第3章 治療法を求めて

馬車を借りる(語り:ミシア)

翌日の朝。ミシアは早速町へ出発するつもりだったが、あいにくの雨天だった。それも近年では見たことがない大雨!

出発は延期せざるを得なかった。

町へ行く途中には崖の中腹に出来ている段を利用している道があり、道幅は広くて馬車がすれ違えるほどなのだが、雨が降ると崖崩れが起きる可能性があり、危険なのだ。

ミシア「もう、急いでるのに…!」


大雨は3日3晩続いた。

ハルワルド村の中を流れる小川も増水したが、小川の上流にある泉の水門を閉めることで、氾濫するような事態は避けられた。

その間、ミシアはタニアに張り付いて様子を見ていたが、タニアに異常な症状が現れることは無かったので、一安心ではあった。


4日目の朝、ようやく雨は上がり、打って変わって快晴となった。

ミシアは馬車を借りるために、村長の家に向かった。

村には共同で保有している馬車がある。主に野菜や肉を町へ売りに行くために使うものだが、村長の許可を得れば誰でも使えるのだ。


ミシアたちエスウィングの一行は、月に1回くらいの頻度で魔液を換金するために町へ出ていたが、そのときは徒歩だった。

今回は病気のタニアを連れていくので、馬車を使いたい。


ミシア「というわけで、馬車を借りるね!」

サタ村長「うむ。タニアを医士に診せるために町へ行くというなら、止める理由はあるまい」

イーデ夫人「雨が上がって間もないから、本当はもう少し待った方が良いと思うのですが…」

ミシア「分かってるよ!でも早く行きたいから。雨でだいぶ足止めくらっちゃったし」

イーデ夫人「ええ。気を付けて行くんですよ」

ミシア「うん!」

サティ「ライラ様のことはわたくしに任せておきなさい」

ミシア「うーん、まぁ、任せた!」

サティ「なんですの、その煮え切らない返事は?!」

ミシア「ははは」

スカリィ「ミーシャおねーしゃま、気をつけていってね」

ミシア「大丈夫、エスウィングのみんなも一緒だから。それじゃ、行ってくるね!」

ミシアは手を振りながら、村長の家を出た。

馬車の許可を出すのは村長だが、馬車をひく馬の世話をしているのはハーベイという男の家なので、ミシアはそちらに向かった。


ミシアを見送ったイーデ達は。

イーデ夫人「それにしても、雨の後に病気のタニアちゃんを町に連れていくなんて、あのときの事を思い出してしまいますわ…」

サタ村長「うむ…。だが今回は手練れの冒険者も居ることだし、同じような事があっても大丈夫だろう」

イーデ夫人「だと良いのですが…」

サティ「…」

スカリィ「なーに?ターニャおねーしゃん、だいじょうぶだよね?」

サティ「もちろんですわ。ミシアならきっとタニアを治して無事に帰ってきますわ」

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