タリア誕生

ミシアはタニアを抱きしめたまま、仲間の戦いを見ていた。

ミシア「みんな、ありがとう」

アーキル「へっ、いいってことよ」

ルディア「あまりお役に立てませんでしたし…」

アーキル「それはいつもの事だな」

コノハ「こらっ、アーキル!」

コノハはアーキルの耳を引っ張った。


ミシア「さあ、家に帰ろう」

向こうのタニア「でも、あたし…」

ミシア「あんな奴の言うことは聞かなくていいんだ。何もしなくても、帰ってきていいんだよ。当たり前じゃん。ボクの言うことが信じられない?」

向こうのタニア「ううん、そんなわけないよ、おねえちゃん」


こちらのタニア「わたしは…どうすれば…」

ミシア「タニアもだよ!一緒に帰る以外に何があるっていうのさ?」

ミシアは振り返って声をかけた。

こちらのタニア「でも、わたしは…。偽者、で…」

ケニー「ちょっと質問ですが、記憶は持ってるんですよね?ミシアと一緒に育った昔の記憶を」

こちらのタニア「はい」

向こうのタニア「もちろん、あたしも」

ケニー「ふむ…。脳まで完全に複製されているなら、当然ですか…」


ミシア「なら、やっぱりどっちもタニアで問題ないよ!

どっちもボクと一緒に育った記憶を持ってて、どっちも生きてる。どっちも偽者なんかじゃない、ボクの大事な妹だよ!

むしろ大好きな妹が増えて、嬉しいくらいだね!」

アーキル「そんなことでいいのかよ…」

ルディア「とってもミシアちゃんらしいと思います!」

ルディアは嬉しそうに胸の前で手を合わせる。


ケニー「そうですね…。例えば人間の肌に似せた何かで作られているというなら、偽者と言えるかもしれません。

しかし本当に原子レベルで同一の複製なら、人間そのものですよね…左右反転していたとしても」

コノハ「ケニーは本当に理屈っぽいわね。どうでもいいじゃない、そんなことは」

ケニー「ふう…。良くはないと思いますけど、(無視されるのはいつものことだから)いいですけどね…」


アーキル「それじゃ2人とも連れて帰るということで、文句は無いんだが…」

コノハ「なによ?文句は無いとか言いながら不満そうじゃない?」

アーキル「いやいや!どっちもタニアだと、呼ぶときに不便じゃねーかと思ってだな…!」

コノハはアーキルの耳を引っ張ろうとしていたが、途中で止めた。

コノハ「それはそうかもしれないわね…」

ケニー「なら、どちらかに新しい名前を付けるとか…?」

向こうのタニア「名前を変えるなら、そっちにして欲しいです。あたしが本物なんだから…」

ミシア「タニア、どっちが本物とか…」

こちらのタニア「いえ、いいんです、お姉さま。それが正しいと思いますから」


ルディア「じゃあ、ミシアちゃんが新しい名前を考えるというのはどうですか?」

こちらのタニア「!…はい、それでお願いします!」

ミシア「ええ!?…いいの?」

こちらのタニア「はい、是非」

ミシア「…んー。…分かったよ」

向こうのタニア「え~、あたしもおねえちゃんに名前つけて欲しい!」

ミシア「タニアはお父さんとお母さんから貰った名前なんだから、いいでしょ。じゃあ、こっちのタニアの新しい名前は…」

ミシアは考え込んだ。

“タニア”と似た名前が良いよね。そういえば、ボクらの世界の名前は『クラスタリア』だったなぁ。

ミシア「よし、思い付いた!新しい名前は“タリア”ね」


アーキル「なるほど、タニアと似てていい感じじゃねえか。ミシアにしちゃ上出来なんじゃねーか?」

コノハ「なによ、偉そうに。でも本当に良い名前だと思うわ」

ルディア「はい、とっても素敵だと思います!」

タニア「ふーん…。まぁ、おねえちゃんに免じて、今度からそう呼んであげる…」


タリア「タリア…。はい、わたしも良い名前だと思います。お姉さま、ありがとうございます」

ミシア「えへへ~。気に入ってもらえてよかったよ」


タリアは、改めて皆に向かって頭を下げた。

タリア「皆さん、今回は、本当にありがとうございました。これからも、よろしくお願いします」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る