追跡

翌朝早くにミシア達は行動を開始した。

白い鳥に見つからないよう、泊まっていた跳ねる亀亭の裏口から出る。

そして町の北門に預けていた馬車を受け取り、町を出て東へ進んだ。


『白い鳥魔力マナ探知器レーダー』を見ても鳥の居場所にほとんど変化は無く、馬車の背後を見ても白い鳥が追ってきている様子はない。どうやら出し抜けたようだ。

とはいえ、万が一白い鳥に見つかっても大丈夫なよう、馬車の荷台の奥にタニアを隠して気を付ける。


昼は少し休憩しただけで馬車を進めたが、夜になってさすがに夜営することになった。

焚き火を囲んで食事をしながら、敵の動向を推測する。


アーキル「オレたちの姿が見えなくなったから、あの白い鳥の野郎、さぞ慌ててるだろうな」

アーキルはしてやったりと嬉しそうに笑ったが。

コノハ「むしろ、警戒してるんじゃない?」

ケニー「そうですね。術者の居場所を探す方法を見つけたことが分かるとは思えませんが、居場所がばれること自体は警戒しているでしょうから。術者の場所と町の間に、見張りが居てもおかしくありません」

ミシア「他の鳥が居るかもしれないってこと?」

ケニー「あの白い鳥の正体が分かりませんからねぇ。複数居る可能性はありますが、探知器には1本の線しか映ってませんし…。でも、違う魔力パターンということも考えられるか…」


ルディア「見張りが鳥だけとも限りませんよね?」

ケニー「それはそうですね」

アーキル「だとすると、当面は夜襲にも気を付けた方が良さそうだな。いつもと同じく、見張りを立てるぞ」

ケニー「いつもなら、真夜中の見張りはアーキル一人ですが、今回はもう一人いた方が良いかもしれませんね」

普段の夜営の見張りは、コノハ+ルディア→アーキル→ケニー+ミシアの順に交代する。

タニア「あの…。見張りくらいなら、わたしにも…」

ミシア「タニアは冒険者じゃないんだから、しなくていいの。護衛対象なんだから、ゆっくり休んでればいいんだよ」

タニア「でも…」

アーキル「そういうお前だって、寝てるときに奇襲されたら対応できんだろ」

ミシア「それはそうだけどさー。じゃ、ずっと起きてようかな?」

ケニー「それはやめた方がいいですね。明日に差し障りますから」

ルディア「そうですよ。ミシアちゃんが寝てるときは、私たちが守りますから!」

ミシア「ありがと。んじゃ、ずっとじゃなくて、アーキルのときにもボクが参加するってことでどうかな?それくらいならいいでしょ?」

コノハ「それより、2交代にした方が良いんじゃないかしら。普段より襲われる可能性が高いんだし」

ケニー「んー、そうですね。前番と後番の時間を長くして2交代とし、アーキルはいつも通り真夜中に起きてもらって3人体制とするのはどうでしょうか?」

アーキル「そうすると、お前たちの負担が増えちまうが…」

コノハ「今回は緊急事態だし、構わないわよ」

ルディア「そうですよ。そうしましょう!」


しかしその夜は、特に襲われるようなことは無かった。


・・・


翌日も探知器の線に従い、一行はさらに東へ進んだ。

鳥を表す点の位置は、うろうろ動いてタニア達を探している様子ではあるものの、大きく動いてはいない。あくまで町の中に留まっていると思われる。

しかし街道沿いに進めたのは昼までだった。線が指している先はもう少し北側で、道は東に続いている。

そのため、午後からは道を外れて、道なき荒野を北東へ進むことになった。馬車で通ることが出来たのは幸いだった。


そして夕方になる前に、探知器上の線の端が指している辺りまで来た。

この辺りに、タニアに魔法をかけている犯人、もしくは白い鳥を操っている術者がいるはずだ。


そこは、朽ちた遺跡だった。

石造りの建物のようだが、天井は崩れ落ちて、壁や柱が残っているのみだ。

ミシア達は馬車を降りて、慎重に遺跡の中に入っていった。


しばらく進んで、遺跡の中の開けた場所に出た。昔は広間だったのかもしれない。

そうっと覗き込むと、そこには2人の人物が居た。


ミシア「あれが犯人かな?」

アーキル「十中八九な」

コノハ「奇襲する?」

ルディア「本当に犯人かどうかは分からないですから、いきなり襲うというのは…」

ケニー「だからと言って、尋ねたら奇襲できませんし…」


ミシアたちは小声で会話していたのだが、それを聞きつけたのかどうか、広間の人物の片方が反応した。

老婆「ひっひっひ、そんな所でこそこそしてないで、入ってくるといい。何もしやしないよ…すぐにはね」


アーキル「見つかったか…」

ミシア「こうなったら、行くしかないよ!」

ミシアとアーキルは顔を見合わせて一度頷きあい、広間に踏み込んだ。

他のメンバーはタニアをかばいつつ、広間の入り口に残って警戒する。

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