第61話 肉肉フェスティバル
持って帰った熊は、早速とばかりにセリスさんの旦那が捌いてくれた。
初めて旦那さんの名前を知ったよ……グラルさんだって。
『10年も傍に居る人の名前も知らないなんて、領主家の息子としてどうなんでしょうか?』
はい、サラのおっしゃる通りです、ごめんなさい。
俺って基本的に自分に深くかかわる人や興味ある人以外は、どうでもいい人間なんだよね。
前世でもそうだった。
だから人の名前を覚えるの苦手だったんだ。
この世界で領地を持つんだから、ちゃんと人の名前も覚える様にしないとなあ。
これじゃ前世と変わんないや。
この世界で幸せな人生を送りたいんだから、前世と同じ事してちゃだめだよね。
うん、領地経営もしなきゃいけないんだし、出来るだけ覚えよう。
『ぼっちじゃ、まともな領主は勤まりませんよ』
正論だけにサラに何も言い返せない……。
グラルさんが捌いてくれた肉や肝は、湖に沈めて冷やしておく。
灰色の毛皮は何かに使えそうだから、父さんにあげた。
グランドグレーベアーって言うんだってさ。
かなりのお値段になるそうだけど、家の居間の敷物にするらしい。
牙とか爪とかその他の素材はグラルさんにあげた。
やっぱりこれもかなり高く売れるらしく、すごく感謝された。
毛皮で農家の年収ぐらい、牙や爪で農家の年収の半分ぐらいにはなるんだって。
言っては何だが出てくれば何頭でも狩れるから、これぐらい気にしない。
「これは結納の品と考えても……」
「うむむ、だが他にも候補が……」
「領主様、身分差がございますので妾でも……」
「あなた、まだトールちゃんには早いと……」
グラルさん、父さん、セリスさん、母さんの4人が車座で何やらごにょごにょ話してるけど、あまり関わらない方がいいかもしれない。
どうも危険な香りがする。
なぜか頬を赤く染めたミルシェちゃんが、コルネちゃんに「これからは、お姉ちゃんって呼んでね」って言ってるけど、それは一体どういう意味だろうか?
姉妹みたいに仲が良いから、普段からミルシェお姉ちゃんサラお姉ちゃんって呼んでた気もするが……?
『私は妾でも愛人でもOKです!』
いきなり何だ、何だ? それだけは無いから安心しろ。
『これは……もしや鈍感系主人公!?』
何をいう! 俺ほど人の心の機微に聡い人間はいないだろう!
『……』
おかしい、俺は鈍くはない……鈍くはないよね?
▲
夕刻間際に開拓を予定していた緩勾配の広い土地の伐採作業がすべて終わり、材木の処理も終了。
土は見事にしっとりふかふかの良い具合に耕された。
さらに空を飛ぶ牧草(目がおかしくなったかと思った)が、どんどん耕された土地にきれいに植えられてゆき、あっというまに牧草地が出来上がり!
まだ家も柵も出来てないけど、資材はあるんだから自分達でやってもらおう。
取りあえず本日の作業は終了です!
精霊さ~ん! お約束のちゅーちゅータイムですよ~!
明日はトンネルの続きをお願いしますね。
え、夜の間も頑張る? いやいや、我が領はブラック企業ではありません。
そんな残業は認めません。
明日の日の出から頑張ってくれたら良いのです。
夜間の作業は禁止ですから、しっかり休んでくださいね。
ってわけで、俺達もトールちゃんハウスに戻ります。
熊肉持って帰って、盛大なバーベキューするんだい!
結論から言いましょう……めっちゃ美味かった。
クセがあるかと思ったが、塩だけで美味かった。
硬くもなくしっかりとサシの入った肉は、焼くだけで十分!
肝は香草と一緒に熊の脂で炒めて頂きました。
皆、最初は『バーベキューって何?』状態だったが、肉や野菜を屋外で焼いて楽しく食べる会だよって教えたら、めっちゃ楽しそうにBBQしてたよ。
これも娯楽の一種かな? 野外で宿営するときの料理と一緒だろうけど、遊びや娯楽として屋外で大勢でワイワイする事なんてあんまり無さそうだもんな。
結局は、全員がお腹がポンポコリンになるまで、肉肉フェスティバルでしたよ。
まだまだお肉は残ってるので、俺の家の厨房にある巨大冷凍冷蔵庫で保存だね。
母さんとセリスさんが冷蔵庫を羨ましがったが、これは俺のエネルギーが必要。
この世界で売ってるのは冷気を出す魔道具だけ。
だから、保冷箱を魔法(という精霊さん丸投げ)で造って、冷気を出す魔道具と組み合わせた冷蔵庫を、2人にプレゼントする事にしたよ。
だってセリスさんにも、長年実家ではお世話になってるからね。
これぐらいは安いもんさ! どっかの商店に頼んで魔道具を仕入れておこう。
『氷式冷蔵庫ならぬ魔道具式冷蔵庫ですね』
あ~、氷を上の段に入れる冷蔵箱ね。
またすげえレトロだなあ~。俺は実物を見た事も使った事もないや。
『この世界では現役バリバリですよ』
まあそうだろうね。
ならエアコンは無理でも、クーラーとかは作れば売れそうだな。
冷気を出す魔道具と、風を出す魔道具との組み合わせで。
冷気の温度調節だとか、燃費だとかの問題は有るだろうけどさ。
『はっ! 大変な事に今気がつきました!』
何だ何だ?
『今回は笑いもネタもありません! この作品の存続の危機です!』
作品ってなんだよ! 毎回ネタや笑いが必要なのかよ!
『もちろんです! ここは大河さんが一肌脱いで、ヘソ踊りを!』
いやだよ! なんでヘソ踊りなんだよ! 腹に面白い顔を描いて、微妙なステップを踏みながら踊るやつだろ!? そんなん嫌だよ!
たまには真面目に締めたっていいだろ!
『それでは読者が満足しません! さあ! さあさあ!』
だから読者って何だよ!
わかったよ、そんじゃ笑いのネタを提供してやるよ!
「クイーン、サラのケツに針をガンガン刺してやれ!」
『にぎゃーーーーーーー! お尻の穴が増えるぅぅぅぅぅーーー!』
良いネタだろ? ざまあ!
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