十二夜 大冒険の果に見つけたもの

空気と風を切り裂く音、身体に触れるその冷気が空を飛んでいると彼女は実感した。

「凄い、凄い、ピースおじさん、私は今疾風かぜになったわ!」

「風じゃないよ。ルルちゃん」

上空をアーマーを着用して飛ぶルルは、ラッシェオの父と飛んでいた。

初めての体験にルルは大はしゃぎだ。

だが、ピースは息子の大事な彼女であり、将来の義理の娘の心身を守らぬばならないので気が気じゃないが、少しだけでも経験してもらうために安全に教えた。

「ルルちゃんは覚えがいいから、教習所の実技試験は一発合格だな」

「本当、嬉しい」

「あはは」

浮かれるおてんば娘に、川をボートで下るティアから喝が、

「こら、ルル。調子に乗らずピースとお父さんとユリの言うこときいてするのよ」

「はーい」

「ティア、大丈夫だ。それより、うちのラッシェオはどうだ。バカ息子が迷惑をかけていないか?」

「大丈夫よ。漕ぎ手で安全にしてくれているわ」

ボートを流れに合わせて、川岸にぶつからないように安全にオールを漕ぐラッシェオ。

「ティアおばさん、スピード大丈夫?酔ってない?」

「大丈夫よ。ごめんね。ラッシェオくんに、年端もいかない男の子に危ないことさせて、私…」

「男が、こんな時は働かないと、年なんて関係ないよ。ましてや、ルルと同じく別嬪さんに危ないことさせたくないよ」

「ありがとう。じゃあ、小さな騎士に甘えようかしら」

お調子者の彼は、「はい、それでは女王様を目的地まで護衛致します」とオールをゆっくりと漕いだ。

(しかし、冗談なしでティアおばさんもルルの母さんだけあって、色白の肌も綺麗だし、長い髪も艶があるし…)

ルルと同じ深緑の瞳、メガネもお洒落だ。

「それにしても、暑いわね」

紫のビキニの上に、水色のラッシュガードを羽織る。女性陣の中では一番年長のお姉様だが、プロポーションも抜群だ。

「きゃあ」

流れでボートが揺れる。ティアのたわわが揺れた。

ラッシェオはドキッとした。

(母さんより二つ年上とは思えないよな)

十一歳、この年頃なら年上に少しだけ憧れを抱くこともある。しかし、

(でも、僕はルルが一番好きだ。世界中の誰よりも彼女といつか最高の世界に行きたい)

甘酸っぱい青春を作るなら、やはり、大好きなルルと物語にしたい。

彼は誓った。

川と空から調査をしているチームを見守るフーガとユリは、フーガは運転、ユリはパソコンで夫と息子、友人、お嫁さん(未来の)が贈ってくれる写真と動画を解析してくれている。

「ルルちゃんもティアも撮影技術が高いからわかりやすいは、ウチのピースとラッシェオより集中力があるわ」

「二人とも少しおっとりしすぎているけどな」

六人がお互いに苦手なことを補い、さらに得意なことを周りに教え合いピンチをチャンスに変えていく。

異世界もまんざら悪いものではなかった。

何より、小さな夫婦の成長にはちょうどよかった。

「あれ、おっちゃん、何か見えて来たよ」

「あれは?」

ルルは前方に高い建物に気付いた。ピースが拡大スコープで確認すると確かに塔のような建物が二棟が建っていた。

川を行くラッシェオとティアも、それに気付いた。

「ルル、父さん、こっちも家が何軒か立っている住宅街があるよ」

ちなみに、ラッシェオたちが連絡を取り合っているのは、マイクロテレパシーと言うイヤホン型の通信機だ。

だが、音声を出すものではなく、相手の脳にテレパシーを送るのが原理となっている。そのため、風や雨に邪魔されたりしてノイズなども起こらないのだ。

車のフーガとユリも目視した。

ここが、彼らの目指した目的地なのか…?

六人は恐る恐るその町に近づいた。

ここには、何があるのか…?

いや、この異世界は何なのか…?

謎を解く鍵はそこにあると確信した。










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