遭遇(語り:タニア)
遺跡に居たのは2人。
2人とも頭からローブを深くかぶっており、顔はよく見えない。
体格は2人とも小柄で、子供か、あるいはシルフ人のように思える。(背が低いだけならドワフ人も候補だが、ドワフ人はがっしりした体格をしているものだ。2人とも華奢で、ドワフ人とは思えなかった)
老婆「ひっひっひ、ようやく来たねぇ。待ちくたびれたよ」
片方の人物が口を開いた。年老いた女性の声だった。
手には水晶球を持っている。
アーキル「オレたちが何者だか、分かってるのか?」
老婆「ああ、もちろん。上手く出し抜いたつもりじゃろうが、残念じゃったのう?
あのお方にはお見通しなんじゃよ」
ミシア「ってことは、やっぱりお前たちがタニアに呪いの魔法をかけた犯人なんだな?!」
老婆はにやりと笑い、タニアの方を見た。
老婆「…いろいろと懐かしいんじゃないかい?」
タニア「…何がですか?」
老婆「この場所だよ…。あれとかどうだい?」
老婆が広間の隅を指差す。そこには鉄で出来た檻が置かれていた。子供が2人入るくらいの大きさの。
ミシア「…これって…」
檻の入り口は開いていたが、よく見ると鉄格子が切断されて四角い穴になっているのだった。
タニア「…それは、まさか!」
タニアには覚えがあった。7年前、誘拐から助けてくれた冒険者。その一人が剣で鉄格子を斬って出口を作ってくれたのだ。
ミシアは助け出されたときは眠っていたのでその様子は見ていないものの、檻自体は記憶にあった。
老婆「気付いたかい?その檻を切断した奴は、かなりの腕前だね。ここは、お前たちが逃げ出した場所なんじゃよ」
ミシア「そうなの?」
タニア「…たぶん、本当です。逃げたというか、助けてもらった場所…」
ケニー「ここが…」
コノハ「…ということは、貴女たちが、昔ミシアとタニアちゃんを誘拐した犯人なの?!」
老婆「百歩ゆずって、ワシはそう言えるかもしれんが、こいつは違うじゃろうなぁ」
老婆は傍らにいる人物の方を見た。
少女「ええ、あたしが…誘拐犯なわけない」
もう片方の人物が言葉を発した。
声からすると、女の子のようだ。それも、どことなく聞き覚えのある声だった。
ミシア「じゃあ、何者だっていうんだ?!」
少女「…。ようやく会えたわ…おねえちゃん」
ミシア「おねえちゃん?…誰のこと?」
ミシア達は顔を見合わせるが、誰にも心当たりは無い。(ルディアに姉妹はいないし、コノハには姉がいたが妹はいない。アーキルとケニーはそもそも男なので姉呼ばわりされるはずがないし、ミシアの妹はタニアだけだ)
少女「ひどいなぁ、おねえちゃん。分からないの?…でも仕方ないか。とっても久しぶりだし、偽者に騙されてるんだし」
少女はミシアに向かって言った。
ミシア「偽者?何を言ってるんだ?お前は何者だ?!」
少女「あたしだよ、おねえちゃん」
少女は頭に被っていたローブを外した。
その顔は、タニアだった。
ミシア「タニア?!」
こちらのタニア「えっ?!」
ルディア達「ええーっ?!」
向こうのタニア「そうだよ。タニアだよ、おねえちゃん!」
ミシア「えっ?えっ?」
ミシアは自分の後方にいるタニアと、前方にいるタニアを交互に見る。前方のタニアは若干痩せているような気もするが、どちらもタニアとしか思えなかった。
ミシア「えっ?なんでタニアが2人いるの…?!」
向こうのタニア「そっちに居るのはあたしの偽者なのよ、おねえちゃん!」
こちらのタニア「わたしが、偽者…?…そんなことないわ!あなたの方こそ偽者なんじゃないの?!どうしてわたしと同じ顔をしているの?!」
向こうのタニア「あたしが本物のタニアよ!…おまえは偽者の分際で、ずっと家に居て、ずっとおねえちゃんの傍にいて…。おまえが全てを奪ったんだ…許さないんだから!」
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