第27話 またもやピンチ!?
王都を出発してアルテアン領を目指して街道を馬車でひた走る。
往路と違って、自分達のペースで動けるのは嬉しいな。
相乗りは、やっぱ色々と気を使うからな。
そう言えば休憩の時に、父さんがおかしな事言ってた。
「陛下にサラの話をしに行った時、あの娘の事を誰も知らなかったみたいなんだよ。あの歳の城の使用人は大体貴族の子女の行儀見習いのはずなんだけどな?まあだから簡単にうちに来る許可が出たんだが……あの娘は実家に言わなくても良かったのか、ちょっと心配だ……」
あんなアクの強いの知られてないなんて、城の中ではネコ被ってやがったな?
クッソ! 俺が突っ込み体質なうえ、捨てられてる猫を見捨てられない性格だと見抜きやがったか!
マジであいつに頭脳戦を挑むのは止めよう。
実家……確かに、王都から2週間も馬車旅の先の僻地……言ってて悲しくなるけどド田舎だもんな……親御さん心配しないんだろうか?
「サラ、アルテアン領ってめっちゃ遠いけど、実家は大丈夫?」
「え? 若様が一緒に実家に挨拶に来てくれるんですか? それは、娘さんを下さい的なやつですか?」
何言ってやがんだコイツ!
「ちっがーう! ある意味合ってるけど……ド田舎のアルテアン領に勝手に行ってもいいのかって事だよ! お前の言い方だと嫁にもらうみたいだろーが!」
「え? 嫁でもいいですよ?」
もう突っ込まんぞ!
「父さん、こいつ返品で!」
「よよよ……嫌がる私に、あんなナニを見せつけて辱められたというのに……」
お前が勝手に見たんだろーが!
「私の事は遊びだったのですね……ええ、わかりました……王城に帰って皆にこの酷い仕打ちを伝えなければ……セクハラで訴訟を……」
コイツ、ここまで読んでの行動か!? ……クソ!
「あ~もう分った。お前の実家の事は知らんぞ。勝手に手紙で報告でもしろよ!」
「分って頂いて、嬉しいです」
こいつと話してると疲れる……。
「はっはっは! トールヴァルドとサラは仲がいいな~! 会話が弾んで良い事だ!」
父さん、それはこの星より大きな誤解だぞ……。
▲
長かった……14日間の旅路は実に長かった。
精神的な疲労が半端ないって!
大体、1日100~110kmは走ってるはずだから、約1400kmも離れてるんだぜ王都って!
東京から鹿児島ぐらい離れてる。
飛行機だったら2時間で行けるとこ、2週間だぞ!
その間、飢えた駄メイドに馬車の中で狙われ続けて見ろ!
女性恐怖症になってもおかしくないって、マジで。
休憩中に小に行けば付いて来るし、大だとケツ拭く布と水桶持って待機しやがるんだ!
ちなみにトイレットペーパーなんて無いからな。
使い捨ての布きれでケツ拭くんだぞ。布の目が粗いと……察してくれ。
サラは自分のお花摘みの時も、「怖いので側に居てください」って俺を連れて行くんだ! どんなプレイだよ! 音や臭いで興奮せんぞ!
嘘です……ごめんなさい……音は微妙に……ちょびっと……ええ……まあ……。
でもな、寝る時も馬車の中で抱き枕にされて体中さわさわ触られまくり、移動中は横でベッタリとギューっと小さいながらもアレを押し付けるし……子供じゃなかったら、確実にMyお棒ちゃま君が暴れん棒将軍になってたぞ。
風呂や水で身体を清拭する時も、絶対に見に来るんだ……もうストーカーだよ……とほほ。
え? 羨ましいってか? んじゃ代わってやるよ! こいつやるよ!
愛人の座を狙う奴なんざ、俺の幸せ家族計画には入って無いんだよ!
重婚や側室や妾が貴族は公認とはいえ、本妻もいないこの年でいきなり愛人とかありえないだろ。
マジ、勘弁して下さい。
たまに宿屋に泊まる時も、父さんが変な気の利かせ方しやがって同室だし。
もう気の休まる時が無かった2週間だった。
やっと懐かしのアルテアン領に戻った時は、過労死寸前だったんじゃね?ってぐらい窶れてた。
ちなみに駄メイドは、近所の空き家(2DK)に住まわせる予定。
一緒に住んだら……ナニされるかわからん。
▲
我が家に戻った俺たちは、母さんに貧乳ショタエロロリストーカー駄メイドを紹介して、やっと人心地ついた。
かわゆいマイ エンジェル コルネリアちゃんは、1か月以上会わないうちにあちこちぷにぷにになってて、より一層ラブリー エンジェルになってたよ。
お土産は王都で見つけた柔らかい変な動物キャラクターのピンクのぬいぐるみ。
枕元に置いてあげた。
一緒にコルネちゃんを見ている、幼馴染のミルシェちゃんのお土産は絵本。
最近、やっと文字が読めるようになったんで、喜んでくれた。
なぜか駄メイドが「私には無いのですか?」とか言ってきたが、なんでお前に買わにゃならんのだ!
