第55話  一旦、帰宅。

 夢のマイホームの確認が終了したので、とりあえず実家に帰らせて頂きます。

 帰りたくないと駄々をこねるサラを無理やり引っ張ってブレンダーに括り付け、山道を走り抜いた。 

 ダンジョンを横目に山を森を走り抜けて、実家にたどり着いた時には日も暮れた夕飯時だった。


 ▲


「ただいま~!」

「お兄ちゃん、おかえりなさ~い」

 玄関の扉を開けた瞬間に、走って来た地上に舞い降りた天使が抱きついて来た

 そう、この世の至宝、我が妹コルネリアちゃんだ!

 あ、お土産忘れてた……。

「コルネリア、忙しかったから土産ないんだ……ごめんね」

「ううん、お兄ちゃんが元気に帰って来てくれたら、それでだけでいいの!」

 ああ可愛い! 思わずぎゅーーーってしてしまった。

 さすがわが王国のアイドルグループ不動のセンター、コルネちゃん!

「た、ただいま、うぇっぷ……も、もどしそう……もどす……ぐぇぇぇぇぇ」

 ブレンダーに括り付けて山道走ったからな、そりゃ気持ち悪かろう。

 ざまあサラ! ぷぷっ。

「お帰りなさい、トールちゃん。サラちゃんはどうしたの?」

 サラを心配そうに見てるが、母さんそんな奴気にするな。

「あ~ブレンダーで酔ったんじゃない? 山道だったからね」

「トールヴァルドさま、お帰りなさいませ……くんかくんか……(大丈夫そうですね)」

「た、ただいま……何してるのかな?」

 ミルシェちゃんが、俺の匂いを嗅ぎながら周ってる。

 うん、何となく考えてる事わかるけどさ、お風呂入ってないんだから止めてね。

「ミルシェちゃん、汗臭いから止めてね。お母さん、お父さんは?」

「もう帰ってくると思うわよ。先にお風呂に入ってきなさい。サラちゃんもね」

「了解! サラ、一緒には入らないからな?」

 先に釘刺さないとこいつ来るからな……。

 ガーンって顔しても駄目だ! 一緒には絶対に入らない!

 ミルシェちゃんの鼻息が荒いけど……君とも一緒には入らないよ?


 ▲


 風呂からあがってさっぱりして食堂に行くと、父さんも帰っていた。

 取りあえず保存食ばっかりだったので、食べなれたセリスさんの食事が恋しい。

「トールヴァルドが無事に帰ってきて良かった。報告は後で聞くとして、まずは食事にしよう」

 本日の夕食は猪の肉と根菜のシチュー、鶏肉のステーキ、サラダにパン。

 シンプルだけど、転生してからずっと食べてきた味付けでほっとする。

 ドワーフの村で食べた和食も良いんだけど、この身体になったから味覚も嗜好も変わったのかな?

 食べなれたセリスさんの味付けの夕飯を美味しく頂きました。


 食後に落ち着いた頃合いを見計らい、父さんと領地開発について話をした。

 その過程で、湖に眠る巨大な女神像の話になると、父さんが興奮して、

「我が領地は女神様の加護を受けているのか! これからも発展するかもしれないな!」

 すごく喜んでるとこ悪いんだけど……ごめん、俺が創ったんだよ父さん。

 もちろん湖が聖水に近い物となっていて、この湖を聖地としたいと言ったら二つ返事でOKだった。

「お前の領地だからな。当然、こっちの街にも恩恵はあるんだろう?」

 ちゃっかりしてるな、父さんは。

「もちろん。僕の領地には父さんの領地からしか来れないように、防壁を築くつもりだよ」

 俺の領地は森と山と森を越をなければならない。

 通常であれば野営が必要な距離なのだから、父さんの街で宿泊して朝早く出立すると考えるのが普通だ。

 つまりは聖地巡礼が国内に広がれば広がる程、父さんの領地で宿泊もしくは通過する人が増える。

 どう転がっても収入増は間違いない。

 ただし、聖地として広がる事が条件だが。

「年明けに王都で報告をしよう。この前の様に何か手土産を持って行くか?」

 うんうん、王国トップへの袖の下は効くよね!

 お主も悪よのぉ~くっくっく……。

「それは追々考えるよ。前回以上に驚く物を考える」

「うむ、そうしてくれ。それでお前の家は出来たのか? いつ見に行ける?」

「母さんとコルネリア、あとミルシェちゃんも行きたがるだろうから……ちょっと相談かな」

 絶対に見たいって騒ぐからな。

 ダメって言ったら、今度こそミルシェちゃんのご機嫌は天元突破するはずだ。

「うむ……まあそうだろうな。明後日の朝出発にしよう。泊まれるんだよな?」

「ベッドも何にもないけど、大丈夫?」

 寝具もな~んにも無い。

「ああ、食料と着換えと毛布ぐらい持って行けば大丈夫だろう。楽しみだな」

「すごく驚くよ。楽しみにしてて」

 見て驚け、俺の夢のマイホームを!


 ちなみに、俺のマイホームを一緒に見に行けると聞いたミルシェちゃんは、一頻り喜んだ後、

「……私とトールヴァルドさまの未来の愛の巣……」

 赤い顔で何かぶつぶつと呟いていた。

 関わると危険な香りがしたので、知らん顔をしておいた。

 愛しの愛妹コルネちゃんは、

「お兄ちゃんのお家たのしみ~! コルネのお部屋もあるの~?」

 上目遣いで俺を見つめるコルネちゃんに、NOとは言えない!

「もちろん!3階のとっても眺めの良い部屋がコルネのだよ!」

 部屋の隅で話を聞いていたサラが、がーーん! って顔してるけど、当然だろう。

 ラブリー・コルネちゃんと駄メイドを比べるまでも無い。

 愛する我が妹に一番良い部屋を与えるのは当然の事だ!

 そう、俺はシスコンではない。

 これは家族への愛なのだ!

『へぇ~~~~~~~~~~~』

 そう、家族愛なのだ! 

『ふ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ん』

 大事な事なのでもう一度言おう、これはまさしく家族愛なのだ!

『シスコン乙!』

 …………。

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