第22話  ダンジョンその後と国王様との謁見

 ダンジョンが出現してスタンピード事件が起こってから早6か月。

 村は急速に発展した……のかな? ……うん、したね。

 

 モフリーナは第9番ダンジョンマスターと言っていたが、俺の住む国には今まで1個しかダンジョンがなかったそうだ。

 それじゃ他の国に7個ダンジョンがあるのかというと、そうではない。

 まだ未成長のうちに踏破されて消えてしまったダンジョンが5個もあるらしい。

 つまり現存するダンジョンは4個で、我が国にはその内の2個があるって事。

 なので2番目となる我が領にあるダンジョンは、国にとって超重要な施設。

 

 ダンジョンとは魔石を無限に取り放題の、言わば国にとっても人にとっても荒稼ぎポイント。

 父さんが国王に報告すると、議会が満場一致で資金を投入する事を決めたらしい。

 6年かけてぼちぼちしか開拓できていなかったこの領地に、大量の人と物が流れ込んできて、一気にあの塔までの森に道が切り開かれ整備された。

 もちろん近隣の街から僕の愛する寒村までの道も、馬車が楽にすれ違い通れるぐらいの街道が整備された。

 国家の本気ってやつはすっげえな!

 村には宿屋や商店の出店が止まらないし、なんと冒険者ギルドも出来た。

 まあ全て国の金のおかげなんだが、おかげで我が家も税収ウハウハだ。

 兵隊さんも駐留して村の警備活動を請け負ってくれている。

 もちろん資金は国持ちだ。

 もう村という規模ではなくなった気もする。


 ちなみにダンジョンなんだが、最奥まで踏破されると消えてなくなる。

 だから俺はダンジョンの構成・難易度・魔物の配置・出現する宝箱などなどを、モフリーナにアドバイスと言う形で口出しをした。

 簡単に踏破されては、我が領にもダンジョンにもうま味が無い。

 かといって強敵だらけの高難度では、冒険者は数が来ないからエネルギーが溜まり難く、これもうま味がない。

 適度に攻略が出来て、もう少しでいけそうと思わせつつ、絶対に踏破出来ないという微妙なラインを狙って行く事にした。

 

 ちなみにダンジョン内で死んだ魔物は、エネルギーさえ十分にあればまた生き返らせることが出来るらしい。

 って事は、エネルギー収支を管理すれば、魔物の数は一定数は保てるって事。

 何度も殺されるザコ魔物は記憶がどうなるのか、よくわからんけど……。


 だがこのアドバイスはダンジョンの魔物にもかなり評判が良かったらしく、モフリーナの株が上がったと抱きしめられお礼を言われた。

 あの胸は凶器だ……一撃で俺のハートを撃ち抜いたぜ……。

 そして止めに冒険者を生かさず殺さずをモットーにして貰った。

 そうすれば、何度でもダンジョンに挑戦する冒険者が後を絶たないはず。

 

 エネルギーが溜まれば、さらに魔物も増やせ強化も出来るしアイテムも増やせるうえに、ダンジョンも増築できるらしい。

 ダンジョン運営が上手くいくと、ダンジョン管理の神様? からモフリーナはお褒めがもらえるらしいが、俺達とは特に関係ないな。

 神様って……あいつかな? でもダンジョンの管理と輪廻の管理って違うよな……別の神様がやっぱこの星にはいるんだろうな。

 

 まあ、最初に俺の魂のエネルギーを10%ほど分けてやったら、めちゃくちゃ驚いてたが、同時にめちゃくちゃ感謝されて、抱きつかれてほっぺにチューされた。

 

 一気に90階層ぐらい増築して、魔物を今までの100倍ほど増やせたらしい。

 なので今のダンジョンは、最初ゆるゆるだが中盤は結構難易度高く、終盤は絶対踏破不可能な魔物が鎮座している。

 

