心霊カーナビゲート⑨
目を覚ますと夜が明けていた。 立とうとしたら足が痛み、昨夜のことが夢ではなかったのだと実感した。 巻き布はどす黒く変色し、皮膚にこびりついている。 それに止血効果があったのかもしれない。
「助かった・・・の?」
辺りは思ったほどに被害はないようだった。
「綾斗と綾奈は・・・!」
我に返り、一番に頭に浮かんだのは子供の安否。 昨夜二人を突き放すために言った言葉に、酷く胸が痛む。 落ちていた棒を拾い上げ、杖にしながら指定防空壕まで歩く。
時折亡骸が転がっていて見える光景が痛々しかった。 やっとのことで防空壕までたどり着いたが、綾斗と綾奈の姿はなかった。
残っていた人に聞いても、誰もそんな二人はきていないという。
―――どうして・・・。
―――何度も逃げているし、一人でも来れるよう練習もしていたのに。
視界の端に何かが光り輝いた。 近寄ってみるとそれはビー玉で、綾斗が大切にしていたのものだ。 以前、防空壕に逃げ込んだ時、恐怖から泣き止まなかったのを見て買い与えたもの。
それから二人は泣かなくなった。
―――なのに、なぜ、ここに落ちているの・・・。
どうしようもなく胸騒ぎがした。 辺りを探してみると、一つ、また一つと、どこか導くようビー玉が落ちていた。 もうこれ以上進みたくないのに、足が勝手に進んでいく。
山の中腹、地下水をくみ上げる井戸の横で、綾斗がまるでボロ雑巾のように死んでいた。
「あ、あ、あ、あ・・・うぁ・・・」
肌は冷たく、四肢はだらりと垂れ、二度と目覚めることはなかった。 狂ったように泣き叫びしばらく、再度見つけたビー玉に案内されるよう歩き、綾奈の亡骸も発見した。
もう生きていく気力は残ってなかった。 ただ気になったのが、渡していた袋は見つけたものの食料とお金がそっくり消えていたこと。 なぜ二人はこんなところで死んでいたのか、ということだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます