第50話  工事開始!

 いよいよ人造湖造成工事の開始ですよ!


 暫定的に各属性の精霊さんの作業監督さんを決めて、俺の近くに控えていてもらおうかな、うん。

 伝令とか作業員とかなんかすごく手際よく役割分担してるよ……本当に精霊なの? 手慣れすぎてないかい?

 

 まずは水の精霊さんと土の精霊さんが、小石混じりの水を樹の根元に細く纏わせて、高圧&高速でぐるぐる回転!。

 なんという事でしょう! あれほど立派な大樹の根元が、見る間に削れてゆくではないですか!

 そして仕上げとばかりに超高速で回転すると、あの巨木が傾き倒れてゆきます。

 その切り口は、まるで鋭い刃物で切った様に美しく輝いて……はいないけどすぱっと綺麗です。

 倒した木の枝はその場で払われて適度な長さで整え丸太にされています。

 出来上がった丸太は、即座に風の精霊さんが集積所へと運んで積み上げ。

 積み上がった丸太は、火の精霊さんがじわじわ加熱して水分を抜きます。

 水の精霊さんじゃダメなのかな?

 え、火の精霊さんの見せ場が無いから作ってあげた?

 そりゃお気遣いありがとうございます。

 

 転生物では火属性魔法って強いイメージあるけど、俺の今までの経験上、一番汎用性高いのは水だな。

 二番目が土で、三番目が風、汎用性が一番低くて使い場所選ぶのが火って感じかなあ。

 周囲の影響を考えなきゃ火が一番だけど、ラノベみたいにポンポン攻撃に使ったら自然破壊王になっちゃうよ。

 敵しか燃えないとか、自分は燃えないとか、熱くないとか、そんなんご都合主義だ。

 この世界だと火魔法で自分も火傷するし、水魔法で自分も溺れる。

 火は燃焼っていう現象、風は大気の流れっていう現象、でも土と水はそれ自体が存在する物質だから、もしかしたら色々と汎用性が高いのかな……って考察してみたり。

 まあ深く考えても仕方ないか。

 属性は複数で合成したり出来るみたいだから、上手くすれば万能に近づけるかもね。


「どうぞ、トールヴァルド様」

 取り留めのない事をつらつらと考えていると、サラがお茶とお菓子を用意してくれた。

 うん、ちょうど喉が渇いて来たところなんだよ。

「ありがとう」

「ところであの丸太(?)は何に使うのですか?大きすぎません?」

 まあ、中には直径20m近い杉科の樹もあるからね・・。

「あれは遊具や諸々にする材料」

「遊具……たしかリゾートのモデルは……はっ! ハイ〇リッドコースター〇鯨ですね!?」

「そんな巨大な物造れるか! 最初は人力のメリーゴーランドとか観覧車とか程度だよ! 動力の問題もあるからな。あとはアスレチックだとかダンジョン風お化け屋敷だとか、まあ色々と使い道はある」

 危険な物はちょっと作れないからな、安全安心が一番大事。

「絶叫系は無し?」

 俺が苦手だから、ヤダ。

「綱無しバンジーさせたろか?」

「……遠慮しときます」


 さて良い時間になったので、順次精霊さんも休憩だ。

 水、土、風、火の順番でおやつにエネルギー吸いにおいで。

 俺は労働条件と福利厚生には厳しいからね。

 ちゃんと約束は守るよ。

 ……普通にお昼休みなんだけど。


 日暮れまで精霊さんに作業してもらって、2/3ぐらい伐採が終わったかな。

 今日はこれで終わりましょう! また明日呼ぶからね~よろしく~!

 精霊さんがセピア色の空の下、四方に散らばって帰って行った。

 

 いや、帰ってないのが居る! 忘れてたよ!

 金銀パールじゃなけど、お初の魔素さん!

 ふよふよ漂ってるけど……こいつらどうしよ?

 各色、指折り数えれるぐらいしかいないな。

 ん~君たちは何が出来るの? え、良くわかんないの?

 魔法は……使えないのか。

 あ~なるほど、元々ここに居たのか。

 何だろうねえ、君たちって。

 取りあえずエネルギー吸ってみる?

 ありゃ、もう満足したの?

 結構、小食ね。

 ん……どうした?

 何々、この下にこうやくがある?

 膏薬って、今時ないよな~。

 え、違う? こんにゃく? こうしゃく? こうみゃく? 鉱脈!?

 君たちは鉱石の魔素? いや、精霊なの?

 おお! また銭の匂いがしてきたー!


 でも、お仕事は明日にしようね。

 もう夜だから、ちゃんと休みましょう。

「夕飯の用意が出来ました。トールヴァルド様」

 夕飯ってパンと干し肉と水を置いただけだぞ……。

「食べたらテントおったててください」

「いや来て最初に設置してるじゃん」

「股間のテントです! お邪魔虫が居ないんですから、じっくりねっとりねぶるように……」

 こいつは……そうはさせるか!

「ブレンダー! クイーン! サラを絶対に俺の半径3m以内に近づけるな! 俺は一人で寝る!」

 ブレンダーとクイーンが俺のテント(股間じゃないよ?)をがっちりガード。 

「そんな殺生な~! 先っぽだけ、先っぽだけでもいいですから~!」

 夜の山にサラの叫びが響き渡った。

「やかましいわ!」

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