第37話 アレク、上級職を語る
焚火の周囲に、魚を刺した鉄の串を並べる。今日は川で魚が取れたので、塩を振って焼き魚にしている。
そして、ボクがサラダの入った皿を配っていると、ギリーがボクに質問して来た。
「アレク、狩人がLv50になると何になれる……?」
「何にって……Lv50になったの?」
ボクが聞き返すと、ギリーはコクリと頷いた。
「村が襲われた時に、多くの兵士を殺したからな。あれでレベルが上がったらしい」
「魔物でなくても、レベルって上がるのか……」
流石にボクも人を殺したのはあれが初めてだ。ゲーム内でPvPは行った事はあるが、あれは経験値が入らない。
人を殺してレベルが上がるとは盲点だった……。
「狩人から転職できる上位職か……。長距離射撃が得意な『スナイパー』。それと森林戦が得意な『レンジャー』が狩人Lv50から目指せるね」
「ふむ、その二択か……」
「いや、必ずしも二択では無いんだけど……」
「ん……?」
今の話しは一つの基本職を極めた場合の話しだ。
しかし、上位職にはもう一つの道が存在している。ボクが習得している『賢者』や『錬金術師』の様に。
「盗賊をLv30まで習得すれば、アイテム収集が得意な『トレジャー・ハンター』という道もあるね。後は鍛冶師をLv30まで習得して、罠作りに特化した『トラップ・マスター』なんてのもあったな……」
「盗賊に鍛冶師か……」
ギリーの眉に皺が刻まれる。どうやら他職には興味が無いらしく、あまり乗り気では無いのだろう。
なりたくないなら、無理になる必要は無いのだが……。
「ちなみに、ギリーはどういう能力を望んでるの?」
「どういう能力……?」
ボクの言葉にギリーは不思議そうな顔をする。ボクの質問の意図が上手く伝わっていないのかな?
「弓を使った戦闘に特化した『スナイパー』は、高い攻撃力と長距離射撃が長所なんだ。逆に言うと、防御に関するスキルは増えないから、一人での戦闘はそこまで強くならない。パーティーを組んだり、騎士団の様な組織の中で生きる職業と言えるね」
「ほう……?」
「森林での活動に特化した『レンジャー』は、探索能力と罠の扱いが得意だね。森の中では一人でもパーティーでも活躍出来るけど、森以外ではそこまで能力を生かしきれない所もある」
「なるほど……」
「ギリーがどういう能力を鍛えたいのかで、選ぶべき職業は変わってくるんだ。そういう意味で、ギリーはどうしたいのかなって聞いてみたんだけど?」
ボクの説明を聞いて、ギリーはすっと目を閉じる。
しかし、すぐに目を開くと、ボクを見て大きく頷いた。
「ならば、オレは『スナイパー』を目指す事にしよう……」
「へえ、理由は?」
ボクは驚いてギリーに尋ねた。ギリーがこれほど簡単に、自分の将来を決めると思ってなかったからだ。
ボクの様に複数を同時に取る事も出来るけど、ギリーはそういった雰囲気でも無い。
ギリーは何でも無い事の様に肩を竦める。そして、その口元を小さく綻ばせる。
「生きるだけなら狩人のままで十分だ。オレが強くなるのは、アレクと共にいる為。なら、アレクと共に活躍出来る『スナイパー』が良さそうと思っただけだ」
「うん。そうか……」
ギリーはボクとパーティーを組むのを前提にして、自分の将来を決めてくれたらしい。
親友の気持ちが伝わって来て、ボクは思わず口元が緩んでしまう。
ボクとギリーはお互いに見つめあって笑みを浮かべる。すると、何故かアンナが焦った様に手を挙げていた。
「あ、あの、アレクお兄ちゃん……」
「ん、どうしたの?」
「黒魔術師は、どういう上級職になれるの……?」
「黒魔術師……?」
どうやら、アンナも自分の将来に興味があるらしい。良い機会だから、ついでに説明しておくとしよう。
「黒魔術師をLv50まで習得すると、『
「『魔導士』と『死霊術士』……」
「後はボクが習得している『賢者』と『錬金術師』なんてのもあるね。『賢者』は精神力の扱いに長けた攻防バランス型。『錬金術師』はマジック・アイテムの扱いに長けた生産職って感じかな?」
「ふむふむ……」
他にも黒魔術師との組み合わせは存在するけど、今は教えなくても良いだろう。前衛で戦う職業が前提だったり、力が必要な生産職だったりするからね。
「あ、あの、『魔導士』ってどういう職業なんですか……?」
「『魔導士』か……」
どうやら、ボクが熱望する『死霊術士』は候補から外れたらしい。
まあ、その強さを知らなければ、ビジュアル的にも好まれる職業では無いと分かっているのだが……。
「特徴としては、大規模な儀式魔法を覚える事が出来る所だね。特定のアイテムを必要とするけど、魔物の群れや、巨大なボス級魔物を一撃で葬り去る事が出来るのは『魔導士』だけだ」
「へえ……」
「それ以外でも、黒魔術師で使える魔法より、数段階は便利な魔法を覚えられるね。魔法職では最強の一角と言える程に強い職業だよ」
「なるほど、すっごく強いんだね……!」
ボクはコクリと頷く。どこまで伝わったか不明だが、アンナの興奮した姿が可愛かった為、細かい事はどうでも良くなった。
……まあ、『魔導士』には自身を守る魔法もあるし、アンナにはピッタリだと思うよ。
それから、しばらくは二人の質問タイムが続いた。
余りにも熱中し過ぎてしまい、夕飯の魚はちょっぴり焦げすぎてしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます