第54話  夢のマイホーム完成!

 さあ! 光ってないガチャ玉を握りしめて……イメージ、イメージ……。

『願望内容確認。脳内イメージ確認。必要エネルギー量算出。必要エネルギー補充開始、完了。管理局長への承認申請、承認確認。イメージ補完に伴う物理法則の改変開始、完了。管理システムのバグチェック開始、完了。ギフトカプセル内包物変換開始、完了。最終確認、OK。カプセル開封を許可します』

 よ~し! 開封許可が出た! 開けるぞ~! 開けるぞ~!

 またあれが来るんだろ! 心の準備はオッケーだぜ!

 取りあえず、サラの傍まですすす~っと移動。

 巻き添えにしてやる!

 ンギギギギギギギギギギイ・・!

 固ってーなー、クソッ! だが覚悟しろサラ! カポッン!

 ちゅどーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!!

「ふんぎゃーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」

 くっそ! また耳がキーーーンってなったが……やってやった!

 ははははは! どうだ! サラも爆発に巻きこんでやった!

 痛くも熱くもないけど耳がキーン! ってお前もなってしまえ!

「大丈夫ですか?」

 煙が晴れると、結界で護られたサラの無事な姿……。

「お前、自分だけ結界で逃げたのかよ!」

「当たり前です。あんな危険な物に巻き込まれてなるものですか!」

 ちくしょう……めっちゃ悔しい。

 こんな危険な演出もう止めない?

 仕様ですか……そうですか……ちっくしょー!

 

 ▲


 まあいい、これで俺の夢のマイホームが完成だ!

 さあ、皆さまに公開しましょう!


 何ということでしょう!

 あの湖の湖畔にあった殺風景な出島に、真っ白な3階建ての館が建っているではありませんか。

 中央にとんがり屋根の高い尖塔を持ち、柔らかい白い煉瓦造りのメルヘンな建物の屋根は、全てが深いブルーのスペイン瓦で彩られ、その美しさは山々の緑と湖の青さと相まって神秘的ですらあります。

 湖畔から城へと続く道を通り門へと至ると、綺麗なアーチを描いた壮麗で重厚な門扉が貴方をお出迎え。

 とても、一人、二人で押したぐらいでは開ける事が出来ない様な立派な扉は、アーチの上部に彫刻をされているオオカミの目が来訪者を識別し、自動的に開くギミックが組み込まれています。

 玄関の前庭はロータリーになっており、その中央には小さいながらも噴水のある泉が訪れた人々の心に一服の清涼感を与えるでしょう。

 玄関の扉もシンプルながら屋根瓦に合わせた淡いブルーに塗られ、両開の扉には左右に家紋でもある狼と蜂の彫刻が少しだけデフォルメされて施されています。

 邸内に足を踏み入れると、そこは広い吹き抜けのロビーとなっており、2階の窓には、王城の謁見間と同じようにグーダイド王国史の歴史を描いたステンドグラスがはめ込まれており、それを透した柔らかく美しい色彩豊かな陽の光が貴方を優しく包み込むでしょう。

 さらに匠のこだわりポイントとして、吹き抜けの天井には美しいシャンデリアがかけられており、ほかの共同スペースと連動して一定の暗さになると照明が自動的に灯るので、いちいち蝋燭に火をつける手間がいりません。

 もちろん、各部屋の照明はスイッチ一つでON・OFF可能です。

 ロビー正面中央には2階へと至る大階段があり、2階廊下には領主一家の集まった肖像画が掛けられ、この館の主と家族の仲がとても円満であることを物語っています。


 って、某改築前後テレビ番組みたいに領主邸の内部を全部説明してたら長くなりすぎて来週も同じ番組になるから、この辺で割愛します。

「来週も同じ番組って何です?」

「某改築前後テレビ番組、連続2週間放送」

「2時間スペシャルにすれば?」

「編集が面倒くさいからヤダ」

「でも自慢したいんですよね?」

「……うん」

「あなたが一番面倒くさいです」

「…………」

 

 ロータリーの泉は緊急時にせり上がって、地下シェルターへの階段が現れたり、尖塔にはシールド発生装置が入っていたり中央コントロール室があったりと、まだまだギミック満載だから本当は自慢したいんだけどね。

 

 むっふー! だが余は満足じゃ!

 俺の夢いっぱい詰まった領主邸が完成した!

 なんか、もう10歳にして人生の目標達成した感じなのは……何でだろ~♪

 ……そうか、前世ではマイホームなんてマジで夢だったからか。

 まさか転生してこんな夢いっぱいのマイホーム持てるなんてなぁ。

 ちょっとじ~んっときたよ。


 さて、あとは計画した街造りなんだが、これは今回は作らない。

 まずはこの邸宅を家族に披露して、ベッドなどの家具類やその他小物類諸々も発注しなきゃね。

 ただのがらんどうの箱になっちゃうからな。


 あと湖が聖地になりそうなんで、その辺りの確認もしてもらう必要がある。

 これは国への報告が一番手っ取り早いかな。

 どうせ偉い役人さんが確認の為に見に来るだろう。

 うまく国の上層部に認めさせておかないと、金儲けできないし。

 それに、この森の先住民族の方々にも色々と話を通しておきたい。

 一度民族トップをここに招待しなきゃね。

 な~に、揉めそうになったら女神像にご神託を出してもらえばいいだけさ!

 この地はアルテアンが治めよってね!

  

 うむ、やる事はまだ色々とあるが、取りあえず一旦帰ろう。

 3日もサラと2人だけだと、怖いからな……特に夜が。

 ん? そう言えばサラはどこ行った??

 キョロキョロ邸内を見回していると、上階から声が聞こえた。

「トールヴァルド様! 私は3階の湖側の部屋がいいです! すごく眺めが綺麗です!」

 静かだと思ったら、邸内探検してたのか。

「お前には地下室をくれてやる! シェルターだから広いぞ~!」

「ぜ~ったい嫌です! もうマーキングしました! めっちゃこすりつけました! かい~のかい~のしましたからね!」

 寛〇ちゃんだと!? あの野郎(女だけど)!

「何をこすりつけたんだよ! 綺麗に掃除しとけ! 新築だぞこのバカ!」

「そんな意地悪言うんだったら、トールヴァルド様の寝室にもグリグリいっぱいマーキングしますよ!」

「絶対にやめろー! ミルシェちゃんに絶対! 絶対! 絶対に気付かれる!」

「そんな馬鹿な~超能力者じゃあるまいし~」

「本当にそう思うか?」

「「……」」

 ミルシェちゃんの、あの謎の察知能力が怖い。 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る