十四夜  さざ波が運ぶ夢

ルルとラッシェオは二人は立っていた。

海岸だ。

白波が立つ静かな場所だ。潮風の匂いが気持ちいい。

「あの夜は母さんたちから聞いた話は衝撃的だったな」

「うん…」

「怒るとすぐにお仕置きしてくる怖い母さんだったけど、それ以上に笑顔も優しく美しく母さんに、そして、父さんにも、おじさんやおばさんにもあんな悲しい過去があったなんて…」

二人は手を繋ぎ、海の彼方を見ていた。

すると涙が自然と出た。

夏夜の海岸で、夫婦は何を見たのか…

…………

塔に月明かりが当たる。

「ラッシェオ、起きているの?」

「ああ、寝れなくて」

向かい合う二人。

「この町は人が捨てたのかな…?綺麗な場所なのに…海の音がする場所で素敵なのに」

「贅沢な人たちがいるのよね。落ちこぼれはつまはじきにする人権意識の薄い名門エリート校よりも心を癒やしてくれるいい所なのに…なんで捨てたんだろう?」

「わかんないよ。ただ、よほどの理由があったのかな…」

二人は瞳を見つめあうと、

「こら、おっしゃべりせずに寝なさい」

「そうよ。明日も早いんだから」

母たちの注意が飛ぶ。

「いいじゃないか、二人も不安なんだ。町に帰れるかわからないしな」

「夏夜の夢ってか」

父たちは大目に見てやれと言わんばかりの注意をする。

「それもそうね。こうしているとラッシェオが小さかった頃思い出すわ。夜怖くなると私のベッドに入り込んで来て、「ママっ」て私のおっぱいに飛びついてきたのよ」

「そうだったな」

両親たちに幼い頃の事を暴露されて、ラッシェオは耳まで赤くなり「言うなよ」とユリに猫パンチみたくする。

「あら、小学校上がるまで私のお乳吸っていたくせに」

ラッシュオはさらに赤面になる。

「ルルなんて、もっと凄かったわ。私たちのベッドに最初から入るけど、翌朝には大洪水を起こしたわ」

ティアに幼少時はおねしょっ子だったことを言われて、ルルも真っ赤になる。

「もぉ、お母さんのおバカ、お嫁に行けなくなっちゃう」

プンプン怒る彼女に、ティアは笑う。

しかし、キャンプに来てから二人は本当に笑うようになった。学校の事や友達のことを聞いても話したがらないし、自分たちは仕事で家を空けることが多いので成績や行事などの学校生活のことは言いたくなかった。

だからこそ、今は家族だけの時間を楽しみたいと思った。

「ねぇ、父さん、母さん、あることを聞きたかったんだけどいいかな…」

ラッシュオが改まり、両親に言った。

「何?」

「ずっと、聞きたいことがあったんだ。僕が二人の子供なのかって事…他の子たちみたいに、今まで親戚のおじさんやおばさんとか、おじいちゃんやおばあちゃんがいないことや亡くなっているなら、お墓とかあるはずだけどお墓参りみたいなのにも行かないから…僕のルーツを知りたかったんだ」

突然の息子の問いに二人は動揺して、うろたえた。

「お父さん、お母さん、私も同じなの…ラッシュオと話したことがあるんだけど、私たちが…養子とかじゃないのかって…」

フーガとティアもその問いに言葉を詰まらせた。

両親たちは四人で顔を見合わせて、口を開いた。

「少し、二人が大きくなってから話そうと思っていたが、仕方がない。今話すか…」

「ええ」

「夜も更けてきたし、月夜の昔語りね」

「話すか…遠い昔のことを」

“ザザー、ザザー”







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