五夜  太古の涙

透明の世界を進む、たくさんの魚の群れが泳ぎ、変わった形の岩があり、水草たちが歓迎してくれているかのように踊る。

六人はその魅力に取り憑かれてずっと奥まで進んだ。すると、何かが沈んでいるのに気付いた。

「何だろう?あれは?」

「何かの建造物だわ」

「古代遺跡か?それとも、難破船か?」

そこには、巨石がたくさん積まれていた。

かつて、何かがあったことを示しているが、それは町や神殿みたいな所ではなかった。

何かお城か砦のように見えた。もしかして、大昔に小さな国があったのか…

“ザッパン”

「ぷは、凄かったな」

「今のは何かしら…?」

全員が水底から顔を出して確認する。しかし、この場所は今も昔もこの草原と川や池しかない場所と聞いている。人が住んでいた記録などないハズだが、いったい、あれは…なんだったのか?

「わからないけど、でっかい石の建物みたいね」

「もし、見つかっていない遺跡なら大発見だよ」

「私たち、発見者になれるの?有名人に仲間入り?」

「ルルなら、美少女発見者として新聞の見出しを飾るよ」

「やだ、サイン会とか記者会見とかされるのかしら」

ラッシェオとルルが親たちの目も気にせずいつも通りイチャイチャする。

“まったく、子供らは気楽だよな”

と内心呆れていたが、しかし、それもまたほっこりしていた。

キャンプに戻り、青テントではルル、ユリ、ティアが、赤テントではラッシェオとピース、フーガたちが着替えている。

“コツ”ラッシェオが足下に何か違和感を感じた。石か何か固いものを踏んだ気がしたのだ。

「うん、父さん、おじさん、僕のいる下に何かある」

「何だ?石ころか?」

「亀でも寝ているのか…?」

テントを一旦しまい、ラッシェオのいた所を調べた。するとそこには何か黒い箱のようなものが埋っていた。

「何だろう?これ」

「赤い紐で結ばれているのはなぜだろう?」

三人は、妻たちにもそれを見せた。

「ラッシェオが見つけたの?」

「うん、中には何が入っているのかわからないけど」

「もしかして、川底で見つけた遺跡に関係しているのかしら、開けてみましょう」

「ああ、何か古代の記録かもしれないな」

「よし、開けてみよう」

六人は、子供がプレゼントを開けるかのようにワクワクしながら、紐を外して蓋を持ち上げた。

箱の中身は…全員が声を一斉に上げた

「空っぽ!!!」

何もなかった。









  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る