第10話 USJと再会した彼女の想い

「ねえ、ゆーちゃん。まゆみんの事、好き、なんだよね?」


 あまりにも唐突なかおちゃんの言葉。なんで、どうして、と色々な考えが脳裏を駆け巡る。


「え、えーと。何かの勘違いじゃない?」


 慌ててごまかそうとするが、


「ばればれだよ。目線逸らして、こめかみをぐりぐりするのも変わってないし」


 ちょっと楽しそうなかおちゃん。


「そうだね。認めるよ」


 マユにも以前言われた覚えがあるな。鋭い。


「まゆみんいい子だもんね。ゆーちゃんが好きになるのもわかるよ」

「そうだね。マユはほんといい奴だよ」


 思い込む余り余計なお節介をすることもあるし、おふざけで僕をからかってくる事も多いけど、かおちゃんに振られたときも、それ以外でも、ほんとに助けられた。そして、女性としての魅力もある。


「それで、かおちゃんは、それを知ってどうしたいの?」

「ゆーちゃんとまゆみんがくっつく手助けをしたいの。ほんとに」


 怖いくらい真剣な表情は、かおちゃんが本気である事を物語っていた。


「ありがと。でも、なかなか難しいと思うよ」

「でも、まゆみんと仲良さそうだったけど」

「ここだけの話だけど」

「う、うん」

「かおちゃんに振られたのを引きずってると思ってるんだよ。あいつ」


 そして、マユは、一度確信を持ったら、なかなか考えを曲げない困った奴だ。さらに言えば、再会した時に、かおちゃんと僕が仲良く話していたのも、あいつの判断を後押ししただろう。


「じゃあ、ゆーちゃんが、私の事は吹っ切ったって言えば……」

「もう言ったんだけどね。聞く耳持たず」

「そ、そうなんだ。どうすればいいんだろ……」


 かおちゃんが、両手を頭にあてて、本気で悩みだす。考え事をする時の彼女の癖で、そういうところは変わっていないんだなと思う。しかし、罪滅ぼしに僕とマユをくっつけたいという言葉に嘘はないみたいだけど、どうしてそこまでしてくれるんだろう。


「かおちゃんはどうしてそこまでしてくれるの?」

「私ね。ずっと後悔してたんだ。告白に答えられなかった事」

「別に後悔することなんて無いでしょ」


 傷ついた事は傷ついたけど、告白をされた側にだって断る権利はある。


「ううん。私はひどいことをしたんだよ。せめて、不安だった気持ちを打ち明ければ良かったのに」

「でも、もう過ぎた事だよ」

「うん。だから、ゆーちゃんには後悔して欲しくないの」


 彼女の決意は固いようだった。


「わかった。じゃあ、お願いするよ」

「どうすればいいかな?」

「マユの誤解を解きたいんだけど……それはまた後で」

「うん」


 そこまで話したところで、前を歩いていたはずの、カナ達三人の姿が見えなくなっている事に気がついた。


「あれ、ひょっとして、迷子?」

「落ち着いて。スマホで連絡してみようよ」

「ああ、うん。そうだね」


 慌てて、グループチャットに、はぐれた事を書き込むと、ちょうど、あっちも探そうとしていたところで、今はアトラクションの前で待っているとのこと。


「アトラクションの所に行けば落ち合えるみたい」

「良かった。私の話のせいで、ごめんね」

「いいから。そろそろ、謝ってばっかりなのはやめよう?」

「そうだね。ありがと」


 少し、かおちゃんも持ち直したみたいだ。さて、あいつらに追いつこう、と思っていると、またもや通知が。嫌な予感がする。


【かおちゃんと二人きりで何やっとったん?ユータ】

【何もしてないって】

【いい機会やから話せば良かったんやない?】

【近況とかは話したよ】


 そこまで言って、今の問題を解決する一つのアイデアを思いつく。ただ、これを実行するには、マユに嘘をつく必要があって、しかも、かおちゃんにも嘘をついてもらう必要がある。必然と、二の足を踏んでしまう。


【とにかく、すぐ追いつくから】

【なんか納得いかへんけど。待っとるな】


 やり取りを終えると、かおちゃんが、心配そうに僕の方を見つめていた。


「まゆみん、何て?」

「いや、かおちゃんと二人きりで何してたんだってさ」

「まゆみん、ほんとに信じてるんだね」


 さっきの話では半信半疑だったのだろう。無理もない。


「あいつ、一度思い込んだら、性質悪いからなあ」


 さて、ほんとにどうしたものかと思いながら、二人で先を急ぐ。

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