 現在のダンジョンの姿は、地上95階、地下5階。

 実に高さ700mにもなる、超々高層ビルになってしまった。

 もう天辺なんて霞んで見える。

 地下の5階部分は基本的に人間は誰も入れない様になっている。

 まあでも、パパンと俺はどこにでも入れてもらえる。

 

 ダンジョンの施設自体は、無理やり壊そうとしても無駄だ。超頑丈で傷一つ付かない。

 次元がどうとか時間がどうたら物理法則がなんちゃらと、モフリーナは説明してくれたが、正直どうでもいい。

 つまり踏破しなきゃ壊れないってだけわかればいい。

 踏破とは最終ボスを倒す事らしく、つまり異世界物でお馴染みのダンジョン・コアみたいな役割を最終ボスがしているらしい。

 

 ちなみにこのダンジョンの最終ボスを見せてもらったが……ありゃ無理だ。

 95階だけ天井が100mあるんだぜ! しかもいたのが翼長30mもある真黒なでっかいドラゴン!

 パパンと俺が見学させてもらったが、腰抜かした。

 ドラゴンは喋れて、めっちゃ気さくに話をしてくれた。

 どうやら俺のエネルギーによって生み出されたらしく、俺がほとんど神様扱いだった。

 生み出すエネルギーをありがとうと、真っ黒ででっかい鱗を一枚もらった。

 これ……今、自分で引き抜いたけど痛くないの? すぐ生える? そうすか。

 どうもありがとう。有効利用させてもらうね。 

 

 地下4階までは魔物やアイテムなどの製造工場で、地下5階がモフリーナの部屋。

 ここでダンジョンを管理している。

 今後は、あと地上部分を5階増やし、次はフロアー面積を広げる計画だとか。

 またエネルギーが欲しいとおねだりされたが、すぐにはあげない。

 とりあえず現状でどこまで人とエネルギーが集まるかお試しだ。 

 すでに世界最大のダンジョンなので、神様がめっちゃ褒めてくれたそうだ。

 う~ん……ダンジョンが発展したら神様にもメリットがあるんだろうか……よくわからん。ってか神様と交信できんの? そりゃすげえ! 


 そうそう、最初にあげたエネルギーのお返しと新装オープン記念でアイテムを20個ほどもらえた。

 なかなかの業物の剣や鎧に盾、魔道具も何個かあった。

 売ればいい金になるが……ぐふふふふふ……使い道は決めてある。

 今後もちょくちょく定期的にエネルギーを分けてあげよう。

 決して巨乳の感触とキスのためでは……無い……よ?

 我が領の収入はこれで爆上がりだぜ!あこがれの不労所得万歳!

  

 ▲

 

 そして今日、俺と父さんは王城に来ている。

 我が家のある開拓村から王城のある首都までは馬車で14日。

 マジでド田舎だったんだな。

 我が家は馬車なんて持ってないから、行商人にお金払って同乗させてもらった。

 振動と衝撃が激しすぎて、めっちゃケツが割れたぜ!

 

 我が家は上級勲民なので、年1回開催される議会に参加しなくてはならない。

 領地を持たない貴民・勲民が主に王都で政治を行っているんだが、その政策や翌年度の予算配分なんかの原案を練って、それを議論・検討・承認する場らしい。

 領地持ちは基本的に国家の運営はノータッチだから、検討と承認するだけ。

 よっぽど問題が無い限り否認しない、儀礼的な議会なわけ。

 なので議会に父さんが出席する日に間に合うように、王都まで来た。

 議会は俺も連れて行ってくれたけど……ずっと寝てた。

 だって延々とボソボソ喋る官僚見てても退屈だし暇なんだもん。

 まあ議会も1日で終わるんだから、大した国では無いな。

 ついでに領の納税もこの時に行う。

 こっちで普通はもう1日かかる。 

 だから領地持ちの貴族は、年に2日は最低でも王都にいなきゃいけないわけだ。

 

