第21話  win-winな関係

「しかしなあ……そんな理由でスタンピードって起こるのかあ……」

 過去のダンジョン絡みのスタンピードは、管理責任者への反乱が原因との事。

 

 まさか部下がニュ〇タイプじゃないよな?

 ガ〇ダム持ち出して逃げたりしてないよな?

 親父にもぶたれたことないのに! とかいう奴ではあるまいな?

 そんな奴には言ってやれ!

 それが甘ったれなんだ!  殴られもせずに一人前になった奴がどこにいるものか! ってね。

 だけどニュータ〇プじゃないにしても、ミュータ〇トはいたぞ……亀だけど。

 あ、本筋とは全然関係ない事考えてた……てへ。


『ほっんとーに、申し訳ございませんでした。私の監督不行き届きです』

 ネコ耳モフリーナが土下座する勢いで頭を下げる。

 もう何度目かわからない謝罪を受け入れ(ついでに巨乳を目に焼き付け)、怒る気力も失せた。

 だって彼女の属性が‟薄幸の美少女”で‟守ってあげたくなる容姿”だし、ネコ耳だよ? ケモ耳少女は正義なんだよ?

 まさかダメとか言わないだろうな父さん! Are you ok?

 もう瞳うるうるしながら言われたら、騙されてたって構わない!

 おっちゃん、騙されてあげる! 父さんもそう思ってるに違いない!

 いや……あのエロ親父は巨乳しか見てない気もするが・・。

 しかーし! 騙されたとて、我が生涯に一片の悔いなし!

 生涯って言ってもこの星では5年しか生きてないけどさ。

 前世合わせたら47年……ラ〇ウよりは生きてるから、このセリフもOKだろ。


 いつまでも警戒するのもアレなんで、変身を解く。

 ブレンダーも騎乗モードに戻して、防壁も格納。

 後にはグチャグチャの肉の塊が山積みなった草原が……さわやかな風を……ないな。むせ返る様な血の臭いが充満する、単なる惨劇の跡地だ。。

 

 さあさあモフリーナちゃん、静かな別の所で落ち着いてゆっくりねっとりおいちゃんと話しをしようか……ぐへへ。

 とりま、誰も来ない静かな林の奥でどうだい?

 完全防音仕様の秘密基地2号があるのさ!

 え……何……父さん、家に連れて行くの?

 良いの? 父さんが巨乳に見とれてたって、母さんに言っちゃうよ? 

 黙っててくれって? それは条件次第ですなあ~、ふっふっふ。

 え……黙ってないと俺のした事を全部王城に報告する?

 ミルシェちゃんにも、モフリーナの巨乳ガン見してたって言うって……!?

 往生せいや! ……って、あんた俺の親だろ!?

  

 ごめんなさいお父様。私が悪うございました。私も見ていたので同罪です。

 どうか王城にもミルシェちゃんにも内緒でお願いいたします。

 もちろん私もお父様のお茶目は、母さんには秘密にしておく所存です!

 往生はご勘弁下さいませ。

 

 父さんとガッシと力強く握手を交わした。

 なぜかちょびっとモフリーナさんの視線が冷たかった。


 ▲


 この星には一般的なファンタジーに出てくる種族は普通に存在する。

 実はケモ耳は我が領にもいるので珍しくない。あれほどの巨乳は珍しいが……。


 スタンピードの終結を領民に伝えた俺たちは、戦後処理を領民に指示した。 

 その後、俺たちはみんなの戸惑いの視線の中、連れ帰ったモフリーナを伴って家に入った。

 領民も母さんもあの巨乳に釘づけだ!

 大丈夫、母さんのは美乳だから! 俺の一推しだからね!

 だが……あの某戦艦美少女の長門に匹敵する巨乳は、俺のCカップ+α好きという鋼の信念を曲げてしまう威力があるなあ。

 おっとミルシェちゃんに睨まれる前に、ポーカーフェイス。

 そもそも、ミルシェちゃんはまだ6歳だから大平原じゃん。

 比較されたら試合前にコールド負け確定ですがな(笑)。


 居間で落ち着いた俺たち一家とモフリーナは、今回のスタンピードに関する事情聴取と今後のダンジョンの扱いに関する話し合い。

 ちなみに領民は総出で魔物の処理にあたっている。

 やっぱファンタジーだけあって、魔物は魔石も持っていて売れるそうだ。

 今回はゴブとオークとミュータントな亀だが、ゴブはクズ魔石、オークは微妙な魔石、亀は……あの強さならやっぱ微妙な魔石かな。

 王都で使われている魔道具の電池っぽい役割をするらしい。

 この村には高価な魔道具なんて無いから、全部売っぱらう。

 俺、2/3も焼いちゃったんだよね……残ってるかな?

