ニ夜 楽しい時間

「さあ、二人とも準備はいい?」

ユリの問いかけにラッシェオとルルは元気よく。

「はーい」

ロープを引っ張る二人、骨組みにカバーがかけられてテントが出来る。かまどを作ったピースは火を起こし、フーガは川でパラソルを立てると机と椅子を並べた。そして、川の水で冷やしたジュースやお茶、お酒を引き揚げて机に並べた。

かまどの網には野菜や魚、肉が焼かれている。さっそく、六人は集まり飲み物を片手に最年長フーガの音頭で宴を開始した。

「よし、それでは夏の始まりを祝して、乾杯」

「乾杯!!!」

夏空の下、照りつける太陽と無限に広がる青空にたまに優しく吹き付ける涼風。

やがて、太陽が天の頂上に来る時間。

「ラッシェオ、いっくわよ」

「よっしゃ、来い」

水着姿のラッシェオとルル、二人はボール遊びで楽しみ、ピースとフーガも川に豪快にダイブする。

ユリとティアはパラソルの下で子供と夫の様子に微笑む。

ちなみに、ユリは赤色の瞳と小麦色の肌と長い藍色の髪をポニーテールにしている。ティアはルルと同じで金色の長い髪をストレートにしたグリーンの瞳をしている。

フーガは肩までシアングリーンの長い髪を整えている。ちなみに青色の瞳は愛娘に受け継がれている。この世界では、両親や兄弟姉妹でも瞳の色は全員がバラバラで、血液型や遺伝子の繋がりが親族の証明になるのだ。

ピースはヘアバンドで額を覆い、黒い前髪を整え、顎髭を少し伸ばした世間一般で言うちょい悪オヤジみたいな姿だ。瞳の色は野葡萄のような色だ。

あと、六人の着ている水着だが、ラッシェオは白い生地に黒い波線とポセイドンが持つ三叉の鉾が描かれているトランクス型の海パン、日焼け防止のサンバイザーを額にし、長い髪を後で束ねたルルは発育途上だがカラフルなレインボーのビキニを着ている。

ピースは赤い炎のマークが刻まれたトランクス型の海パン、フーガは濃紺の生地に緑色のヤシの葉のイラストが刻まれたバーミューダパンツを穿いている。母親たちもユリはリーフグリーンのビキニ、ティアはラベンダー色のハイレグ水着を着ている。

彼らの住むこの世界の名は「モルディ」は人類が誕生して百年経たない間に高度な科学文明を築くことが出来、現代に至るまでに繁栄している。

だから、キャンプで大自然の中で過し楽しむのは最高の贅沢だった。何事にも縛られず楽しめるからだ。

ラッシェオとルルは何よりも両親たちが側にいてくれるのだけで、一緒に楽しめるだけで最高に幸せだった。なぜなら、普段は両親たちは仕事の関係で出張や残業などが多く、帰宅は深夜になることもあり、時には一週間家を開けることも多々ある。

だから、こないだの水泳の時みたいに先生に叱られたり、同級生に馬鹿にされて悔しく辛い思いをした日も二人だけで抱え込んで枕を何度も濡らした。

だけど、今は愛する両親が居てくれる。なんでも話せる時間と場所があると言う最高の楽園だ。

「行こうよ。ルル!!!」

彼が左手を差し出すと、

「ラッシェオ!!!」

ルルは笑顔で右手を差し出す。

そして、ピースとユリが「ラッシェオ」、フーガとティアが「ルル」と自分たちのこの世界の何ものにも代えられない宝を抱きしめた。











  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る