第74話 太陽神様は激オコ!
『女神ネス様の招聘により、この太陽神まかり越しましてございます』
うさ耳ロリ巫女神が、ネスの前で跪いた。
『その方を主神と崇拝する真アーテリオス神聖国の教会の宗主に、我を排斥せんとする神託を下したか』
三文芝居の始まり始まり~! 言葉遣いとかよくわかんないから、もうてけとー!
『滅相もございませぬ』
『しかし我が眷属であるそこなトールヴァルドによると、宗主は太陽神の神託を受け、我が加護を与えておるグーダイド王国の信徒を滅せんと戦を仕掛けておるという。後ろを見よ』
ここでうさ耳さん、振りかえる。
『先ほどより見ておりましたが、確かにその様です。しかし私はその様な神託は降ろしておりませぬ』
真アーテリオス神聖国の兵士さん達が、え?って顔してる。
『では、神託を受けたと偽り罪もないグーダイド王国の民を害せんと企てた者には如何にせん!』
ちょっとネスさまオコにして、うさ耳は土下座っと。
『私の不徳と致すところ。我の名を使いて邪な教えを広めようなど言語道断! 直ちに欲に塗れ邪な企みをした者と真アーテリオス神聖国の民には神罰を。我が与えた全ての加護を取り消します』
これを聞いた真アーテリオス神聖国の兵士達は、一斉に騒ぎ始めた。
神の加護が無くなり、神罰まで下るというんだから、そら慌てるよな。
そもそも、宗主や教会関係者がグーダイド王国に神罰が下るだの邪教だのと騒いでいたはずなのに、今じゃ自分達が崇めていた神様に邪教扱いされている現状って、もう意味不明だろうからな。
しかし、あのうさ耳ロリを、完璧に神様と信じちゃったみたいだね。
空に浮かんで喋ってたら、まあ普通は信じるしかないけど。
さてここでちょっと神罰を下しますか。
『我、太陽神は聖なる女神ネス様への叛意はございませぬ。真アーテリオス神聖国には神罰を』
そう言うが早いか、振り向いたうさ耳幼女が手を振ると、巨大な雷が神聖国の軍の目の前に降り注いだ。
それはもう派手に大量に、目もくらむ閃光と耳を覆う爆音を軍勢の目の前に。
実はここからでは見えないのだが、遥か彼方の真アーテリオス神聖国全土にも降り注いでいる。
そして水の精霊さんが豪雨を、風の精霊さんが竜巻を、火の精霊さんが降り注ぐ火の玉を、土の精霊さんが真アーテリオス神聖国側だけ地震を起こす。
もう天変地異が纏めてやって来て、リーチ一発自摸タンヤオ平和三色一盃口ドラドラついでに裏ドラも1個乗って三倍満ってとこだな。
『この世界に麻雀は無いですけど?』
全自動雀卓創ってカジノに置くか?
『最近の若い子は麻雀知りませんからね……学生時代毎日ジャラジャラしてた大河さんとは違いますよ』
うるせ! 俺の学生時代は4人いたら麻雀が普通だったんだよ!
国境の河のあちらとこちらでは、まるで別世界。
神聖国軍は阿鼻叫喚の地獄絵図。
だけど怪我人ぐらいは出ても、絶対に死人は出さない様に精霊さんにもうさ耳にもいってるので、ちゃんと狙いは外してくれてる。
逃げまどって転んだりしたのまでは、責任持てんよ。
そろそろ良い頃合いかな?
「ネス様、太陽神様、畏れ乍ら申し上げます!」
俺の声は、この大騒ぎの中なぜかこの場に居合わせた全ての人の耳に届いた。
もちろん風の精霊さんに手伝ってもらったんだけどね。
「太陽神様のお言葉によれば、己の欲の為ネス様の信徒を害せんとこの戦を企んだ首謀者は、真アーテリオス神聖国の宗主とその側近や教会などの国の枢軸であると愚考いたします。その者達を排除すれば、きっと太陽神様の教えの下で民たちは真摯に祈りをささげ和を尊ぶ正しき信徒となるでしょう。どうか神罰はその邪なる者達だけにお願い申し上げます。騙された多くの民に罪はございませぬ」
俺が言い切ると、ネス様が、
『太陽神よ、止めよ!』
もう鼓膜が破れるかって大音声で叫んだ。
太陽神が再びネスの前に跪くのに合わせて、ハイ! 精霊さんストップ!
今までの騒音が瞬時に止み、静寂が訪れる。
『太陽神よ、この場の責任者を』
『は、真アーテリオス神聖国の責任者は何処に!』
太陽神様がこめかみに青筋を立ててオコで振りかえると、聖騎士の中でも豪華な鎧を着た騎士さんが恐る恐る橋に進み出て跪く。
「太陽神様、私が宗主よりこの戦の指揮を任された聖騎士団長べダムと申します」
こいつもゴリラだな……デッカ!
