第4章 タニアの敵

作戦会議(語り:ケニー)

ケニー「それでは、今までの状況の整理と、今後の方針について話し合いたいと思います」


ミシア達は、パーマスの町の冒険者ギルド『跳ねる亀亭』の一室に集まっていた。

探し物屋のペペの店を出た後、念のために白い鳥を探してみたが、案の定見つからなかった。

その後、跳ねる亀亭に戻り、夕食をとって、会議用の部屋を借りたのだ。

大勢の人が酒を飲んで騒いでいる1階では打ち合わせなど出来ないし、宿泊用に借りている部屋は全員が集まるには少々手狭だし。


ケニー「まず、タニアちゃんの症状ですが、これは当初想定していたような病気ではなく、呪いに類する魔法である可能性が高いです」

タニア「はい…」

ケニー「探し物屋での出来事から、この呪いにはあの白い鳥が関わっているのがほぼ確実です。あの鳥は、ハルワルド村にも居たんですよね?」

ミシア「うん。同じ鳥かどうかは分からないけど、毎朝見かける鳥にそっくりだったよ」

ケニー「タニアちゃんは、見たことがありますか?」

タニア「はい。何度か」

ケニー「そのときには、何か異変は?」

タニア「いえ、特に何も…」

ミシア「ボクも何とも無かったよ」

ケニー「タニアちゃんの今回の症状は、主に屋外で起きているという話でしたよね?」

タニア「はい。…でも、家の中で起きたことも何度か」

ケニー「それは、家の中のどんな場所でしたか?…つまり、窓や扉などを通して、外から見える位置ではなかったですか?」

タニア「…そう言われてみれば、そうだったような気もします…。地下室で起きたことはありませんし」

ケニー「ありがとうございます。…ここから推察できることは、あの白い鳥が見える場所で呪いが発動するということです」


コノハ「でもその鳥は、ずっと前から甘いはちみつ亭の近くに居たんでしょう?」

ミシア「そうだね~。…少なくとも…寝たきりになった頃に、窓の外にあの鳥が居るのを見た記憶があるかな。それ以前は、覚えてないや」

ルディア「それは、少なくとも数年前から居たということですよね?」

ミシア「うん。そんなもん」

タニア「およそ7年前ですね。わたしが5才のとき、学校に入学する前のことですから…」

ハルワルド村では、6才になると学校に行って勉強を始めることになっている。


コノハ「その鳥はそんな昔から居たのに、呪いの症状が出始めたのはつい最近なのよね?」

タニア「はい。ここ数ヶ月のことです。最初は気のせいかな、くらいでしたが、少しずつ強くなって…」

ケニー「確実なことは言えませんが。呪いの魔法をかけている者が、ここ数ヶ月でその魔法を使えるようになり、習熟していっている、ということでしょうか…」

全員「…」

それに異を唱える者は居なかった。


アーキル「まあ、何にせよ、それが魔法だってんなら話は簡単だ。術者を見つけてぶん殴ればいいんだろ?」

コノハ「あんたねぇ。…まぁそういう事でしょうけど、どうやって術者を見つけるのよ?」

アーキル「それは、あの鳥をふん捕まえてだな、居場所を…」

コノハ「自白させるって?鳥が喋れるわけないでしょ!…いえ、あの鳥は自然の生き物じゃなさそうだったから、言葉を喋る可能性も無くは無い…?」

ケニー「その可能性もありえますが、ペペさんは白い鳥から出る魔力の糸のようなものを感じたそうなので、その糸を辿れば、犯人へ辿りつくことが出来るのではないでしょうか」

コノハ「つまり、あの鳥を捕まえて、ペペさんに見てもらうわけね?」

アーキル「よし、決まりだな!明日から、鳥の野郎の捜索だ!」

コノハ「まぁ、そうね…。でも、そう簡単に見つかるかしら」

ルディア「見つけるしかありません!みんなで協力して、タニアちゃんを助けましょう!」

頷く一同。


タニア「皆さん…。ありがとうございます」

タニアは深々と頭を下げた。

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