真アーテリオス神聖国の動きを確認次第、撤収することになるだろうからな。誰か、幕舎に案内せよ!」

 そりゃね、疲れてますよ……精神的にね。

 体も……そう言えば長旅終えて着いて早々だから疲れてるかも。

 だんだん意識が遠のいていく……もう限界寸前だよ……。

「そう言えばヴァルナル伯、陛下が先日仰っていたのだが……」

「……聞いておりますが、まだその話は・・」

 だめだ、瞼が重い……殿下と父さんが何か話してるけど、報奨金とかかなぁ……貰える物は何でも貰うけど・・。

「……トールヴァルド卿も如何かな?」

 ありゃ……聞いてなかった。

「申し訳ありません、殿下。少々疲れが出ておりますれば、少しなりとも横になりたいかと……」

 もうだめ限界……良く高速運転してる時にこんな事あったよなぁ……。

「おお、つい話し込んでしまったな。すぐ幕舎で横になるがよかろう。誰か案内を頼むぞ」

 ん……父さんが背負ってくれたみたいだけど……おやすみ…………


 ▲


 目が覚めると、辺りは真っ暗だった。うむ、寝すぎたね。

『知らない天井だ……って言わないんですか?』

 そんな使い古されたお約束なんて言う奴いるか?

『ラノベでは作者が1度は使いたいセリフのベストテンですよ?』

 俺ならこう言う……天井ボーナスまであと少しだ!

『18歳未満の方には分かりませんよ。それパチスロの話ですよね?』

 う、うん……。

『しかも。天井間際ってことは、何万円かはまってますよね?』

 そうですね……。

『R15タグなんですから、そういった話題はダメです! そもそもパチスロする人しか分かりません! パチンコ依存症ってしってます?』

 ごめんなさい……もうギャンブルは止めます。 

『でも面白いから座布団1枚あげましょう!』

 そですか……1枚もらえるんですか……なんか涙でそう。

 

 あ~変な格好で寝てたのか、体中が痛い!

 首もゴキゴキ鳴ってるよ、俺はおっさんか!? 

『え~前世と合わせると50歳を超えてますので、精神年齢は完璧におっさんです』

 うん、分かってたけどね。でもそうはっきり言わなくても良いと思うよ。

 サラは、もちっと言葉にフィルターかけた方が良いと思う。

『目の前の現実も見れない男が!』

 どっかで聞いたセリフだな……

『ここからいなくなれ!』

 あ……Zだ……。

『ボケにもツッコミにも切れがありませんね?』

 なんだろ、戦争が無事に終わってほっとしたっていうか、気が抜けたかもな。

 いくら寝ても寝たりない感じ。知らないうちに色々と溜まってたかもな。

『では思いっきり発散しましょう! きっと帰路も溜まるでしょうから、是非とも帰宅した暁には、私めにその溜まって滾った欲望を!』

 性欲じゃねーよ! ストレスだよ!

『すでに色々と道具も揃えてますよ……ぐへへへへ』

 ヤ・メ・ロ!

『私も欲求不満なんですよ~!』

 お前がその道具使え! 


「トールヴァルド、起きたか?」

 おっと、父さんだ。サラと遊んでる場合じゃないな。

 

 

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