第45話  宮廷語は死語?

 皆様の昭和死語レベル測定回です!うっそぴょ~ん!(笑)

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 真っ赤なビキニの美女……だけど下半身が魚。

 やっとファンタジーそのままの姿の異種族に逢えた……うううう。

 波打ち際を器用に魚の尻尾でぴょんぴょん跳ねて来る。

 もうはち切れんばかりの二つの膨らみが揺れる揺れる!

 ちっちゃなビキニからポロリしそうだよ!

 よく見たら、ロングの青髪の美女!

 なんか魚の入った網持ってるな……あれは獲物かな?

 やっぱ主食は魚かあ。

 

 声が届くぐらいまで近づいた人魚さん、こっちをじーっと見つめてニッコリ笑った。

 ああ……蕩けそう!

「え~初めまして。人魚の方ですか?」

 コクコクと首を縦に振る。

「この辺りに住んでるのですか?」

 サッと岬の方を指さす。 

 ん? 話せないのかな?

「えっと、お話は出来ないのかな?」

 

 うごぉぇらぼぁんげぇ! げろげろげろ……ぺっぺ!

 きちゃね! 口から何か吐いたぞ!

 誰かモザイクかけてくれ!


『めんごめんご! 肺呼吸久しぶりだから忘れてた! もうだいじょうぶい!』

 耳の下を指さしてるけど……?

 あ! 確かにスリットがある!

 あれがエラ? うん、そこら辺をエラっていうよね……人間でも。

 でも頬骨とか咬筋の事だったよな、エラって。

 人魚は本当のエラなんだなあ……ファンタジーすげえ!

 肺呼吸できるって事は、もしかして人魚って肺魚の進化形なのかな?

 華麗にスルーしたけど……だいじょうぶいって言った? 聞き違いだよね。


『おはこんばんちは~! それで僕ちんは、こんなとこでどうしたん?』

 やっぱ、微妙に引っかかるんだが……。

「こんにちわ。北にある山から、海を見に来ました」

『北の山? おっとびっくり玉手箱! めっちゃ遠いじゃん!』

 玉手箱って、竜宮城があるのかな? ……でもやっぱ引っかかる。

「ええ、このオオカミに乗って来ました。僕の使い魔ですから、怖くないですよ」

『あっちょんぷりけ! 使い魔なんだ! うっそー! ほんとー? かっわいいー!』

 引っかかりが大きくなってきた……。

「実は北の山の麓が僕の領地として与えられる事になりまして、海産物などを仕入れたいと思って来たんです」

『魚が欲しいの~? そんなのおちゃのこさいさいよ~!』

 こいつ……もしや。

「え~お魚を獲って頂けるとして、対価には何をご用意すればよろしいですか?」

『ん~お菓子とか甘い物が今一番イケてる! ナウなヤングにバカウケよ!』

 …………。

「お金とか服と他にも色々……」

『イカす男でもおっけーぼくじょー! ヨロピク!』

 ……おい、絶対にこいつおかしいだろ!

 オッケー牧場って、ヨロピクって、完璧にあちゃらの死語だぞ!

『オー! ミステーク! 僕ちんには人魚帝国の宮廷語は難しかったみたいね! アイムソーリーひげそーりー!』

 まさかこの死語が……宮廷語?

「あ、いえ。大体通じてます……」


『じゃあパンピーの言葉で……え~私達人魚族といたしましては、海鮮類と交換で衣類や陸上の食料を要求いたします。また、我々は人口の98%が女性である為、非常に繁殖が難しくなっております。出来るのであれば他種族でも結構でございますので、成人男性をご紹介いただければと切に願っている次第でございます』

 急に話し方固くなったな……さっきまでの宮廷語って……。

「あ、はい。もしもこの森に道を通せるようになりましたら、魚介類を仕入れたいと思いますし、希望する男性がいればご紹介するのもやぶさかではありません。その時はどうやってご連絡をすればよろしいですか?」

 つられてこっちまで口調が固くなるぞ。

『そうでございますね、それでございましたらこの砂浜でどなたか狼煙を上げて頂くと言うのは如何でしょうか。我々も注意して見る様にいたしますので』

「あ、はいでは次回はその様にさせて頂きたいと存じます」

 話しにくい……。


『本日はお近づきの印に……と、これをお持ちください。私が先ほど獲ったばかりの活きの良い魚介類でございます』

 担いでいた網から、魚、タコ、イカ、エビ、カニ、をどさどさっと落とした。

 獲ったっていうか、これもはや漁だよね。もの凄い量!

 ってか、その網のどこに入ってた?

 まさかラノベお約束の収納魔法か? マジックバッグか? アイテムボックスか?

「有難うございます。私の手持ちは……この干し肉とパンぐらいですが、良ければいかがですか?」

『ご丁寧にありがとう存じます。しかし先ほど申し上げましたように、これは本当にお近づきの印ですので、お返しは結構でございますよ。次回によろしくお願いしたいと存じます。では、私はまだ所用がございますのでこれにて失礼いたします』

 ぺこりと頭を下げた人魚さんは、また来た砂浜をぴょんこぴょんこ飛んで海に戻って行った。

 波間から手を振ってくれたので、俺も波打ち際まで走って行って姿が見えなくなるまで手を振った。

『ばいちゃ~!』

 …………。 


「つ、疲れた。人魚って……」

 イメージと違うんだけど! 昭和の死語が宮廷の言葉?

 冗談はよしこちゃん! もう、わけわかめだよ! ゆるしてちょんまげ……。

 

 振りかえると山盛りの魚介類。

 うん、どう考えても食べきれない。

 一旦、ドワーフの村に戻って、これあげよう。

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