深痕のミシア ―2.タニア編「どちらの言う事を信じるの？」―

第1章 日常

ミシア登場（語り：ミシア）

ミシア「ボクが！看板店長のミシア！です！」

タニア「きゃー！お姉さまー、きらきら～♪」

幼い女の子「ミーシャおねーしゃま、きらきらー」

ここは宿酒場『甘いはちみつ亭』の1階の酒場だ。

ミシアは両足を少し開いてどっしりと床に立ち、拳を腰に当て、えっへんと胸を張る。

ミシアの右側ではタニアが片膝をつき、両腕をミシアの方へ伸ばし、指を大きく開いてひらひらと手を振る。

ミシアの左側では3～4才くらいの女の子が立ち、細い両腕をミシアの方へ伸ばし、小さな指を精一杯開いてタニアと同じくひらひらと手を振る。

ミシアは背が低いので10才くらいに見えるが、15歳だ。クラスタリアでは成人と見做される年齢である。

髪は短く、いたずらの好きそうな、女の子とも男の子ともとれる可愛らしい顔立ちだ。

胸に白い布を巻き、黄色の短いズボンを穿き、サンダルを履いている。

大多数の人にとっては下着姿にしか見えない格好だが、これがミシアの普段着だ。

タニアはミシアの妹で、3才年下の12才。

右側の髪を結んでサイドテールにしている。

服装は、ピンク色で長袖の給仕服と白いエプロン。

ミシアがポーズを見せている相手は、ミシアの仲間である冒険者のパーティー『冒険の翼（エスウィング）』の面々だ。

アーキル「お前が店長なのは知ってるが…」

ケニー「いつぞやに見た光景ですね…」

コノハ「でも知らない子がいるわ」

ルディア「きゃ～、可愛いです～！」

ミシア「ほら、前やったときはあまりウケなかったでしょ？だからもう1回やるって言ったじゃん！」

ミシアが今とっているポーズは、ミシアとエスウィングのメンバーが初めて会ったときに行ったものだ。

が、そのときには左側の女の子は居らず、ミシアの隣に居たのはタニアだけだった。

タニア「あ、その子は、スカリィちゃんです。お姉さまの輝きを演出する人はお姉さまの両側にいないとバランスが悪いと考え、今回、助っ人を頼みました」

ミシア「ほらスカリィ、挨拶して。あっちはエスウィングの人たち、ボクの仲間だよ！怖くないからね」

ポーズをとり終わったスカリィは、恥ずかしがってミシアの背後に隠れていた。そこから顔だけ出す。

スカリィ「スカシーでしゅ。4しゃいでしゅ」

小さな指を4本立てて挨拶した。

ルディア「きゃ～、可愛いです～！ 私はルディアです。よろしくお願いしますね、スカリィちゃん」

スカリィ「ルジアしゃん」

コノハ「私はコノハよ。よろしくね」

スカリィ「コーハしゃん」

まだ幼いので舌足らずだが、そこが可愛い。

ミシアはスカリィに声をかける。

ミシア「タニアを呼んでみて？」

スカリィ「ターニャおねーしゃん」

タニア「お姉さまは？」

スカリィ「ミーシャおねーしゃま」

ケニー「ミシアだけお姉さまなんですね…」

タニア「ちゃんと教育してますから！」

ミシア「スカリィは村長さんとこの子なんだ。あっちに居るのが、スカリィの姉のサティ。歳はボクの1こ下」

ミシアは腕で厨房の方を指し示した。