十一夜  常夏の楽園

「ルル、行くよ」

「いつでもいいわよ」

「それ…」

ラッシェオとルルは、小川で水遊びを楽しむ。

ピースとユリは、

「ほら、森で見つけた果実だ」

「真っ赤に実っているわ」

赤く熟したりんごを妻に渡し、自分もかじる。森は面積は小さいが木の実がたくさんなっていた。

フーガとティアは花畑で風に吹かれて、花の中で童心に帰り戯れる。

それは、花園で夏の訪れを喜ぶ妖精や天使たちのようだ。

現実逃避のようだが、闇雲に悩んだり騒ぐよりは楽しんだ方が気が楽だと考えて、ゆっくりと場所や状況を整理していた。

メビウスから町へ戻る途中で、全く知らない場所にやってきた。おそらく、モルディーとは違う世界だが自分たちを狙う天敵は今の所いない。

救難信号の旗を高い木に翻させて、今の間楽しんだ。

メビウスやツバル草原よりも美しい大自然がある。食べられる果物が実る木々、魚も泳ぐ美しい小川もあるので一月は生活が出来る…いや、畑を耕せば野菜なども作れると考えた。

「だけど、農作業などしたことがないし、道具や肥料もないしな」

「まず、万が一に飛行機など通過した時のために、SOSを掲げておきましょう。包帯以外の白い布を使って見ましょう」

「よし、さっそく探そう」

しかし、白いタオルや手ぬぐいは三枚ほどしかなかった…

「これじゃ、わからないな」

「繋げても面積が小さいな…よし、シャツを使おう。幸い風も強くなってきたし、今がチャンスだ」

フーガは、白のアンダーシャツを一緒にくくりつけた。ピースも白のタンクトップをラッシェオも白のトランクスを旗にした。

だが、それでも足りない…どうしたら、いいのか…頭を悩ませていると、ルル、ユリ、ティアが「恥ずかしいけど、これも助かるため」と度肝を抜くことをした。

数分後、高い木に旗を立てた。

そこには白タオルや白手ぬぐいと一緒にメンズのシャツやトランクスを、女性たちの白い下着や水着がくくりつけられた白旗が翻っていた。

(私のお気に入りのパンツが)

(限定の白いブラ、高価だったのに…フーガ、帰ったらお小遣いカットよ)

(ラッシェオ以外に私の下着と水着が…見られるなんて…恥ずかしいよ。お嫁に行けない)

エスパーでなくても、妻や母、彼女、娘の羞恥心が読み取れていた

(レディーたち、ごめん)

三人は心の中で謝った。

しかし、人間とは不思議なもので慣れれば以外と羞恥心は薄れてゆくようだ。そお、冒頭の六人のイチャつきは時間が経ちなったのだ。

しかし、頭上を飛ぶのはカラスや鷲、スズメなどの鳥たちばかりで、飛行機など一機も飛行しなかった。

どうなっているのか、やはり、ここは飛行機や宇宙船すらない原始時代のような世界なのか…それとも、何か危険がある場所で地上も空も立ち入ることが禁止された場所なのか、はたまたは神仏を祀る聖域(サンクチュアリー)なのか、もし、そうならいつまでいても人なんて来ない、これ自体が無意味になると不安がよぎる。

「一度、どこかに町がないか調べてみようか」

「どうやって行くの?地図もないし、野生動物がいたら、モンスターや人がいても未開の地にすむ野蛮な原住民とかだったら…?」

ルルが不安を言うと、フーガは、

「ルルの言うとおりだ。一旦、アーマーで空に上昇して辺りを調べてみよう。もしかしたら、朝よりも何かいいものが見つかるかもしれないしな」

「おじさん、次、僕も飛んでみたい」「私も」

しかし、両親たちが、

「こら、遊園地のアトラクションとは違うんだぞ」

「あんたたち、免許がないでしょ。子供はだめ。落ちて怪我しても、お医者さんもいないし、お薬もないのよ」

ピースやフーガの使用しているアーマーは、原付きバイクと同じようなものなので扱う時は免許が必要なのだ。ちなみに取得出来る年齢は十六歳からだ。

“チェ”となる二人。

フーガは十分間だけ上昇して、もう一度調べたが、結果は一緒だった。とりあえず、今の場所を写真に取り、現在地のジオラマを作った。

「この枝が、今我々がいる森。大きさは町中の駐車場を兼ね備えたコンビニぐらいだ。そして、横を流れる川をこのロープだとしよう」

森、そして、川、さらに向こうまで広がる大草原。

「それか、ここを拠点に一度川を降って見ないか?」

ピースが、川を下り、東に向かって進み、新たな発見をしようと言うのだ。

それも、車で進む陸、アーマーで空を飛び、川を船で下ると言う三方作戦をしてみようというものだ。

それならば、見落としがないから確実だと考えたからだ。

ただ、何かの衝撃があれば、バラバラになる恐れがあるので、細心の注意と周りの連絡を取る手段は重要だ。

そして、単独にならないように親子、夫婦だがくじ引きで二人一組のチームを作ることにした。

「赤、青、緑のテープを巻いた。さあ、みんな一緒に引いてくれ」

ピースが小さな枝を六本を拾い、同じ色を引いたらチームになるルールを決めて、一、二、三で引いた。

結果は…

「よし、それじゃ、しばしの別れだ。楽園よ」

六人は別れを森に告げて進んだ。各ペアとともに…





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