日常とは人それぞれである(意味深)。

*昔書いてそのままだったのを出してみました。


いつもと同じ日常だったらどれだけ良いか。まだ中学2年でありながらそんな夢のないことを考えてしまう。きっと環境が影響しているのかもしれない。

俺、いずみれいは何処にでもいる学生であるが、同時に人には言えない職業持ちでもあった。


信じられないかもしれないが、実は『異能使い』なんだ。……それと主人公です(ボソ)。


まず異能についての説明から入るけど、君らは異能と言われたら何を想像する?

手から火を出す? 物を動かす? 瞬間移動? 未来視? etc……確かに存在するが俺の能力はどれとも違う。

能力にも種類があるが俺の場合は『特異型』と呼ばれる異質なタイプだ。そのうち紹介するだろうからここでは省略させてもらう。


元々家が異能を扱う家系だったのが切っ掛けであるが、異能に目覚めなければ知ることもなかった。世界には何人も異能者がいるそうだが、世間に広まることなく大昔から隠されてきた。

現在は各国に存在する異能の機関が動いて情報統制を行なって隠している。ただ、人類の敵である『魔獣』は異能の素質がない一般人には見えない為、最悪の場合は映画製作の為などと言って誤魔化す手段もないこともなかった。


親やその周囲が戦闘向けの異能使いで囲まれていた為か、実戦に特化した修業を付けられ中学に上がる頃には1人で魔獣退治に狩り出るようになった。


しかし、同年代の子供に比べても急激な成長を遂げたことは指導者側からも予想外だったらしい。戦闘に関する素質があったのかもしれないが、宿していた異能も大きく関係していた。


大きな力を手にする犠牲・代償が伴う。

ファンタジー世界には定番の話であるが、自分自身がそれを支払っているのだと自覚したの随分後であった。



結果、小学生でありながら俺は同年代の子供達に比べても、異常なまでにになってしまった。

いや、ただ大人びただけなら良かったのかもしれない。中学に上がる頃には同業者からは『死神』と呼ばれて恐れられ、周囲に対して冷たくなり日常生活も悲惨なものになっていた。



だが、そこから救ってくれたのは家族や友人達だった。

家族の絆も友情もどうでもいいと思っていた、凍り付いた俺の心を温かな光が溶かした。



とういう感じで色々とありました。色々と省略しちゃってスンマセン。


少々シリアスな自己紹介だったけど、簡単にまとめると人間関係が不器用な俺がという話である。


───そして、話はここから始まる。

猛省しかない中学1年生から2年生に進級して、変化し始める日常に戸惑いながら生活を送って数ヶ月が経過した頃であった。

異能の世界を知らない周りの友人達にもバレないよう、新たな日常を楽しみつつ慣れ始めた時期であった。


新たな選択を俺は選ぶことになった。





───どうも、主人公です(どや)。……て、冗談言っている場合じゃないや。


ただ今、人生最大の危機に瀕しております。

あらゆる試練を乗り越えて来たが、かつてない危機で既に半ば心が折れてしまっている。

自慢ではないがこれまで何度も魔獣の脅威から街を守ってきた。


世界規模にも繋がる危険な存在をも退けて、異能者となって数年程度でありながら親父や祖父、親父の知人であり異能者の先輩達からも街の大半を任される程の信頼を勝ち取っていた。……現在休業中であるが。


