第19話  終わっちゃった 

 そうだ……この変身した姿って名前が無かったな。

 この変身した姿をなんて名付けよう。

(ズシャ! グシャ! ズババババ!!)

 実は決めてなかったんだよな。剣とペットに名前があるのに……。

 ん~もうすでに仮面でも無いし、もちろんライダーでもない。

(ブーンッ! ザシュ! ギリョッ!)

 宇宙でも無ければ刑事なわけない。

 ん~~~~~? そうか刑事か。ここは職業だ。

 俺ってば前世最後の職業は警備員さんだしなあ。

(ボグッ! ゲシゲシ! ズビシッ! ブオーン!)

 ファンタジー物の王道に倣って、異世界警備員!

 だめだ……思いっきり馬鹿っぽい。

(グシャ! ブンッ! ズガガガガガガ!!)

 警備員……警備……セキュリティーはなんか違うし……ガードマンは和製英語だし……ガード!?

 メタルっぽい鎧のガードマンで、メタルガードでいいんじゃね?

 どっかで聞いたことある気がするけど……多分、著作権にも引っかからない……といいなぁ。

 指摘を受けたら考え直そう、そうしましょう。

 決めた! このスーツ姿はメタルガード! 君に決めた!

(ズドドドドドドド!! ドグアッ! ザシュザシュザシュ!)

 ん? 変な効果音が入ってるって?

 うん、ゴブリンってザコいわ。

 スーツの名前考えながら、片手間で切り刻んで殴り倒して蹴り倒してぶん投げて踏みつけてた。

 

 いや……このスーツのおかげか。

 魂のエネルギー200倍って言っても、たかが5歳児だからな。

 元の身体能力は子供並みのはず……はずだよな?

 あ、精霊さんも頷いてるから、そうみたい。

 スーツが俺の力を増幅してくれてんだな。

 

 しかもエネルギーブレードの切れ味がすごい!

 こいつは剣になっても飛び出しナイフの重量しかないから、剣を振る速度が異様に早くなる。

 でも剣ってのは刀もそうだが、切るにはある程度の重量が必要なんだ。

 軽すぎる剣では切れないので、普通は突きに特化した戦闘方法になるはずなんだが、切れ味が抜群のこの剣だと触れただけでスパスパ切れるから、戦闘が超楽ちん。 

 しかも光るから剣筋の残像が残って格好良すぎだぜ!

 

 これは必殺技も使わねば!

 おっと目の前に来たこのザコゴブでいいか。

 右手で剣を頭の上でくるっと回して真上から振り下ろす!

「トールちゃんダイナミック!」

 うぎゃー! どかーん! と爆発したと脳内変換しておこう。

 単に真っ二つになって内臓やその他諸々が飛び出して来ただけなんだけどね。

 技名は……要相談だな。


 父さんの所も、ブレンダーの所も、ほぼ戦闘は終わったみたいだな。

 こいつらは仮面のライダーの人でいえば、イ〇ー! って言う戦闘員と同じはず。

 この後に本命が出たり、ネオなんちゃらって改名して強くなったりするんだよ。

 ヒーロー物では定番だな。

 首領や大幹部や何ちゃら博士や地獄の大使が出てくるんだよ絶対!

 つまりあのダンジョンは奴らのアジトってわけだ。

 ふっふーん! 特撮大好きだった俺に油断は無い!

 さあ来いシ〇ッカーじゃなかったマ〇ーでもない、魔物ども!

 俺の剣の錆にしてくれるわ! 錆びないけど。


 ほら見ろ! 次が出てきた!

 ゴブリンよりちょこっと……嫌結構大きいな……2m以上あるぞ。

 豚鼻付いてるから、あいつはオークだ、そう決めた!

 そして最後に出てきた……あれが中ボス?

 橙色の鉢巻して二足歩行の亀……ミュータントかよ!

 しかもヌンチャクの奴かよ!

 めちゃくちゃマニアックだな、おい! 


 オーク6匹、タートル1匹か……こいつは手強そうだ。

 ふっふっふ……腕が鳴るぜ!

 まずは手始めに……腕が鳴ったのに何故か足からだ!

「トールちゃんキッーーーーク!」

 ズバーーーーーン!! ありゃ? オークの頭が吹っ飛んだ……の?

「トールちゃんパーーーーンチ!」

 ズバーーーーーン!! え? オークのお腹に大きな穴が開きましたが……。


 父さんも剣を振って切り付けたら……一撃でオーク2匹上下に真っ二つ。

 

 ブレンダーが駆け抜けると、すれ違った2匹のオークが頭を土と氷の魔法で打ち抜かれて死んじゃった。

 

 えっ! 弱くね? ゴブリンより弱い気がするぞい?

 もしやまだザコキャラなのか!? 

 ほら、父さんもブレンダーも何か微妙な顔して鉢巻亀を見始めたぞ?

 お前らもっと頑張れよ! 強敵かもーん!  

 

 精霊さんが首(?)を横に振ってる。

 え……もう居ないの? これでお終い?

 別にゴブでもオークでも亀のお替わりでもいいけど?

 はあ……お替わりも無いって……なんですとー!?

 きーーーーっ!!腹立つ!


 皆に睨まれ、あたふたと逃げようとしてるミュータントの亀に、

「トールちゃんダイナミック(水平バージョン)!」

 綺麗に上半身と下半身に分けてやったぜ!

 甲羅から中身が飛び出して逃げたりはしないのね……。

 あのヌンチャク何のために持ってたんだ?


 父さんもブレンダーも困ってる……とまどってる?

 え……もう終わったのかって? うん、そうみたい。 

 考え事しながらてきとうにやってたから、戦闘の醍醐味が無かったけど。

 俺ってば、そういや魔法も炎の壁しか使ってない!

 

 そりゃ村が無事なのは嬉しいよ! マジで嬉しいって!

 でも何だろう……この不完全燃焼感が半端ないのは。

 チート転生物なのに、俺TUEEEEE……した?

 した気もするけど、雑魚相手の俺TUEEEEは違うだろ?

 仮面でライダーな人だって、イ〇ー! っていう戦闘員を無双したぐらいで主人公名乗れないよな?

 俺、この転生人生もらった主人公だよな、な?

 なのにこの終わり方ってアリなの? 

 俺に銃を撃たせろ~~~!! いや、創ってないですけどね……銃。

  

 そんな苦悩する俺に集る精霊さん……。

 ブレンダーの電池より、生で吸った方が美味しいと……そうっすか。

 もう好きにしてちょ。

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