町への道行き

ミシア達はライラやスカス盗賊団の面々に見送られてハルワルド村を出発した。

ライラ「気をつけて行ってらっしゃい~」

スカーレット「アタイたちも付いてってやりたいところだが、町には行きづらいもんでな。ほら、盗賊団だから」

トーリ「その理屈なら、村にも行きづらいと思いますが…」

ミシア「大丈夫!行ってくるね!」


・・・


ミシアがタニアを連れて行くのに、エスウィングのメンバーも同行していた。

ミシアが一緒に来て欲しいとお願いしたとき、ミシアは護衛料を払うと言ったが、ルディアは断った。

ケニー「ちょうど魔液の換金に町へ行かなきゃなーと思ってたんですよ」

ルディア「だから、そもそもミシアちゃんも一緒に行くんです。そこに護衛料なんて取るはずないでしょう?」

アーキル「ふん、まぁそうだな」

コノハ「アーキル、照れてるの?」

コノハはアーキルの頭をなでた。

アーキル「照れてねえ!てか頭なでる方が恥ずかしいから、やめろ!」


・・・


馬車の御者を務めるのはミシアだ。ミシアの隣にはルディアが座っている。タニアとケニーは荷台に乗り、アーキルは馬車の前、コノハは馬車の後ろを歩くことになった。

アーキル「おまえ、御者が出来るのか」

ミシア「看板店長だからね!」

ケニー「理由になってるんでしょうか…?」

タニア「お店として馬車を使うこともあるかもしれないからと、お姉さまは馬車を御す練習をしていました。わたしも御者は出来るので、いつでも交代しますよ」

アーキル「なんだ、二人とも出来るってことか」

ミシア「そうだけど、タニアは病人だからやらなくていいよ」

タニア「最近は特に何も起きてませんし、大丈夫ですが…」

コノハ「いつ起きるか分からないんでしょ?安静にしていた方がいいわ」

タニア「はい…」

ルディア「私、馬の乗り方は知っていますが、馬車の御者はしたことがありません。教えていただけますか?」

ミシア「いいよ! まずはこうやって…」


道は雨の後でぬかるんでいたが、馬車の通行には問題なかった。

ハルワルド村は森の中にあるので、当分は森の中の道を進む。近くには村の小川の本流である川が流れており、この川は目的地であるパーマスの町の方へ流れているので、概ね、この川沿いに進むことになる。

進んでいくと、森の木々は薄くなり、地形は小さな山に変わってくる。そして谷が出始め、川は谷底を流れるようになるが、道はその谷の上を続いている。

さらに進むと、道は谷をつくる崖の中腹を通るようになる。崖といっても垂直ではないが、崖の上を見上げたり下の谷間を覗いたりすると、垂直のように思えてしまう。谷底の川は昨日までの大雨で増水して激流になっており、落ちたら命は無いだろう。

道の途中で崖崩れが起きていないか、注意しながら馬車を進める。


崖の道の途中で、広場のような空間が出来ている場所に差し掛かった。道は大きく左側へ曲がっており、見上げるような崖が壁になって道の先が見えない。右の谷側に道が張り出している格好で、広場になっている。

その広場の谷側の先端にはたくさんの花が咲いていて、さしずめ花畑のようであった。これまでの道端にも花や草は生えていたが、ここまで多く咲いている場所は無かった。

タニア「ここ、花畑みたいで綺麗ですよね、お姉さま」

ミシア「うん、そうだね」

ミシアは冒険者になってからほぼ毎月ここを通るようになったが、タニアは(タニアに限らずハルワルド村の子供は)滅多に町に行かせてもらえないので、ほとんど通ったことが無かったのだ。


コノハ「通る度に思うんだけど、どうしてここだけたくさん花が咲いているのかしらね?」

ケニー「さあ? 広場のように開けているから日当たりが良いのかもしれません」

コノハ「うーん、そうかしら…?」


しかし花畑は綺麗だが、今はそれを眺めている場合ではない。

ルディア「帰りにゆっくり見ることにしましょう」

名残惜しいが早々に通り抜けることにする。

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