しかし、そんな自信も経験も、未知な脅威の前ではあまりにも無力であった。


積み重ねてきた経験を活かすことが出来ず、鍛え抜かれた鋼のような精神も脆く崩れた。

自信も失ってしまい困り切ってしまう中、そんな俺を嘲笑うかのようにソレはさらに追い討ちを掛けてきた。


「ぷい!」


「がーん!」



結論から言うと───



可愛らしくそっぽ向いて頬をリスのように膨らませている。見ているだけなら悶死する光景であるが、不満を向けられている側になれば話は別だ。


辛い苦い泣きたい……グスン。


お兄ちゃん頭抱えて困っちゃう。何故こうなったのか、脳内の時を少し遡った。





「それでねぇ、おにぃちゃんこの問題だけど」


「ああ、そこも当ってるぞ。流石だな」


「エヘヘへ! おにぃちゃん撫でて撫でて!」


「ハイハイ」


とある休日、とくに用事もなかったので妹のあおいの部屋で勉強を見ていた。

偶に頼まれて引き受けているが、未だに不思議な気分になる。

というのも半年程前までは、一方的に妹を避けていた。


もちろん嫌ってでの行動ではなく、少しでも妹の安全を確保したいが故の選択だった。迷いなどあるはずなかった。

しかし、過程で冷たく当たってしまった為に涙を流す妹の姿を見て、迷いのない俺の心に揺らぎヒビ割れてやがて瓦解した。


「ところで近過ぎないか? 隣なら教え易いが、引っ付いてるとやり難くないか?」


「うん! こっちの方が断然良いよ! 集中力アップ! ……おにぃちゃんはイヤ?」


「そ、そうか、俺は別にいいけど……」


そして過去の失敗を悔いて妹と仲直りしようと接したが、その反動と言うべきか、シスコンと呼ばれてもしょうがないくらい妹に溺愛した。いや、ホントに可愛がりました。親に心配されてやり過ぎと注意されるくらい色々とやっちゃった、えへへへ。


……すみません、調子に乗り過ぎました。

ただ言わせていただけると、我が妹も素晴らしいほどハイテンションでした。

怖がっていた時期の影響で初めはビクビクしていたが、気付けば後ろに引っ付いて来るどころか添い寝や風呂まで一緒に入ろうとするほど離れなくなっていた。今は割と落ち着いているが、小学生でも高学年でなかなかハードルが高かった。


ちなみに風呂の方は親父の権限で回避出来たが、妹の中の親父への好感度は一気に下落して、しばらく口も聞いてもらえず親父が泣いたが誰のフォローもなかった。


「だからって椅子代わりにするのはNGな」


「えぇー」


そんな感じで仲良くなって勉強を見てほしいと頼まれた。ただ言っておくと小学生で既に中学レベルに通じる学力を備わっている優秀な妹なので、小学生レベルの勉強で遅れを取る筈がなく、正直不要ではないかと常々思っていた。現に勉強を見ても分からない問題など皆無で、やっているのは答えが合っているか確かめるくらい。英語なども発音練習に付き合うなどで、ほぼ大して手伝いもしていなかった。……本当に優秀だよ、この愛妹は。


ちなみに机は低いテーブルを利用して床にクションを敷いて座っている。最初は隣で引っ付いていた葵だったが、油断した隙に胡座あぐらをかく俺の脚に座ろうとして困る。


短めの白のスカートから膨らむ小ぶりなお尻と伸びる真っ白な太ももが大変凶器だ。なぎから何か教わったか、回避に全力を注がないと小学生な妹にお尻で押し倒されそうだった。


そもそも勉強と言いつつ空いている時間も多い。隣に引っ付きながら学校での話や勉強から離れた話をしてさらに接近してくる。

別に嫌ではないが進学が近い妹のことを考えると、さすがにどうかと最近悩んでいた。


来年から中学に上がる妹だ。女子しかいないお嬢様学校での入学試験が待っている。お嬢様学校だけあって偏差値も高く塾でも通ってなければ厳しいレベルだが、その代わり受かればエスカレーター式で高校、大学にも上がれる。本人は俺やなぎ達と同じ中学が良かったらしいが、母と何か話して理由は聞いてないが渋々入学試験を選んだ。


だからこそ勉強会は止めないかと提案した。


もちろん分からないところがあれば尋ねてもいい、邪魔にならない範囲で手伝うと優しく伝えた……筈だった。


「むぅ〜〜〜!」


「うっ!」


その指摘そのものがマズかったらしい。

気付けば不満顔一杯でリス顔の葵が出来上がっていた。

情けなくオロオロしながら謝るしかなかったが、結局ご機嫌斜めのまま勉強会が終わってしまった。


因みに不機嫌そうであったが、用意した問題は満点であった。





「それは自業自得としか言えないね」


「やっぱそうなのか?」


宥めるのに苦労して実際に宥めれたか怪しい、ご機嫌取りをした後日。

休日明けの通学途中で幼馴染の九条くじょうなぎと合流すると昨日の件について相談していた。

肩に掛かるか掛からないくらいの綺麗な黒い髪。うちの学校が昔風のセーラ服な為かどこか清楚な印象がある女子だ。


しかし、俺は決して騙されない。

実際は清楚などとは欠片もない、正反対で極悪非道な冷酷女王だ。

周囲からはクールで綺麗なお姉さんと評価されているが、それは大きな鉄仮面だ。あの仮面の奥に隠されているのは、奴の本性。

人をからかうことに生き甲斐だと感じている。邪悪で濁り切ったヒロイン色など一切ない汚れ切っ……。




「───どうやら何もないこの脇道が君の墓場になるようだ。で、最後に言い残すことはあるか? 何ならこの脇差で潔く逝かせてあげるよ?」




「すみません、真面目に相談しますんでお願いだからその脇差を仕舞ってください」


まだやり残ったことが多過ぎるから潔くとか無理……っていうか何処から出したの!? 怖く訊かないけど本物じゃないよね!? ていうか可愛らしく小首傾げないで! ホラーにしか見えないから!


