深痕のミシア ―2.タニア編「どちらの言う事を信じるの?」―
真田 了
序(語り:タニア)
甘いはちみつ亭には地下室がある。
主に食料品の貯蔵に使われており、ここの整理をするのもタニアの日課のひとつだ。
この地下室には2つの出入り口がある。ひとつは、1階の厨房に続いている階段。
階段を下りてきたタニアは、出入り口の脇にある魔力充填板に手を当て、魔力を注ぎ込んだ。それによって、地下室の明かりが点灯する。
手を離してしばらくすると明かりは消えてしまうが、タニアが作業をしている間くらいは充分保つ。
まず、地下室の一角にある箱の日付(運び込んだ日が記載してある)と中の状態を確認していく。
そして、早めに使った方が良いと思われる物を階段の近くに移動させる。
それから、空き箱や空き樽を地下室の外に運び出す。これには、もうひとつの出入り口を使う。厨房を経由しなくても荷物の運搬が出来るようにと、外に直接つながっている通路があるのだ。
タニア「うぅーん」
空き箱を外に運び終わって、タニアは軽く伸びをした。
太陽が眩しい。左手で、太陽の光が目に入ろうとするのを遮る。
タニア「今日も良い天気ね。洗濯物が早く乾きそう」
そのとき、ふと、左手首に違和感を感じた。何か硬い物に触れているかのような…。
タニア「?」
手首を見てみるが、特に触っているものは無いし、怪我などの異変も無い。
タニア「なにかしら…?」
手首をさすってみる。普通に触っている感触がする。
さするのをやめると、違和感は無くなっていた。
タニア「きっと気のせいね。さぁ、次はお掃除をして、それからお洗濯ね。今日も忙しくなりそうだわ」
タニアは張り切って甘いはちみつ亭に戻っていった。
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