第2話 成人式への道
カナの家を出た僕たちは、歩いて約30分くらいの成人式会場へ向かう。本当は、成人式会場の近くまで電車で行けるんだけど、
「せっかくの日やし、歩きで行かへん?」
というカナの提案でそうなった。
「俺らも、もうハタチか。早いもんや……」
どこか感慨深そうに言うカナ。
「一緒に中学通ってたのが、こないだみたいだよね」
「そうやね。ユータを
「マユはまたそういう事言うんだから」
「やって、ユータは女子に免疫ないんやもん」
「まだ言うか」
「ユータが認めへんもん」
そんな事を言って、僕の方にしなだれかかって来るマユ。成人式のために着てきた
「ああ、もう。離れてよ」
「ほら、照れとるやろ」
もたれかかりながら、からかってくるマユがどうにもこうにもうっとうしい。どうしようかと考えていたところ、
「ユータは、もうちょっと女子慣れした方がええな」
脇からツッコミを入れるのは、こーちゃん。こういう時に横から、鋭い一言を言うことが多い。
「こーちゃんまで。理由、知ってるでしょ?」
僕が女子にあんまり免疫が無いのは、実は中学時代のとある出来事に端を発する。
「女子なんて、なんでもネタにするんやから、気にしても損やって」
「それはわかるんだけどね」
女子に免疫がというよりスキンシップに免疫がないのは、実は単純な理由だ。中学1年の頃、クラスメートの女子にスキンシップ大好きな子が居て、その子にうまく反応できなかったのを、周りの女子グループがさんざん囃し立てた事に由来する。
結局、冗談半分のからかいだったので、深刻なトラウマになることはなかったけど、それ以来、女子の身体と触れ合うと、どうにも恥ずかしくなってしまう。
「そういえば、成人式終わったらどうする?二次会とか」
皆に聞いてみる。今は朝早くで、成人式は午後までで終わることになっている。その後、二次会があるらしいけど、正直あんまり乗り気じゃない。
「二次会言うても、別に仲ようなかった連中と居ても微妙やしなあ」
マユも同じことを思っていたらしい。
「だよね。小中と同じだった奴とか来るのかな」
「俺らの校区狭かったし、鉢合わせするかもな」
横で話を聞いていたこーちゃんが、正論を言う。
「二次会はどうでもええんやけど、代わりにUSJとかどうや?」
カナが提案する。こういう時に何か提案するのはカナなことが多い。
「それ、いいね!USJ行ったことなかったし」
ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)は、大阪にある有名テーマパークで、大阪近辺に住む人間にとっては、関東で言うディズニーランドのような存在でもある。
「賛成!私も行った事なかったんよね」
「俺もやな」
僕もマユもこーちゃんも賛成して、あっという間に成人式の後はUSJに行くことが決定した。
「USJはどうやって行く?」
「俺が車出すわ。電車やとちょいしんどいやろ」
「だね。助かる」
この四人の中で免許と車を持っているのはまだカナだけだ。
「あー。もう、すぐにUSJ行きたくなってきたわー。成人式なんてさぼろーや」
「何言うとんねん、マユのアホ!」
寝言を言いだしたマユの頭にチョップを食らわす。
「いたた。でも、調子戻ってきたやん、ユータ」
「そういえば、無意識にやっとった」
「ほら、関西弁になっとるし。やっぱ、ユータには関西人の血が流れとるんやなー」
「変わり身早いわ!」
再びチョップを食らわそうとすると、マユに白羽取りされてしまう。
「くっ!」
「同じツッコミは二度とくらわんよ!?」
不敵な表情で、アホなセリフを吐くマユ。そんな様子を見ていたカナが、
「ユータ、やっぱり大学出たら大阪もどってこいや」
と一言。そんな言葉に僕は、
「そうやねえ。いいかもしれん」
そんな返事を返していた。
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