老婆の戦い(語り:アーキル)

老婆「きいぃっ!なに懐柔されてるんだい!?偽者を殺さなきゃ帰れないんだよ!」

アーキル「いい加減黙れやババア!!」


アーキルが老婆に向かって駆け出す。


コノハ「その通りよっ!」

コノハも素早く弓を構え、矢を放つ。


老婆は老人とは思えない動きで横っ飛びし、コノハの矢をかわした。

老婆がかぶっていたローブの頭の部分が外れ、顔が現れる。老人らしい皺のある肌。ところどころ赤い毛が混じっている、意外と長い白髪。若い頃は見事な赤髪だったのだろう。

老婆は手に持っていた水晶球を地面に置き、瓦礫に隠してあった破壊剣バスタードソードを取り出した。アーキルが持っている両手剣グレートソードほどではないが、かなり大きな剣だ。少なくとも本来老婆が扱うようなものではない。


アーキルが叩き付けた両手剣を、老婆は破壊剣で受け止めた。

アーキル「やるじゃねえか!」

老婆「ふん、昔より筋力は落ちてるが、ひよっこ共には負けないよ!」

そのまま、アーキルと剣を叩き合わせる。


ルディア「やあっ!」

老婆「遅いよ!」

ルディアも刺突剣レイピアを手に参戦したが、老婆は軽くかわす。

コノハの矢も破壊剣で叩き落とし、3人が相手でも全く引けを取らない。


老婆「ひひっ、楽しいねぇ!全力で戦うのは初めてだが、やっぱり楽しいね!」

老婆の口調は、心なしか若返っているように感じられた。

アーキル「へっ、余裕かましやがって!」

老婆「ほら、もっと楽しませてくれよ!」

コノハ「こっちは全然楽しくないわ!」

老婆の動きが速くて、コノハは狙いを定めることすらままならない。


ケニーは自分たちと一緒に来たタニアを守る位置に陣取って様子を見ていたが、老婆とは思えぬ動きに感嘆の念を禁じえなかった。


最初に息が上がり始めたのは、ルディアだった。

老婆「ふん、全くなっちゃいないね!」

老婆はルディアのレイピアを弾き飛ばし、止めを刺そうとする。

ルディア「ああっ!?」

ケニーはこの瞬間を狙っていた。今まで敢えて使わずにいた防壁魔法を発動!光る壁が現れ、老婆の破壊剣を受け止めた。

老婆「おおっ?!」

老婆の動きが一瞬止まった。


アーキル「隙ありっ!」

老婆「どこが隙だっ!」

アーキルが上段から斬りかかるが、老婆の方が紙一重で速かった。破壊剣がアーキルの胸に叩き込まれる。しかしアーキルは止まらず、両手剣が老婆の腹を貫いた。

剣の勝負は相打ちだったが、鎧の有無が勝敗を分けた。

アーキルが着ている金属鎧プレートアーマーは破壊剣をぎりぎり防いでいた。


老婆は腹の中から出た血で吐血した。

老婆「ぐはっ。…ひ、ひっひっひ…最期に、良い勝負、じゃったよ…」

アーキル「ふん…。婆さんとは思えねえ強さだったぜ。あんたがもっと若かったら、危なかったかもな」

アーキルは老婆の絶命を確認すると、背を向けた。


アーキル「さあ、帰ろうぜ!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る