お前は馬房で馬糞でも掃除してろ!
と言ったら、そそくさとどこかに消えた。
ふふん! 俺を嫌いになる様に、これからもお前には皆の嫌がる仕事を押し付けてやるからな!
そうでもしないと、ミルシェちゃんの目が怖いんだよ!
どんな関係かしつこく聞かれるんだよ!
幼馴染枠は、大事にとっておきたいんだ!
甲子園に連れて行くんだ! ……双子の弟も居ないし、これは違う。
「トールちゃん、女の子にそんなことさせちゃダメですよ!」
母さんにメッ! ってされた。なぜだ……?
あ! 母さんの後ろで泣きまねしてやがる、あの駄メイド! めっちゃ口元が緩んでるぞ! 告げ口しやがったな! 母さん、後ろ~後ろ~!
振りかえった母さんは、サラの頭をヨシヨシしてる!完璧に騙されとる……。
さすが策士サラ……まんまと嵌められたのは俺の方だったのか……無念……ガックシ……。
「いい、トールちゃん。女の子には優しくするの! 将来あなたの家族になるかもしれないんだから!」
クッソ! 母さんまで洗脳済みか!? やっぱこの駄メイド、ギアス持ってるだろ! C.〇様に逢った事あんだろ!
「わかったかしら、トールちゃん」
「はい……お母さ……・」
5歳の初夏……僕は権力に屈してしまった。
▲
そんなドタバタの吉本〇喜劇か8時〇ョ!全員集合みたいな毎日を送っている楽しい我が家。
そこに発展著しい村に出来た冒険者ギルドの、ギルド長が我が家にやって来た。
「ヴァルナル子爵様、トールヴァルド様、突然の訪問、申し訳ございません」
めちゃ厳ついおっさんが、俺にも頭を下げる。
ま、俺ってばこれでもれっきとした独立した貴族の一員だかんね。
平民よ、ひれ伏すが良い! ははー! って、しないけどさ。
んで用件はなんじゃらほい?
あれ、そういえばこの人の名前なんだっけ? どうでもいいけど。
サラが俺達にいい香りのする紅茶を淹れてくれたので、ちょっと唇を湿らす。
「実はこのアルテアン領の北西にある山脈に、ワイバーンの群れが巣を作っているそうなのです」
なぬ? ワイバーンって飛龍ってやつでは!
ファンタジー生物、来たー!
「ワイバーンは毎年、晩春から初夏にかけて巣作りをして繁殖するのですが……今まではこの周辺には居なかったのです。生息地は主にヤグル山脈ですので。今年、初めてこの地で確認されました」
ほっほー! それで今まで知らなかったんだね。
ところでヤグル山脈ってどこ?
「群れが子育てをするとなると、かなりの肉を必要とするはずです。」
ふむ……1度に何個も卵を産むんだな?
肉食かあ……でも森にそんなにエサになるほど獣居たっけ?
めちゃ平和な森なのに。
「この村……いえ、もう街と言っても良いでしょう。この街は急激に人が増えています」
あ、なんかわかっちゃったかも……。
「この街の人々が奴らのエサになる可能性が非常に高いと思います。ですので討伐をしたいと思うのですが、戦争の英雄と名高い領主様と、大魔法使いであらせられるトールヴァルド様に、ご助力いただけないかとお願いに上がった次第でございます」
「ワイバーンか……空では剣で戦うのは難しい。なんとか地面に落とせたら話は違うのだが……」
父さん、めちゃ困ってるな。
空飛ぶ奴が相手じゃ、そりゃ無理だわな。
「予想では、早ければ来月中旬には奴らの活動が活発になると思われます」
もうあんまり時間ないな……。
小さな村だったこの地は、もはやこのアルテアン領の領都といっても良い程に人も物も増えて大きくなった。
しかも隣領までの道とダンジョンまでの道も整備しちゃったから、人の往来も激しく多い。
領民も400人近くまで膨れ上がり、定住者ではない冒険者や商人なども入れると、最大で700人程が我が村に居る事になる。
これらの全てを現在の人員でカバーして、被害ゼロにするなど不可能といっても過言では無い。
防御が難しいならば、攻めるしかないって事か。
うむ、これは俺の出番か?
父さんもじっと俺を見つめてる。
もう! 恥ずかしいから、あんまり見ないで!
「トールヴァルド、なんとか出来るか?」
「お父さん、駆逐するんだね?」
「ああ。俺とお前が居ればワイバーンなんか怖くないさ」
父さんの信頼に応えようではないか!
「わかった、2日ちょうだい。それで準備するから。3日後に出発しよう。ワイバーンなんて、空飛ぶトカゲさ!」
まかせろ! この領の危機なら自重はしない!
んで、ワイバーンの資料はありますか?
いや……見た事ないんで……。
あ、これですか……了解。
さ~今度は何を創るか、2日しか無いからな。頑張るぞー!
あ、こっそり精霊さんが窓から見てた……。
え? 精霊ネットワークで招集かけるって?
ええ、まあ……そうっすね、お願いします……。
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