ミシアの魔力量

ペペ「その前に、ミシアさん…でしたか。今回のお礼代わりに、魔力量を測定させていただけないでしょうか?こんなに強大な魔力を感じたのは初めてなんです」

ケニー「測定…ですか」

コノハ「…なんだかケニーみたいにマニアックね…」

ケニー「どういう意味ですか」


ミシア「別に構わないけど?腕や足なら、何を刺されても痛くないしね」

アーキル「おいおい…」

ペペ「いえいえ、そんな拷問みたいな事は致しませんよ。ちょっと測定器を持っていただくだけです」


ペペは店の奥から両手で持てる程度の大きさの装置を持ってきた。丸い円盤が2つくっついた形をしていて、雪だるまのようだ。

雪だるまの顔の部分に横長の長方形の枠があり、「00000」と出ている。


ちなみに、クラスタリアで使われている数字は、アラビア数字と形が似ている。

0→「0」

1→「|」起源は、棒が1本

2→「2」起源は、棒が2本横に並んでいる状態をつないだもの

3→「3」起源は、棒が3本横に並んでいる状態をつないだもの

4→「ч」起源は、棒が4本

5→「S」起源は、棒が5本

6→「6」起源は、小さい丸(4本の棒を表す)に棒が2本加わったもの

7→「9」起源は、小さい丸2つの棒が1本欠けたもの

8→「8」起源は、小さい丸2つ

9→「Q」起源は、小さい丸2つに棒が1本加わったもの。そこから、丸が1つになった


ペペ「下の丸い部分を持って、照明の魔法具にするのと同じ要領で、魔力を込めてください。すると、上のパネルに魔力量の数値が出ます」

ミシア「なんだ、簡単だね!」

ミシアは雪だるまの下の部分を持つと、測定器に魔力を込めた。

すると、パネルの数字が下の桁から順にくるくると勢いよく回り出す。


ペペ「この測定器のメーターがそんなに動いたのを初めて見ましたよ!それだけでも感動です…!

普通のオラク人なら、魔力量はだいたい4から24マット、平均14程度です。熟練の魔術士や冒険者ならそれを越えることもありますが、100に届けばすごいものです。

なのに、ミシアさんはもう100を超えてますよ…!?」

ケニー「ええ…?この装置、何桁まで対応しているんですか?」

ペペ「設計上は5桁まで大丈夫です。そんな値は見たことがありませんけどね!」

コノハ「魔力の多い人種だって、3桁を超えることは無いのに…?」

人種によって体格に特徴的な違いがあるように、魔力量にも特徴がある。特に魔力量が多いとされるのはシルフ人、ウィンズ人、エルフ人。逆に少ないのはサラム人、ドワフ人である。オラク人はその中間だ。

ペペ「ちなみに、自分が今までに直接見た最高値は77です!」


パネルの数字はまだ回り続ける。

ルディア「あの、これ、大丈夫なのですか…?」

ペペ「仮にメーターの上限を超えても、メーターが止まるだけ。という安全設計になっています。そこまでいく人間は居ないでしょうし」

コノハ「ねえ、湯気が出てきてない?」

ケニー「雪だるまが溶けてきてる感じもしますね…?」

ペペ「むむ…。メーターが予想以上に回ることで発熱しているのかもしれません。それは盲点だったかも…?」

アーキル「うぉい!」


白い湯気が噴き出し、シューッ!という大きな音も響き始めた。

タニア「お姉さま、もう止めた方が…!」

ミシア「うわわっ!」

ミシアの手は感覚が無いので熱さも感じないものの、何かが焦げる嫌な匂いが漂ってきたので、ミシアは慌てて測定器を放り投げた。


アーキル「ふう…。爆発するかと思ったぜ」

ペペ「ははは…。測定器が爆発なんかするはずないじゃないですか」

良い笑顔を見せるペペ。

ケニー「でもさっき盲点とか言ってましたよね…?」

ペペ「いやあ、実際にその状況になってみないと発覚しないミスというのはあるものですよ」

アーキル「おいおい…」


ペペ「それよりも、数値を見てみましょう!」

測定器が冷めるのも待ちきれず、厚手の布でくるんで拾い上げる。

雪だるまの顔の部分が溶けかけているが、数値は読み取れた。

ペペ「えっと、80?…いや、あー…800!?」

一同「おお~!」


コノハ「ミシアの魔力量が他人ひとより多いのは分かってたけど、まさかそんなに…!」

ルディア「すごいです!」


アーキル「常人の何倍だ、そりゃ?!」

ケニー「オラク人の平均が14マットなので、」

アーキル「あー、いらん、細かい数は」

ケニー「じゃなんで聞いたんですか?!」

アーキル「驚いただけだ、具体的な数を知りたかったわけじゃねえ」


タニア「お姉さま、すごいです!一人で遠見の水晶板テレバンをずっと点け続けられるわけですね!」

ケニー「それを言うなら、身体強化の魔法を1日中使える理由が分かったというものです」


ペペ「いやあ、すごい数値です。測定した甲斐がありました!」


皆、なかなか興奮が収まらなかった。

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