発見(語り:コノハ)

コノハ達は、まず雑貨屋で鳥捕り網を購入した。長い棒の先に網が付いていて、これで鳥を捕まえるというのがアーキルのアイデアだった。

そしてあの白い鳥を探すために町の中をうろついたが、何の手掛かりも無いのにそう簡単に見つかるわけもなく。

アーキル「くそ~、見つからねぇなぁ!」

コノハ「当たり前でしょ。あんな小さな鳥、どこにだって隠れられるんだから。

…そろそろ昼時だから、一旦冒険者ギルドに戻りましょ」

アーキル「…あぁ」


アーキル達は、昼に一旦集まって、状況を報告しあうことにしていたのだ。


アーキルとコノハが跳ねる亀亭に戻ってくると、ちょうどケニーとルディアも戻ってきたところだった。

コノハ「お疲れ様、ルディア、ケニー。そちらはどうだった?」

様子を見れば明らかだが、コノハはルディア達に問いかけた。

ルディア「駄目です…見つかりませんでした」

ケニー「そちらも同様のようですね。まぁ、そう簡単に見つかるとは思っていませんでしたが」

コノハ「そうねぇ…。隠れる気になれば、こんな木の中ですら見つけられないでしょうし」

コノハは跳ねる亀亭の近くに立っている木を見上げた。


…木の中に白い物が見えた気がした。

コノハ「…ん?」

よく見ると、それは探していた白い鳥だった。

コノハ「居たぁ~!?」

コノハは小声で叫んだ。

アーキル「なんだとぉ?!どこに?!…むぐぅ」

コノハ「ちょっと、騒がないで!」

コノハはアーキルの口を手で押さえた。


コノハ「ほら、あの木の茂みの中よ」

コノハは木を背にして立ち、木から見えないように注意しながら体の前で鳥を指差した。

ケニーは伸びをしながら陽に当たるフリをして、木の方に視線を向けた。

ケニー「本当だ、居た?!」

白い鳥は枝に止まり木の葉に紛れてコノハ達を見ていた。アーキルの挙動が不審だったが、まだこちらが見つけたことに気付いていないようだ。


アーキル「捕まえるには、ちょっと遠いな…」

アーキルが買った鳥捕り網の棒の長さでは、届きそうにない。

コノハ「弓で撃つ?」

ルディア「駄目です、コノハ!町中で矢を射るなんて…」


ケニー「僕が休憩しているフリをしてここで見張ってますから、アーキルとコノハはもう一回りしてくるフリをしながら、木の後ろに回り込んで近付いて下さい。それから、ルディアはペペさんを呼んできて下さい。鳥に気付かれないよう、自然に振舞って」

アーキル「分かった」

ルディア「分かりました…!」


アーキル「アー、メンドクセーけど、もうヒトマワリしてくるかーあ」

アーキルはわざとらしく声を発して歩き出した。コノハもそれに続く。

コノハ「…あんた、壊滅的に演技が下手ね」

アーキル「なんだと?この迫真の演技派俳優に向かって何を言ってるんだ」

コノハ「どこが演技派よ」


コノハはちらっと振り返ってケニーとルディアを見た。

ケニーは何故か柔軟体操を始めて、道行く人々から奇異の目で見られている。

ルディアも店を離れようとしていたが、ぎこちない歩き方をしていて見事に不自然だ。

コノハ「駄目だこいつら…」


果たして、白い鳥は飛び立った。

コノハ「あ、逃げる!?」

しかし白い鳥はちょっと離れた建物の屋根の上に降り立った。そして、きょろきょろと頭を動かし、アーキル達・ケニー・ルディアを見る。

作戦の失敗を悟り、アーキル達も堂々と白い鳥の方に向き直った。

アーキル「なんだ?逃げるんじゃねーのか?」

ケニー「気を付けてください、呪いの魔法をかける気かも?!」

慌てて建物の陰などに身を隠すコノハ達。


しかしアーキルは動かなかった。

アーキル「へっ、上等だ。呪いでも何でも、かけてみやがれ!」

コノハ「アーキル?!馬鹿なこと言ってないで、隠れなさい!」

アーキルは白い鳥を睨みつける。

白い鳥もアーキルから目を離さない。

…しかし呪いは発生しなかった。

アーキル「なんだぁ?オレには呪いをかけられねーのか?!」


ペペ「おや、ケニーさん。…何をなさってるんですか?」

物陰に隠れているケニーに、ペペののんびりした声がかけられた。ペペは跳ねる亀亭から出てきたところだった。

ルディア「ペペさん?!なぜここに?…ちょうど呼びに行こうとしていたところなんです!」

ペペ「ああ、ちょっとミシアさんに用事があって、会ってきたところです」

ケニー「ちょうど良かった!あの白い鳥が居たんです!」

ペペ「なんですって?!」

ペペはケニーが指差した方向を見た。確かに白い鳥が居る。

ケニー「打ち合わせ通り、お願いします!」

ペペ「分かりました!」

ペペは精神を集中させ、白い鳥の魔力を感知しようとした。


が、白い鳥はまた飛び立ち、今度はコノハ達の目の届かない所に行ってしまった。


アーキル「くそ、逃げられたか!」

ルディア「やはり簡単にはいきませんね…」

コノハ「あんた達の演技力じゃ駄目ね…」

アーキル・ルディア「なんだと?!」「そうですか?」


ケニー「ペペさん、どうでしたか?ほとんど時間はありませんでしたが…」

ペペ「確かにほんの少ししか見られませんでしたが…。あの鳥から魔力の糸が出ていて、東の方に伸びているのは感じました」

ケニー「東ですか。…距離は分かりますか?」

ペペ「それは分かりませんが、相当遠くですね。少なくとも町の外だと思います」

ケニー「町の外となると、さらに探すのが大変ですね…」

ペペ「いえ、しかし魔力のパターンは分かりましたから…良いアイデアがあります。2~3日、時間を下さいませんか?」


ペペは自信ありげに笑みを浮かべた。

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