第13話 二人の勝負とつかの間の楽しみ
次はジュラシック・パークをモチーフにしたアトラクションなわけだけど、このままだとまたかおちゃんと組まされそうだ。というわけで、
「ねえ、かおちゃん。ちょっと協力して欲しいんだけど」
「なに?私ができることなら……」
「次のアトラクションもさ、僕たちが隣になるように細工してくると思うんだ」
「あはは。確かに、今のまゆみんならして来そうだね」
かおちゃんが乾いた笑いをもらす。
「というわけで、僕がマユと隣になって、ちょっと話をしたい」
「やりたい事はわかるけど、どうすればいいの?」
不安そうに尋ねてくるかおちゃん。
「そこは悩みどころなんだけどね。別の列に座ってもらえるかな」
「なんだかわざとらしい気がするけど……やってみるね」
ライド型のアトラクションで五列あるから、かおちゃんから退いてくれれば、マユたち三人と隣になるチャンスはあるはず。その間に、話をしたい。せめて、強引に二人きりにさせようとするのは止めたいところだ。
そんな思惑を抱えながら、僕たちはジュラシック・パークのアトラクションに入る。これもまた、本格的で、恐竜の迫力があるらしいけど、今はちょっとそれを楽しみきれそうにないのが悔しい。
一列に並んでしばらく待っていると、いよいよ僕たちの番が来た。動きを見ると、タカやこーちゃんと並んで乗ろうとしているように見えるけど-
先手を打って、既に四人乗っている列にかおちゃんが座る。ほんとに恩に着る。
「じゃ、僕たちも乗ろう?」
「あ、ああ」
カナたちも、急にかおちゃんが別の列に座ったことに戸惑っているようだ。まあ、無理もないか。
結局、列の内、左から知らない人、僕、マユ、カナ、こーちゃん、という位置取りに成功した。一体何を必死になっているのだろうと、ふと思ってしまう。
そうこうしている内に、ゆっくりとコースターが動き始める。動きがゆっくりな内に、話しかけないと。
「ね、マユ。こういう強引なのは止めよう?」
「な、なんのことや?」
「さっきから、僕をかおちゃんと二人きりにさせようとしてるでしょ」
「……」
「気持ちはわかるけど、かおちゃんも戸惑ってるよ」
「かおちゃんの気持ちは考えとらんかったな……」
しゅんとした様子のマユ。
「とりあえず、今日は皆で楽しもう?」
反論されるだろうか、と思ったものの。
「そやな。ちょっと強引過ぎたんやな」
意外にもすんなり受け入れてくれた。とりあえず、これで一安心か。
「マユも気を遣ってばっかりで楽しくないでしょ。僕は一緒に楽しみたいんだけど」
「ユータがこんな鋭かったとはな」
「今回は、マユが強引だったからね」
「そやな。一緒に楽しもか」
声に元気が出てきたようだ。そして、コースターは急降下するところに。
「これくらいなら大丈夫やな」
「だから、絶叫系じゃないって言ったでしょ?」
そして、がこんと止まった後に急降下する。冬には少し冷たいけど、爽快だ。隣のマユはと言えば、
「うひゃー。気持ちええわー」
楽しそうな声を出すマユ。彼女の横顔をこっそり見ると楽しそうで、少しほっとする。
その後も、恐竜が闊歩するジャングルなどをコースターが通り抜けて、最後はざぶーんと水を被る。当然、アトラクションの性質上、レインコートが配られてはいたけど、少し濡れてしまった。
「ねえ、マユ。楽しかった?」
「……そうやな。でも、かおちゃんの事はほんとにええんか?」
「その事だけど。今晩、ちょっと話せないかな」
「わ、わかったわ」
告白をするか、あるいは、別の方法で誤解を解くかは決めていないけど、これでもう後戻りはできない。
(何を言うか、考えておかないと)
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