 ちょっともったいなかったかもな。 

 1/3しか残ってないゴブのクズ魔石でも集めればそこそこの金になるらしいから、みんなでちょっと豪華な晩御飯ぐらいは食べれるかな?

 あと死体はきっちり焼却処分するんだって。

 そうしないと、血の臭いとかで獣が寄ってきて危ないらしい。

 おまけにゾンビ? アンデッド? 化する時もあるんだって。

 ちょっと見てみたいけど、村の安全のためにここは焼きましょう。

 死体を集めてくれたら魔法で焼いてあげるから、みんなお願いね。


「それでモフリーナさん、あのダンジョンは今後どうするつもりですか?」

 父さんが真面目な顔で巨乳ネコ耳娘に領主っぽく尋ねている……視線は武士の情けで見逃そう。

 ちなみに母さんは見逃してないぞ……父さん気を付けろよ。

『出来ればこのまま運営をさせて頂きたいと思います。私としてはご迷惑を掛けたので、あまり強くも言えないのですけれども……』

 しゅんと俯くモフリーナさんは、めっちゃ庇護欲をそそられる。

 母さんが抱きつきなでなでしたそうだ。

「まあ特に村に被害も無かったので、どうこう言うつもりもありませんが……あのままダンジョンを置いておくとして、我々に何かメリットはありますか?」

 うむ、父さん、なかなか領主っぽい交渉をするな。

 出来ればモフらせてくれるなら、俺としては許可してもいい!

『メリット……ですか。私からは、ある程度エネルギーが溜まると出現する宝箱を定期的にお渡しするぐらいしか……』

 宝箱!? 何それ!何が入ってるの! めっちゃワクワクするワードだ!

 だがもう一つ気になるワードが……エネルギー?

「エネルギー……?」

 あ、父さんも気になったみたい。

『ええ。魔石や宝箱を狙う冒険者や探索者といった方々がダンジョンに入ると、少しずつ魂のエネルギーを吸収します。そのエネルギー貯留値が一定のレベルに達しますと、ダンジョンが成長したり魔物が発生したりアイテムを内包した宝箱が出現します。そしてそれを狙う冒険者や探索者がまた来る事によって、またエネルギーが溜まります。ダンジョンとは半永久機関の様な物です。ですから冒険者や探索者を呼び込んで頂けるならば、定期的にアイテムを上納するというのは如何でしょうか……』

 ほっほー! これは金のにおいがプンプンしますな!

 ん? って事は……

「ってことは、ダンジョンを維持するエネルギーの余剰分で宝箱を作ってるんだよね?」

 気になったので聞いてみた。

『はい、おっしゃる通りです』

「トールヴァルドすごいな、そこまで理解できたのか!」

 普通に考えたらわかるだろ……バクチは胴元が絶対に勝てる仕組みなんだよ。

「では我が領で冒険者を大量に呼び込めば、あなたも私達もウハウハのwin-winって言う事でOK?」

 ちゃんと確認しなきゃな。

『はい、その通りです。協力をしていただけるならアイテムは定期的に上納いたします』 

「魂のエネルギーを意図的に渡す事も可能?」

 これが出来るなら、俺にとってはもはや不労所得!

『それは出来ますが……そんな人いますか?』

 YES! これで不労所得確定だ!

 我が領地の未来と、俺のバブリーな未来が一気に拓けた感じがする!


 父さんと顔を見合わせ頷く。

 ダンジョンの半永久機関的な仕組みは、どの書物にも書かれていなかった。

 つまり我が家はダンジョンの秘密を手にしたのだ!

 とどめに俺のエネルギーはこの星の総量の200倍!

 どっかの携帯のプランじゃないけど使い放題!

 間違いなくどの領地よりも発展するのが確定だ!

「「やろう!」」

 この降って湧いたチャンス、絶対にモノにせねば!

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