 ところで何で俺まで王都に来ているかと言うと、あのスタンピードの件でだ。

 被害ゼロで防いだ事とダンジョンマスターと友好な関係を築いた事による資源の永続的な確保の功績を認められたんで、お褒めの言葉がもらえるらしい。

 それと魔法に関しては隠し切れないだろうから、家族と相談し国へ報告をした。

 予想では、ダンジョン関係で多分だが報奨金とかもらえると思う。

 あとは俺の魔法に関しての確認とか何やかんやかな……わからんけど。

 とりま国王様に、父さん共々謁見の栄誉を拝するって事になった。

 

 ちなみにブレンダーは家で普通モードにてお留守番。

 家族や領民に可愛がられモフられながら、マップとレーダーにて村の周辺を警戒中。もしもの時は、勝手に戦闘モードになって村を守ってくれる。

 ちゃんと家を出る時に、目いっぱいエネルギーをやったから、精霊さんと戯れてても、俺が帰るまではもつだろう。

 マジで創って良かった……便利なペットって最高だぜ。

 

 そうそう、ダンジョン関係の話では、モフリーナは基本的にダンジョンの奥からは出てこなくなった。

 呼べば出てくるとは言っているが、ダンジョンの新規開店なので忙しいらしい。

 今後の管理に関しては契約を結んだので、遣いの鳥の魔物が手紙を持って来てくれるので、連絡はちゃんとできる。

 そしてさらに裏取引の契約で、アイテムは向こう3年は我がヴァルナル家に無条件で月に1回2個上納してくれる。

 まあ、ちょっと良い剣や盾なんかの武器装備とちょこっと大きい魔石程度だ。

 たったそれだけでも、我が家の収入が数倍に膨れ上がる。

 4年目からの宝箱は、全て冒険者をおびき寄せるエサにする。

 まあ月1回の上納とは言うが、今のペースでも毎月5個程度は作れるらしいので、今のままでも冒険者を呼び込むエサとしては十分だそうだ。

 4年目ともなればそこそこダンジョンの運営も軌道に乗るだろうから、冒険者の落とす金が税収となって我が家に入るんだから、計算上は損は無い。

 ダンジョン=冒険者ホイホイだなと感じた俺を誰が責めれよう。


 さて議会の翌日の昼過ぎで眠くなる時間なのだが、王城の謁見の間の毛足の長い赤い絨毯の上で、俺と父さんは膝をつき国王陛下を待っている。

 俺が知ってる宮殿なんてアニメか漫画でしかないんだが、まんまその通りのすげえ大広間だ!

 天井からは魔石をふんだんに使った光の魔具がこれでもかとついてるシャンデリア、窓には色とりどりの美しいステンドグラスで描かれた王国の歴史……かな?

 絨毯の両横にずらと並ぶのは左が貴民で右が勲民。

 父さんが本来並ぶのは右って事だな。

 左の方がちょびっと良い椅子に見える。

 一段高い所に玉座が置かれているが……あれ1人で動かせないよな?

 ずっと座ってたら痔になるんじゃねえかと心配になる程、硬そうでデカい椅子。

 精緻な彫刻が高級感をめちゃ出してますな。

 ほえ~っと辺りを不敬にならない程度に見ていると、玉座の横にある扉が開かれ騎士が入ってきた。

「サンデル・ラ・グーダイド国王陛下が入室なされます。皆さまご起立の上、面を伏せてお待ちください」

 へえ~ちゃんと先触れで説明してくれるんだ。

 もしかして新米騎士が前説?と思ったら、位の高い近衛騎士なんだって。

 親切だな……っと起立か。よっこいしょういち! っと。

 立って顔を地面に向けていると、微かな衣擦れの音が聞こえて来た。

 国王陛下だな? まさか5歳で御前に招聘されるとはね……まあおっさんだから肝は据わってる。

 本当は内心ドキドキだけどな。

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