第42話  何があっても護る!

 ここでもブレンダーは大人気で、子供か大人かよくわかんないけどドワーフがめっちゃ来た。

 もふもふしたいよね~! こらこら、ブレンダーが嫌がるから尻尾はだめだよ。

 みんな尻尾好きだな……。

 ドワーフの美少年? に先導されて村中を進むと、ぞろぞろ後ろにドワーフが付いて来る。

 大名行列みたいになってるな……何かおもしろい。

 しかし、マジで大人か子供かよくわからん。

 極端にちっこいのは子供って分かるけど、ほとんど似たり寄ったりの身長だ。

 しかも年寄りが全くいない……美少年・美少女だけの村って……。

『次はぜひとも私をその村へ連れて行ってください!』

 この村にとっての魔王って、きっとお前の事だろうな。


 ▲

 

 実はドワーフについても、王国の歴史の中で登場するのはほんの少しだけだ。

 鍛冶が得意、背が低い、ドワーフだけの村を作っている……そんな程度。

 エルフにしてもドワーフにしても、あまり人前に出ずひっそりと暮らしているようだが、なぜ隠れ住んでいるのか詳しい理由は書かれていなかった。

 ある時を境に、王国から姿を消したそうだ。

 でも俺は知り合っちまったんだよな。

 嫌がるならやっぱり海への道は諦めよう。

 いつか誰かにばれるかもしれないけど、まあ俺の領地がこの森の前に出来れば、すこしは防波堤の役割ぐらいは出来ると思う。

 それにダンジョンに設置したシールド発生装置を調整して設置すれば、まあ何とかなりそうだ。

 人前に出たくない人を無理に引っ張りだすのも、あんまり良ろしくないもんな。


 ▲


 ドワーフの村の長の家に着いたけど……うん、エルフの長の家の2/3サイズだな。

 ブレンダーは庭で待機。付いてきたみんなが、もふもふに突入して行った。

 ごめんなブレンダー、そこでちょっともふられててくれ。

 クイーンは、エルフの時と同じく俺の背中な。

 

 入り口の扉には口が‟X”で有名なウサギさんそっくりなのが彫刻されてる。

 これはモザイクしなきゃダメな案件だと思う……。

 案内してくれたドワーフさんが長の家に話に入ると、すぐに使用人さん(?)が出て来た。

 これは美少年? 美少女? どっちだろ?

 え? 女の方ですか! 失礼しました。

 案内してくれたドワーフさんは、もふりに突貫した。


『はよぉ~なかにはいられぇ~!』 

 めっちゃフレンドリーに使用人らしきドワーフに家の中に招かれた。

 長の家の中は……ファンタジーじゃなくファンシーだった!

 壁も床も淡いピンンク! 壁紙のワンポイントは、どっかでみたリボン……。

 家具は白一色で統一されて凝ったアンティークっぽい装飾がしてある。

 しかも所々……やっぱりリボン。

 え、ここってマジで他の星なん?

 これ、どう見てもキテ〇ちゃんの部屋だよな?

 飾ってる人形……人形? フィギュアだろ!

 絶対にデフォルメされたフィギュアだよ!

 うわ! 俺、転生して初めてねん〇ろいどみたいな二頭身人形見たよ!

 これめっちゃ売れそう! もう完璧にテーマパークだぞ、ここ!

 あ、でもこの星の人間が喜ぶかはわからんな。

 地球……それも日本人だからわかることか。

 しかもヲタクかそれに近い人種にしか……言ってて自分で悲しくなるな。


『んで、うみにいぎてぇってか?』

 ドワーフの長……は、男だよな、じいさんだよな?

 めっちゃ可愛い美少年なんだが……。

「ええ、北の山に近くに僕の領地が出来るんですけど、海まで道を繋げたいなあって」

『あんれ、そんただごたしたら、わしらがあぶなくなるでねえか』

「いえ、皆さんの安全は絶対に保証します。許可をしていただけるなら、人間からも獣からも護ると誓いましょう」

 

 うん、これにガチャ玉を使ってもいいな。

 いやむしろここに使わないでどうする!

 こんなか弱そうな美少年美少女を護るためなら、俺はやる!