『べダムよ、この戦を企てた邪なる者はお主か?』
可愛いうさ耳ロリ神が、めちゃ怖い顔で責める様に言うと、
「その様な大それたことは考えた事もございません!私たちは命ぜられるままこの場に集まったのでございます」
まあ、そうだよな。兵士なんて駒だもんな。
『では、太陽神の名に於いて命ずる。この邪なる戦を企てた咎人達を誅し真アーテリオス神聖国より排除せよ! そしてグーダイド王国へ謝罪と賠償を行え! 我は気が長くは無い、この言葉の意味が分かるか?』
ロリ神様が激オコだぞ! って感じで言わせると、
「ははー! 直ちにこの戦を企てた者どもの首を捧げさせて頂きます! 太陽神様の御前、失礼いたします!」
言うが早いか、振りかえると聖騎士に、直ちに首を取って来いとか物騒な指示を出していた。
それが終わると、ゴリラ聖騎士さんは俺の所までゆっくり歩いて来て、
「女神様の使徒殿。此度は真に申し訳ございませぬ。今は太陽神様の命を急ぎ行わねばなりませぬが、終わりましたら改めて謝罪と賠償を行いたいと思いますので、グーダイドの国王様、並びにネス様には何卒お怒りを御収め頂きますよう、お口添え願いませんでしょうか」
ゴリラが子供に土下座しちゃったよ。
まあ、これで戦争も終わるはずだから、
「べダム聖騎士団長殿、私から間違いなく口添えをさせて頂きますので、今は神命に御尽力ください」
ちょっと格好つけてみました。
「有り難い。我が国に巣食う神に仇なす害虫を一掃してまいります!」
そう言って一礼した後、走って行っちゃった。
でも一掃はなぁ……。
『べダムよ、無駄に弑する事は無い。我の言葉に従えぬ者だけを誅せよ』
ちょっとブレーキ掛けとくか。あのままだったら大虐殺とか起きそうだからな。
太陽神様がじっと騎士団長を見つめ、静かだが力強い言葉を紡ぐと、
「ははーーー!!」
騎士団長さんが、またまた深~く頭を下げてから走りだした。
そんじゃ、ネス様と太陽神様の最後のお仕事。
『グーダイド王国の民よ、欲に塗れた争いや無駄な殺生をする事は許さぬ。罪を憎んで人を憎まずとは言うが、此度の元凶は許し難し。真アーテリオス神聖国の粛清が終わり次第、この争いに関しての報復は無論の事、遺恨を残す様な一切の言動・行為を禁ずる。邪なる物に欺かれし民に罪は無い。しかと心得よ!』
ネス様の表情は変わらないけど、口調から言う事きかなかったら怒るぞ? って分かるぐらいの迫力を出させてみたが、上手くできてるかな?
『此度は、我の目が行き届かず信徒が迷惑を掛けた。後ほど信徒より知らせが届くであろうが、我に免じ宥恕してやって欲しい』
太陽神様にもダメ押しでお願いさせておく。
これで遺恨を残す事なく、良い関係を築けるんじゃないかな。
腐ったトップは死んでも仕方なし! でも一般市民には罪は無い!
これでネスの御威光が知れ渡れば、また俺の領地の観光収入がウハウハだ!
『我はまた眠りにつく。民を不幸にする政などせぬ様にの。トールヴァルドよ頼みましたよ』
ははー! ネス様のお心のままに! ってなもんです。
『此度の詫びに我の加護をグーダイド王国に授けておこう。ネス様の使徒トールヴァルドよ、此度はご苦労であった』
もう一回、ははー!太陽神様の仰せの通りに! ってなもんです。
そしてネスとうさ耳の姿は、ゆっくりと空気にとける様に消えて行った。
はい、蜂さん撤収してね~!ご苦労様~!
『結局、罪を憎んで人を憎まず! って言わせちゃいましたね』
ちょっと使ってみたかったんだよ。
それにさ、こんな世界の戦争だから、神様が降臨して説教くれたら終わるだろうって思ったけど、もしかしたら敗戦国に乗り込んで虐殺とか略奪とかするかもしれないじゃん。そんなの嫌だからね。
でも簡単だったな~! これで誰も死なないで戦争終わった。
『まあ茶番でしたけどね』
そう言うけどさ、いくら転生のエネルギー溜まってるって言っても、無駄に使わなくてもいいじゃん。
『それはそうですけどね。私は不満です!』
何でだよ?
『私の出番が、最近めっきり減った事がです!』
お前が戦争でどんな出番あるって言うんだよ。
『戦場に舞い降りた美しい女神とかで出番下さい!』
ふっ……(笑)
『鼻で笑うな! 変身して活躍したいんですよ! キュ○ティーハニーみたいなので!』
胸のボリューム増やしてから言え!
『きーーーーーーーーーーー!!』
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