第18話 初陣


 わずか10分後。


 500人のレギオンたちは、アルベルトがストレージから出した、すぐに着られる革鎧だけを身に着け、火縄銃を手に、城門の前に集まっていた。


 城は、敵を迎え撃てるよう、門前を広く取り、城下街とは少し距離を開けている。


 そこに、前後5人、横100列になって布陣した。


 アルベルトの脳内マップに、スバル本家軍の反応がウジャウジャと映った。


 布陣はギリギリ間に合った。


 大通りの奥から、石畳を蹴立てながら猛然と迫る騎馬軍団に、街の人々は恐怖で皆、建物の中に避難している。


 これで領民に流れ弾が当たることはないだろうと、アルベルトは安心した。


 騎馬軍団の先頭は知らない貴族だが、きっと本家の方では重宝されている武人なのだろう。


 派手な化粧鎧を身にまとい、勇ましく何か叫びながら馬に鞭を入れている。


「…………」


 味方の少年少女たちの顔を確認すると、半分以上のメンバーが緊張していた。


 無理もない、これが初陣で、まして火縄銃はモンスター討伐でも使ったことがない。


 迫る騎馬の重圧と恐怖に負けて、合図を待たずに先走って引き金を引いてしまう者が出るかもしれない。


 だから、アルベルトは、敵との距離を測りながら叫んだ。


「みんな! これが俺らの初陣だ! 敵は本家の上級騎士たち! これに勝てば俺らの名前は歴史に残るぞ! 平民でも女でも次男以下でも勝てると世界に知らしめろ! 俺らは歴史の革命者だ!」


 仲間を鼓舞するのは、指揮官に大事な能力だ。


 そして、指揮官の話を聞くことに集中している間は、誰も引き金を引けない。


 ていのいい時間稼ぎだ。


 そして、時間を稼ぎ終わると同時に、騎馬軍団は火縄銃の射程に入った。


 アルベルトは叫んだ。


「放てぇ!」


 轟雷のような100発の銃声が、周囲を駆け抜けた。





 ほんの30秒前、スバル騎馬軍の斬り込み隊長は、前方の光景を鼻で笑った。

 見るのは初めてだが、あれが鉄砲というものだろう。

 一発撃つのに30秒もかかり、命中精度が悪い欠陥兵器。

 なるほど、横一列に並べて一斉に撃てば、何発かは当たるだろう。

 だが、それだけだ。

 こちらは2000。

 数騎数十騎の騎馬が討ち取られたところで、後続部隊が奴らを踏み潰すだろう。

 分家の指揮官はそんなこともわからないのか?

 だが、自分が被弾することを考慮して、斬り込み隊長は姿勢を低くして、馬の首を盾にしながら、落馬に備えた。

 しかし、その期待は全て裏切られる。





 100発の銃声で、300を超える騎兵が落馬した。


 100発が300騎に当たったわけではない。


 銃声と同時に、前線の馬が一斉に驚いて転んだのだ。


 馬は大きな音に弱い。


 銃声を聞けば、転倒して騎手を振り落とすのは必然だ。


 大通りは転んだ騎兵で埋め尽くされて、後続部隊の馬は仲間につまづいてさらに転倒をする悪循環が起こる。


 だが問題ない。


 玉突き事故は長くは続かない。


 それに、落馬に慣れている兵は受け身を取り、体勢を立て直す。


 次の100発が放たれるまで30秒ある。その前に距離を詰めれば勝てる。


 斬り込み隊長がそう思った矢先、それは起こった。





「ほい次」


 前後5人、横100列のうち、先頭の射手は振り返ると、後ろの四人が弾込めし終わった銃のうちの一丁と取り換え、また前を向いて引き金を引いた。


 100発の弾幕に晒されて、斬り込み隊長は即死した。


 その後も、先頭の射手は次々銃を取り換え、5、6秒に一発のペースで銃を撃ち続けた。


 【交換撃ち】

 これが、アルベルトの編み出した、火縄銃の連射方法だった。


 最初は、撃ち終わった人は列の最後尾に回り、次の射手が撃つという、【五人交代撃ち】を考えていた。


 けれど、実験は失敗だった。


 この方法だと、ぐるぐる動くことに時間を取られ、思ったほど連射できなかった。


 だから、思い切って後ろの四人は弾込めだけに専念させることにした。


 すると、最初は銃の手渡しに手間取ったが、慣れれば素晴らしい連射を可能にした。


 スバル本家の馬が混乱し、騎馬軍団は総崩れ。


 落馬した騎士たちは、次々弾幕に晒され絶命していく地獄絵図が出来上がる。


「うちの馬と違って、お前らの馬は銃声に慣れていないだろ? というわけでクレア、クラーラと一緒に100人ずつバイコーン騎馬隊であいつらの背後を突いてくれ」

「任せて」

「クラーラにお任せです♪」


 前後5人列のうち、後ろ二列のメンバーは城門から城内へ戻ると、バイコーンにまたがり縦列を成して外に出た。


 外側から周り、敵の背後を突く。


 バイコーンのスピードなら、そう時間はかからないだろう。


「さてと、もうすぐ敵もビビって射程外に逃げ出す頃あいだ。みんな、今日まで鍛え上げたスキルを見せつける時だ!」

『オォオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!』


 誰もがその場に火縄銃を置いて、腰や背中の得物を抜いて走り出した。


 アルベルトは、地面に転がされた火縄銃をストレージに収納しながら、【マップスキル】で戦況を確認した。


 味方を示す青丸が、敵を示す赤丸に紛れると、赤丸が次々消えていく。


 士気の挫け切った大人兵と、士気は絶好調でスキルの力で熟練兵並みの武芸を操る少年少女兵では、戦力には天地の差があった。


 けれど、クレアの反応が、とある赤丸と激突しても、その赤丸は消えなかった。




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 本日から

【ダサメンの俺が勇者で魔王の眷属? 聖剣を使って彼女を魔王ロードに導きます!】

 の投稿をはじめます。


 舞台は学園異能バトルですがジャンルはセクシーラブコメ。


 女の子好きの主人公が、魔王候補ヒロインの眷属として召喚されてから聖剣に選ばれ、大活躍。


 一方で、ヒロインや主人公のことを馬鹿にしていた名門魔王候補たちは活躍の場を奪われていく。という話です。



 どうぞご一読ください。


 また

 【冒険者ギルドを追放された俺が闘技場に転職したら中学時代の同級生を全員見返した】

 【美少女テロリストたちにゲッツされました】


 もよろしくお願いします。


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 そして異世界ファンタジーランキングは日刊20位でしたが、週刊でも28位にランクインしました。皆様に感謝です。

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