恐怖のあまり路上で反射的に正座する俺。

その様子を奇怪な目で見てくる通行人や同じく通学途中の学生達。

一部知っている顔もおり俺達を見るやスマホを取り出して無言で……『パシャリ!』───ってこら! 勝手に撮るんじゃないよ! 金も払わずに何を……訴えますよ!?


「……」


「え、な、凪さん? どうしたの?」


同じ無言で愚行を犯すスマホ男子を睨んでいると、俺の視線と音で気付いた凪が男子生徒へと振り向く。ついでに辺りの生徒にも一瞥すると。




クールなまま心を震わせる微笑を浮かべた。




なんだろう……ボク、スゴクイヤナヨカンガスル。


『クイ』


はい、予感的中。

やれ、といった首振りジェスチャーでGOサインの出す凪閣下。

すると一斉に閣下に敬礼する民衆学生。銃でも構えるような素早い動作でスマホを取り出す。

なんか戦場で鍛え抜かれた兵士みたいに乱れのない動作だ。凪との掛け声や言葉はなかったが、大体こんな感じで行われた。



凪『撃ち方用ーー意ッ!』(『クイ』と首を振るう)


学生『イエッサー!』(瞬時に隊列を作る兵士達)


凪『狙えッ!』(零という的を見据える)


学生『イエッサー!』(取り出したスマホのカメラを起動し構える)


凪『撃てッ!』(『くわ!』っと目を見開く)


学生『イエッサァァァァー!!』(一斉にスマホのシャッターを───押した)



え、ちょっ───やめ……。


『パシャ』『パシャ』『パシャ』『パシャ』『パシャ』『パシャ』『パシャ』『パシャ』『パシャ』『パシャ』『パシャ』『パシャ』『パシャ』『パシャ』『パシャ』『パシャ』『パシャ』『パシャ』『パシャ』『パシャ』『パシャ』『パシャ』『パシャ』『パシャ』『パシャ』『パシャ』『パシャ』『パシャ』『パシャ』『パシャ』『パシャ』『パシャ』『パシャ』『パシャ』『パシャ』


「やめてぇぇぇ! こんなアタイを撮らないでぇぇぇ!」


いいように晒され、連写連写の嵐に飲まれた!

こいつら一切迷いがない!? 人ではなく鬼畜なのか!?

あ、違うか絶対的な権力を持つ女王様に逆らえないんだ。

グスンっ、もうお嫁に行けない! 凪のヤツ、いつか泣かす!


「大丈夫、貰い手がなかったら私が一生首輪付きで面倒見てあげるから」


「人の思考を勝手に読むな! しかも最悪な未来しか残ってなぁぁぁい!」


そこは結婚してあげるじゃないのか!? 俺の未来にはペット扱いしか待ってないのか!?


「だぁあああああ! やってやられっカァァァァ!」


『ゲフーー!』


『ああああああ!? 泉が暴れ出した!?』


やっぱり幼馴染がヒロインなんて間違ってるっ! 妹こそが真のヒロインだ!

心の中で力強く叫ぶ俺。こうなったらヤケだ! 無謀過ぎて勝ち目のない戦いであるが、潔くやられるつもりはない! 

手始めに最初にスマホを『カシャカシャ』した男子をラリアットで潰した。

動揺が広がるが一切無視だ。優雅に佇む凪に俺は手をわきわきさせて睨み付けた。


「このアマ、泣かしてやる……!」


「ふ、いいよ。逃げも隠れもしないから掛かって来なさい」


「イケメン過ぎるだろう! この悪魔が!」


ホントなんでこうなったのか、切っ掛けを思い出すのに結構時間が掛かって、その頃には泣けるくらい時間が経ってマジで帰りたくなった。



*幼馴染は悪魔やん。このあと色々あってバトル回に突入予定でしたが、お蔵入りになりました。


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