『その意気です、トールヴァルド様。そのままお持ちかえ……』

 はいはい、お前は割り込むな。


『そうげ? だいじょうぶってえしょうこさみせてくれたらあ、あんたごたしんじちゃる』

 もうどこの方言かわからん……混ざりすぎだぞ。 

「では、ちょっとそこの窓を開けてもらっていいですか?」

 不思議そうな顔で長が窓を開けた。


『んで、あけたがなにがおこるんじゃ?』

 ほどなく、ブーンブーンと羽音が聞こえると、兵隊蜂の大軍が飛び込んできた。

『『んぎゃーーーーー!!!!!』』

 長もドワーフの使用人もひっくり返った。

 ちょっと呼びすぎたか。

「だ……大丈夫です! これはこの子の配下です! 怖くないですよ!」

 背中のクイーンを指さしながら必死に説明するが、めっちゃ顔青くなってガタガタ震えてる。

 クイーン、なんか芸させろ!

 俺の無茶振りにちょっと考え込んだクイーンだが、次の瞬間に兵隊蜂は分隊ごとに見事な編隊飛行を披露する。

 おお! 色とりどりのスモークが空中を彩っている!

 クローバーリーフ・ターン! バーティカル・ロール! 最後にビッグ・ハートだと!? すげえなお前ら、ブルーイ〇パルスかよ!

 でも、ドワーフにわかるのか? ……あ、めっちゃ受けてる。

 おお!? 最後は蜂文字?

 【 はじめまして よろしくね 】

 お前ら……すごすぎる! ぐっじょぶ!

 長も使用人さんもめっちゃ拍手してる!

 ああなるほど、スモークは精霊さんが協力してたのね、ありがとう。

 どうやったのか全く見当もつかんけど、うけてたからいいか。

 取りあえず……1分隊残してファクトリーに順次帰還するように。

 うん、すごい規律正しいね。

 まるで日本〇育大学の集団行動並みだね! 俺も拍手したくなったよ。


 1分隊10匹が俺の周りに静かに着地。

「え~これらの蜂は僕の使い魔です。この様に芸も出来ますが、本職は兵隊です。お尻に強力な毒針を持っていて、集団で敵を倒します。例えばこの子達の仲間をこの村の警備にお貸ししたりも出来ますよ?」

 クイーンがビクッ! ってなったけど、心配すんな。

 お前達じゃないよ、貸し出すのは。

『おお……おでれぇた! むらではなしあってみるだ!』

「他にも色々と案はありますが、よろしくお願いいたします」

 クイーンのおかげで、めちゃ感触よかったな。

 うん、許可が出たらガチャ玉を使おう! これは決定!


『すぐそこがぁうみだでぇ、きょうはとまっていきなっせぇ』

 田舎のお婆ちゃんみたいだけど、暖かい言葉に甘えて泊めてもらう事にした。

『はらもへってるべ? まんずてぇしたもてなしもできゃせんが、くってけぇ~』

 うん……もうドワーフは田舎のお婆ちゃんでいいや。

「有難うございます。お言葉に甘えます」

 本日の探索は、これで終了!


 ああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!

 目の前の食卓には……他の星だからと諦めていたあのブツが!

『どうなさったね?』

 あの日本人なら絶対に外してはいけないあのブツが!

『おいおい、どうなすった、だいじょうぶかや?』

 溢れ出る涙で視界がぼやけてゆく……。  

「こ、これは米! しかも味噌汁に豆腐入ってる! これは……まさか醤油!」

『にんげんさんにしては、はぁ……よぐしっどるなぁ。んだ、こめとみそするだぁ。それはしょうゆだぁ。くちにあわなんだか?』

 そんな訳ない! もう涙で前が見えない・・。

「いえいえいえいえいえ、大好物です! しかも糠漬けまで!」

 ご飯と味噌汁に漬物!

 もう味噌汁すすってるのか鼻水すすってるのか分からなかった。

 ああ、懐かしき日本食。


『この村は全力で護りましょう!』 

 おう、この村と日本食だけはこの世界の全てを敵に回しても護るぞ!

 俺の人生の全てを掛けて!

『そうです! ロリショタを護るのは世界の意思です!』

 いや、子供を護るのは大事だけど、何かお前が言うと意味が違うからなぁ……。

『何を言うのです! 青い果実はこの世の至宝! 是非ともテイクアウトを!』

 テイクアウトって食う気じゃねーか! 果実のテイクアウトって文字にしたら間違ってないように見えるが、絶対に別の意味で言ってるだろ!

 いや、まあ理由は違えど目的は同じだ!

 護りたい気持ちは変わりない! いや、何があっても護る!

 ナビ、全力で俺のエネルギーを注ぎ込むぞ!

『そんな! お前に俺の熱く滾る欲望の全てを注ぎ込んでやるなんて……』

 言ってない言ってない!

 次のガチャ玉創作、大丈夫だろうか……。

『でも、野性的で荒々しいのも……嫌じゃないです…………ぽっ』

 もういい、黙れ!


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