第76話 不敬で処刑?
父さんが様子を見に来てくれた。
どうやら王子様の前で俺ってば寝落ちしちゃったらしい。
昔、MMORPGで遊んでた時に、フレ達と一緒にクエスト周ってる最中に寝落ちしちゃった事あったなぁ。
いや~あの時は迷惑かけちゃったな~。MMORPGやってる奴なら、絶対にやったことあるか見た事あるはずだ!うんうん。
『それと王族の前で寝落ちしたのとを同列に語るのは如何な物かと……』
…………忘れようとしてんのに。
あーーー!すっげー不敬行為だ! 俺、やばいかも!
お父様お母さま、愛妹コルネちゃんにミルシェちゃん……先立つ不孝をお許しください……。
『私は?』
お前は、俺が死んだら10億年とか一緒にいるんだろ? どうでもいい。
『がーーーーーーーーーーーん!』
なんでショック受けてんだよ?
『だって、青い果実は生きている内にしか食べられませんよ?』
絶対に食わせねーからな!
不敬で処刑……洒落言ってる場合じゃねーよ!
「どうだ、疲れは取れたか?」
ん~~~、怒って無さそう?
「う、うん。結構寝ちゃったみたいだね……それで殿下の前で寝ちゃったみたいだけど……殿下、怒ってない?」
不敬だー! 処刑だー! って言われたら、全力で抵抗するけどさ。
最悪、俺対国で戦争してやる!
「ん? 誰が怒ってるって?」
いや親父、話し聞いてたか?
「殿下」
「何で?」
「話の途中で寝ちゃうっていう不敬な事を……」
「は?」
「へ?」
何でそんな不思議そうな顔してんの?
「いや、殿下は戦場にネス様と太陽神様に顕現して頂くのは大変だったろうって、すごく心配しておられたぞ?」
「え? そうなの?」
あ、処刑はなさそうな感じ。
「もし目を覚ましてたら、一緒に食事でもどうかって言われたんで、見に来たんだが」
おお! セーフでした! あの寸劇のおかげで助かった!
「で、どうだ? 食事出来そうか?」
「うん、行くよ……でも着換えは……」
あの寸劇の衣装のまんまだな。
「そのままで大丈夫だ。神に仕える神聖な衣装なんだろう? さあ、行こう」
……単なるコスプレなんだけど、構わないなら行きましょう。
▲
戦場だっていうのに、連れて行かれた幕舎の中のテーブルには、豪華な食事が並んでいた。
あ~いいにほひ……腹減った。
「おお! トールバルド卿、もう大丈夫ですかな?」
白髪オールバックのおっさんが、飛んで来て俺の両手を握ってきた。
あの近衛ゴリラといい、握力強すぎんだよ! 手が潰れる!
「さぞやお疲れでしたでしょう。ささ、こちらにどうぞ。間もなく殿下も来られます」
なんか下にも置かない歓待ぶりが、妙に気持ち悪い。
「ヴァルナル伯もどうぞこちらへ」
なぜか執事っぽい人やメイドさんも控えているのに、偉いさん自ら椅子を引いてくれるんだが……?
これってまた何か厄介ごとを押し付けられる感じなのかな?
俺の隣には父さんが座った。
「トールヴァルド卿、目覚められたようですな」
おっと殿下の入場だ。椅子から降りて挨拶をせねば。
「殿下、此度は殿下の御前で寝てしまうなどという不敬を犯してしまい、誠に申しわけ「気になさるな、トールヴァルド卿」……あり?」
「此度の戦は万の兵の損失も覚悟しておったのだが、卿の力により両陣営とも誰も命を落とす事なく、しかもこの先は友好国として互いに手を結ぶことで先ほど合意した。ああ、戦を企てた真アーテリオス神聖国の宗主や側近など39名の首はすでに届いておるぞ。我が国としては、もうこれで手打ちとする事にしておる。国の主導者が総入れ替えとなるのだから、多少問題は起きるやもしれんがな。賠償などは今後話しあう必要は有ろうが、陛下に出来る限りの温情を賜ろうと思っている。女神様のお言葉でもあった事ゆえ、陛下も駄目とは仰るまい」
はあ、さいですか。
「まあ、固い話は止めよう。せっかくの料理が冷めてしまうからな」
良かったよ、殿下怒って無くて。国と戦ってお尋ね者とか嫌だしな。
さて、お言葉に甘えて今は料理を楽しむとするか。
妙にテンション高くネスについて熱く語る王子様に相槌を打ちながら、美味しい料理を楽しんでいると、白髪オールバックが、
「そうそう、ヴァルナル伯、トールヴァルド卿。3日後に王都へ向かうので同行するように。陛下への報告がありますからな」
ま、そりゃそうか。ちゃんと報告しなきゃダメだろうし……陛下の前でネスとうさ耳出してみよっかな。
皆、腰抜かすかも! うん、ちょっと見たいから悪戯してやろう!
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