第62話 魔族さん、いらっしゃ~い!
さあ、風呂でさっぱりした後は、明日の予定を父さんと話しあいの時間。
明日はいよいよ魔族が家畜を引き連れてやってくるはず。
彼らを迎え入れて放牧地(仮)を案内したりしなきゃいけない。
トンネルは精霊さんにお願いしたから、まあ勝手に掘ってくれるだろう。
明日で全ての予定がいったん終了するはずだから、明後日には帰れるかなあ。
なぜか大人連中が子供を追い出して、居間でごにょごにょ話を始めたよ。
あんたらいかがわしい事すんなよ?
子供は、眠くなるまで館内やお庭を探索。
別にまだ何もないんだけど、俺の家を眺めるのが楽しいらしい。
まあ、立ち入り禁止区域はセキュリティーががっつり掛かってるんで、入れないからお好きにどうぞ。
そろそろいいお時間になって来て、コルネちゃんがこっくりこっくりし始めたので、本日は就寝。
うむ、本日も良く働いた!
『まあ熊は倒しましたね』
だろ?
『その他は全部精霊任せですけど』
そんな事は無いぞ、俺だって……
『明日も日の出からトンネル掘れとか言ってましたよね?』
う、うん……。
『ブラック企業の社長と同じですね』
……明日、精霊に謝っとくよ……。
『そんなブラックな社長を支える美人秘書』
誰が?
『そして社長と秘書の淫靡な関係!』
どっかで聞いたシチュエーションだな。
『次回、社長秘書の愛欲の日々……今夜の残業はベッドの上で。あなたの股間を撃ち抜くわよ♥』
父さんがめっちゃ好きそうな題名だな。
『さあ、ムラムラしてきたでしょう!? 今夜、私と残業を……』
サラは、戦力外通告ね。
『……』
◇
翌朝は、食事もそこそこにトンネル工事現場にダッシュした。
精霊さん達は、やたらと張り切って掘り進めていた。
すげえスピードで、もうどこまで掘ってるのか見えなくなってる。
え~精霊さん、どこまで掘ったんですか?
え、今日中に貫通できる? 早くね!?
牧草運んでくれた精霊さんが手伝ってくれてるのか、それはありがとう!
あ~精霊さんって万能すぐる。
精霊さん、貫通できなくても夕方には作業終了してね。
おやつが必要な時は、ちゅーちゅーしに来ていいからね~。
最悪、ヤッタ〇モグラでも創ろうと思ってたんだけど……いらなかったな。
『その存在すら知られていない可能性がありますね。ジェ〇トモグラではどうでしょうか?』
うん……サンダ〇バードでも超マイナーな奴だな。
もっと知られてないと思うぞ?
『ではエ〇ア88のグラ〇ド・スラムでは?』
もっとマイナーだよ! 爆発したらどうすんだ!
まだ宇宙の戦艦ヤ〇トのドリルミ〇イルの方がましだ!
『わがままですね……ゲ〇ター2のドリルアームでは?』
巨大ロボは男のロマンだけど、何と戦うつもりだよ!
トンネル掘るだけだよ!
『もちろん恐竜帝〇です!』
アホか!
さて、今日の俺のお供はブレンダー。クイーンは家族と俺の家でお留守番。
ミルシェちゃんとコルネちゃんと遊んでる事だろう。
護衛として優秀だから、みんなを任せるには適任って事で許して欲しい。
うむ、俺のする事が無くなった。
魔族が来るまで、牧草地の木陰で休憩でもしようかな。
どうにもこうにも優秀な部下に支えられた駄目社長になった感じがする。
何でもかんでも精霊さん任せだと、堕落するなあ。
『お兄さま。あなたは墜落しました』
あ~究極な超人のあ〇るに妹がいたねぇ……R・高〇秀子だっけ?
どうでもいい事だけど、堕落と墜落はよく似ているってセリフあったな。
うん、確かに似てる。
『大河さんはこの世界に墜落してきましたけどね』
墜落いうな!
『システムにはじかれた魂がこの世界に落っこちて来たんだから、間違ってはいないと思います』
そうだけど……そうだけども!
もう少しオブラートに包めよ!
『それぐらいで傷つく様なタマタマじゃない事は知ってます! まだちょっと大きなビー玉2個程度です!』
また覗きかよ、犯罪だぞ!
『失礼な! 覗きなんてしません! 堂々と見てました!』
もう、ヤダ……こいつ……。
少しうとうとしていたらしい。
頬っぺたをぺしぺしとブレンダーがつついて俺を起こした。
もしかして魔族が来たの? そっか、ありがとう。
ちょっとそこまで乗せていってくれるかな。
ブレンダーに乗って、しばし森を突っ走ると牛や羊の群れが見えて来た。
魔族は……? いましたが……あれなの?
アフリカ大陸のどっかの国の民族衣装っぽいゆったりした色とりどりの派手な布を左肩から掛けて、頭にはインドっぽいカラフルなターバンを巻き、足元は草履みたいなの履いてるけど、マジっすか?
今は夏だけど、まさか冬もあの格好なの!?
この辺は雪も降るのに……。
なんかめっちゃ警戒されてる気が……あ、しまった!
みんなブレンダーにびびってるんだ、どうしよ。
『あ~あなーた、わたーしの言葉、わかーるあるか?』
あ、言葉は通じるのね。
「ようこそアルテアン領へ。僕はこの地の統治を任される事になっている、トールヴァルドです。後ろの狼は、僕の使い魔でブレンダー。怖くありませんよ」
『おぅ! あなーたが、領主さんあるね? かわいい領主さんある! わたーしは魔族の長ある!』
ごく普通の体型で特に特徴も無い中年の男性が長だって。
今まで出会った種族が特徴ありすぎたから、逆に新鮮。
まあ、服装だけはめっちゃ特徴あるけど。
でも、な~んか魔族もクセあるよな~。
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