第46話  観光事業の目玉

 うん、このままドワーフの村に戻ろう。

 探索はまたいつでも来れるしさ。


 人魚さんに貰った大量の魚介類は、エラに枝を通して持ち運びしやすくした。

 魚が鈴なりになった木の枝をブレンダーに括り付けたけど、めっちゃ魚臭い。

 草や蔦を使ってその他のエビ、カニ、タコ、イカも落ちないようにしたが、ブレンダーが嫌そうだ。

 せっかくの魚介類が痛まないうちに、ドワーフさんの村までダッシュで行こう。

 ちゃんとあとで綺麗に洗ってあげるから、ごめんねブレンダー。


 こんな時は、やっぱ定番のアイテムボックスとか創っとけば良かったと思うよ……。

『そうでしょうそうでしょう! やっぱり日本人は定番が好きなんです! さあ、チーレム街道をいきま……』

 ハイハイ。

『やる気が感じられませんね。ハッ! これは私にサービスしろと暗に示唆しているのですね! 分かりましたAVを見て鍛えたこのテクニックで……』

 ハイハイ。

『う~~む……ノリが悪いですねぇ。何かあったんですか?』

 いや、エルフにしてもドワーフにしても人魚にしても、この国の歴史から姿を消した種族なんだよ。

 そんな種族がひっそりと暮らしてる森を開発しても良いのかと思ってな。

 発展させる為のアイデアは色々あるんだけど、どのアイデアも彼らの生活がガラッと変わっちゃうんだよな。

 王国から彼らみたいな種族が姿を消したのは、人間の生存圏拡大のせいじゃないのかと思ってな。

 急激な生活環境の変化は、やっぱり良くないと思うんだ。

 俺の領に海は欲しいんだが、今の彼らの生活を壊してまで欲しがるもんでも無いしなあ……。

『大河さん……熱あるでしょう?』

 なんでだよ! 真面目な事考えたらおかしいかよ!

『知恵熱乙!』

 出てねーよ! 平熱だよ!

『……ふっ』

 鼻で笑うな!

『草!』

 ……泣いていいか?

 彼らの生活に干渉する可能性のある開発は、ちょっと保留しよっかなぁ。


 ▲


 ドワーフの村にまた戻って来ちゃったけど、相変わらずブレンダーの人気はすごいな。

 でも遠慮……じゃない、魚臭いから避けてるのか.

 マジごめん、ブレンダー。

 そんなに落ち込むなよ。

 

 まさか出ていった日に帰ってくるとは思ってなかったのか、村長さんもびっくり。

『あんれぇ~ま~だきなさったのけぇ~!』

 村長さんにお土産の魚介類を渡すと、

『こんりゃ~うちだけじゃぁ~くいきれねぇだ。むらのみんなでわけるべぇ!』

 って事で村の皆さんで分けてもらう事になった。

 

 結局、村をあげての宴会になってしまった。

 村の中央広場にキャンプファイヤーよろしくでっかい焚火がセッティングされて、その周りに煉瓦でかまどがどんどん作られていく。

 さすがに建築が得意なだけあるな。


 みんな、米酒(日本酒)を木の升でちびちび飲みながら、料理をつまんでる。

 酒呑みの宴会としては、かなり静かに飲み食いしてるな~。

 ドワーフのイメージって、強い酒とかジョッキで呑んで大騒ぎって感じだったけど、ここの人は本当に大人しい。

 料理だって、刺身に煮つけに焼き魚……ドワーフの女衆は割烹着。

 ここは場末の居酒屋? って感じ。

 寂れた感じがいいねぇ。 

 前世では良く女将さん1人でやってる小さな居酒屋に通ってたけど、あの落ち着いた雰囲気に似てる。 

 ご飯と煮つけをもらって、俺も腹を満たした。


 ちなみにブレンダーは村の子供達が楽しそうに洗ってくれた。

 すっきりしたのか、今は俺の側で横になってる。

 近頃、こいつ作った時のイメージってパト〇ッシュだったっけ? って思う時があるが、まあそれはいいか。


 ここは平和な村だなあ。

 きっとエルフの村も、ここと変わらないんだろうな。

 俺の勝手な考えで、この平和を壊してもいいんだろうか。

 開発すれば、良くも悪くもここの生活は変わってしまう。

 人も物も文化も流れ込んでくる。

 今まで無かった問題だって多発するはずだ。

 そのせいでまた王国の歴史から姿を消してしまったら……そう考えると観光事業は無しかなぁやっぱり。

 いや観光事業はいいが、この森の住民に迷惑を掛けたくないな。

 エルフの村長さんは儲けたそうだったが、もう一回ちゃんと案を練ってから相談しに行こう。

 儲け方なんか色々とある。

 現代日本人をなめるなよ!

 

 よし決めた! ドワーフ、エルフに人魚さんが住むこの一帯は、国立……じゃなかったトールヴァルド自然保護地区としよう!

 観光事業は、ガチャ玉で創り出してやる!

『お! ヤル気ですね!』

 ああ、今回はかなりやる気だ!

 帰ったら、飛び切りの観光事業の目玉を創るぞ! 

 よーし! やってやろうじゃねーか!

『ほっほー! 何を創りますか?』

 ふっふっふ……それは後でのお楽しみだ!

『はぁはぁはぁ……もうちんぼうたまたまたまりましぇん!』

 そうだろそうだろ!

 サラも狂喜乱舞する街を創ってやる!

『あああ……もう逝きそうです……』

 はっはっはっは! 任せたまえ!

 老若男女、大人も子供も誰でも楽しめる街だ! 

 度肝を抜くもの創りまくってやる!

 でもその前に、領地の安全確保しなきゃね。

 も・え・て・き・たー!

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