探し物屋のペペ(語り:ケニー)

ミシア達は、焼肉のセナンから教えてもらった店の前まで来た。

店の看板には『探し物屋』「失せ物を見つけられるようにします」と書かれている。

ケニー「探し物…。物を探す魔法があるとして、どんな原理なのかちょっと想像がつきませんが…。上空から俯瞰する魔法?しかしそれだと物陰にあると分からないし…」

コノハ「呪い主も探し物に含まれるのかしら…?」

アーキル「ごちゃごちゃ考えてねえで、聞いてみりゃいいだろ」

ミシア「そうそう。ごめんくださーい!」

ミシアも深く考えず店の扉を開いた。


男の子「はーい、いらっしゃいませ」

店の中にいたのは、うさぎのぬいぐるみを抱えた10才くらいの可愛らしい男の子だった。

コノハ・ルディア「は~(可愛い…)!」

ミシア「君がペペさん?」

ピピ「いいえ、僕はピピと言います。ペペはお父さんです」

ミシア「ペペさんに会いたいんだけど?」

ピピ「はい、少々お待ちください。…お父さーん、お客さんだよー!」

ピピは店の奥に向かって大きな声で呼びかけた。


ペペ「はーい、今行くよー」

店の奥から出てきたのは、この親にしてこの子ありというのが納得できてしまう、ほっそりした美男子だった。

コノハ・ルディア「は~!」

ペペ「いらっしゃいませ。ようこそお出でくださいました。初めてのお客様ですと当店でお力になれるか分かりませんが…」

ケニー「初めてだと駄目なんですか?」

ペペ「ええ。当店は探し物屋と名乗っていますので、物を探す…無くした物を何でも探せると思われがちなのですが。

実際のところは、大切な物に印を付けておくことで、いざそれが無くなったときに、その印を探すというサービスなのです。ですから、事前に印を付けていないと探せないのです」

ケニー「なるほど…。その印が魔法によるもので、その魔力を感知できるということでしょうか?」

ペペ「よくお分かりで。私は魔力を感知する魔法が使えるのです。例えて言えば、音が聞こえるようなものと申しますか…。もちろん範囲は無制限とは参りませんが、この町の中くらいでしたら全く問題ありません」

ペペは棚から札を取り出してケニーに見せた。

ペペ「この札は特徴的なパターンで魔力を放出するようになっています。これを対象物に貼っておけば、そのパターンを探せるという仕組みです」

ケニー「なるほど、そういう原理なら納得です」

ペペ「ですから、札を貼っていない品物は探せませんので、初めて来店するお客様が無くした物は探せないのです」

ケニー「いえ、充分です。実は試してみていただきたい事があるのです」


ケニーはタニアが誰かから呪いの魔法をかけられているかもしれないという事を話し、そしてその魔法の痕跡が見つけられないか試してほしいと依頼した。

ペペ「なんと、呪いの魔法ですか…!そんな怖ろしい魔法があるのですね…。そういう事例は経験がありませんが、お力になれるのであれば、やってみましょう」


・・・


ケニーとペペが話している間、他の面々はピピと話をしていた。


ピピ「あの…。お母さんが、よかったらこれをどうぞ、って」

ピピは切られた林檎を差し出した。赤い皮がうさぎの耳の形のように付いてる。

ルディア「まぁ、可愛いですね!」

ミシア「これ、食べるの楽だから好き!」

ミシアは切られた林檎を手づかみで口に放り込む。

タニア「もう、お姉さまったら…。わたしが食べさせてあげますから」


コノハ「さっき、ぬいぐるみも持ってたけど、うさぎが好きなの?」

ピピ「はい!冬になると雪うさぎを作るのも楽しいです!」

アーキル「この町じゃうさぎが流行ってるのか?うさぎ料理を出す店もあったしな」

ピピ「! うさぎは友達です…食べ物じゃありません…」

ピピは涙目になる。

コノハはアーキルの耳をひねり上げた。

アーキル「いてててて!」

コノハ「あんた、ほんっっとにデリカシー無いわね…!!」


・・・


ケニー「ちょっと、みんな!こっちは大切な話をしているのに、何してるんですか!?」

タニア「ごめんなさい、つい…」

ケニー「まぁいいです…。とにかくタニアちゃん、ペペさんに見てもらえることになったので、こちらに来てください」

タニア「!…はい、よろしくお願いします」


アーキル「ちなみに、料金はいくらくらいなんだ?」

ミシア「また焼肉?」

ルディア「それなら、お安い御用です!」

コノハ「そんなわけないでしょう」

ペペ「それは、どれくらいお役に立てたかで考えさせてください」


ペペ「では、皆さん、しばらく静かにしていただけるでしょうか?」

ルディア「はい」

一同、押し黙ってペペとタニアを見守る。(アーキルもひねられたままの耳の痛さをこらえて声を出さないよう我慢した)

ペペはタニアの前に立ち、右手をタニアに向けたまま目を瞑って集中する。


ペペ「…こっ、これはっ…!?」

ケニー「何か分かりましたか?!」

ペペ「強大な魔力が…こんなに大きな魔力は感じたことがありません…!」

タニア「!?」

ケニー「それは、どこから来ているか分かりますか?」

ペペは指差した。ミシアを。

ミシア「へ?」

ペペは目を開けてミシアを見る。

ペペ「あなたから強大な魔力を感じます…!いったい何者なのですか?!」

ミシア「何者って言われても…単なる女の子だけど?」

アーキル「ああ、単なるラ族だよな」

コノハ「バカッ!」

アーキルの耳がさらにねじられる!

アーキル「うぎゃあああ!」


ケニー「ええっと…。タニアちゃんの呪いが、ミシアから来ているということですか?」

ペペ「いいえ、そうではありません。タニアさんからは何も感じられません」

コノハ「どういうこと?」

ペペ「呪いの魔法がどういったものなのか分かりませんが、少なくとも今は、残滓のような魔力も何も感じられないということです」

ケニー「ミシアの魔力が強すぎて、その陰に隠れて、タニアちゃんに残っている魔力が小さくて感じ取れない可能性は?」

ペペ「その可能性が無いとは言い切れませんが…」

ケニー「ミシア、ちょっと離れて…店の外に出ていてもらえますか?」

ミシア「う~…分かった」

ミシアは言われた通り、店の外に出ていこうとした。が、ペペがそれを呼び止めた。

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