第5話

 12月31日、いよいよ大晦日である。父さんと母さんは何故かどこかへ出かけており、「俺たちがいない方がいいんじゃないかな」とかなんか言ってた。


 いや、別にそんなことはないんですけど……。


 まぁいないものは仕方ない。なんかまだ仕事残ってるとか言ってたし、それに集中するためって言うことにしとこう。


 さて、現在の俺たちは何をしているのかと言うと、当然、スティックヒューマン・オンラインである。


 みぃ『お久しぶりです!』


 シルバ『おう、久しぶり』


 久々に運営の使徒スレイプニール全員集合である。


 今日はカウントダウンイベント。特に新しいダンジョンとか、そういうのはないが、ただ単にプレイヤー達で集まってワイワイしましょうということだ。


 1月1日午前零時から前後1時間の間は全フィールドでモンスターが出ない仕組みになっており、好きな場所で新年をお迎えくださいというこれまた粋な計らいである。


 時刻は午後11時30分。一番最初に着いていたシルバさんに挨拶をすると続々と人が登場する。


 スピカ『おひさー』


 アラン『久しぶり』


 ゴラン『久しぶりだな』


 カリン『お久しぶりです』


 ハナミ『みんな、久しぶりだな』


 運営の使徒スレイプニールの全員集合にチャット欄が物凄い速さで下から上に流れていく。チャット欄で『一体何が始まるんです?』『第三次対戦だ!』というのを見て笑った。


 今日集合をかけたのはシルバさん。何でもとある場所でみんなと新年をお迎えしたかったということである。


 シルバ『んじゃーみんな揃ったから移動するぜ』


 カリン『はやくなさい一刀。チャット打つ暇があるならさっさと案内しなさい』


 シルバ『おめーはいつもいちいちうるせぇな!剣聖1』


 ん?誤字?珍しいな、戦闘中でもないのに誤字るのは。


 てかこの2人相変わらず細胞レベルから仲悪いな。昨日また4人でサンダリオン迷宮に行った時にはシルバさんについて愚痴ってたし。


 なんだろう、前世からの因縁でもあるのかな?


 シルバ『ごめん、ちょっとまて』


 と、シルバさんがチャット打ったきり反応がない。まるで屍のようーーーーごほんごほん。


 アラン『まるで屍のようだね』


 スピカ『同意』


 カリン『そのまま滅べばいいのに……』


 メリィ『いえいえ……そんなことしたら彼女さん可哀想じゃないですか』


『『『『え!?』』』』


 アランさん、カリンさん、スピカさん、ゴランさんの『え!?』が同時に発生した。彼女さんね……シルバさんの彼女さんか……。


 長月祭で在原の勇姿(メイド姿)を見に来ていたシルバさん……の腕に引っ付くようにしていたあのめちゃくちゃ守りたくなる欲がどんどん出てくるあの人か。


 おや?なんか今シルバさんがあの彼女さんに構っていると想像したらなんか途端にニヤニヤしてきたぞ。


 スピカ『にやにや』


 みぃ『にやにや』


 アラン『にやにや』


 シルバ『おまたーーーーっておい、なんだこのチャット欄から溢れ出る温かい空気は。お前ら何想像した!?』


 さて、なんでしょうね。とりあえず末永くお付き合いしてください。


 あの後、何故か誤字りまくりのシルバさんをニヤニヤしながら眺めつつ、シルバさんの案内に従って後ろをついて行くことに。


「なんかモンスターが出ないフィールドって新鮮だね」


「ほんとにそうだね」


 隣から、ピッタリと肩を寄せあっているメリィちゃんから声が聞こえる。いつもだったらモンスターを惨殺したりとか惨殺したりとか、惨殺したりとかしてるもんね。こうやってゆっくりとフィールドを見ながらここを歩くなんてそれこそ、このゲームを始めた時以来ーーーーん?


 ………そういえば、この道ってなんとなく見覚えあるな。いや、毎日通ってるからとかじゃなくて本当に……めちゃくちゃ久しぶりにこの道を歩く感じ………あ。


「……そっか」


 この道って。このゲームを始めた時に始めて通った道なのか。


 始まりの崖。俺たちの感動の始まりで、大冒険の始まり。第五弾アップデートが実装されるまで、このゲームのオープニングを飾っていた俺達の始まりの場所だ。


 シルバさん……なんかすげぇ粋な計らいする!!


 みぃ『なんかすげぇシルバさんのこと師匠って呼びたくなった』


 スピカ『上に激しく同意』


 メリィ『はげどう』


 アラン『同じく』


 ゴラン『以下略』


 カリン『悔しいけどry』


 ハナミ『なんか感動した』


 シルバ『やめろ!!なんか恥ずかしいわ!』


 崖に着いてからみんな一斉にチャット打ち出した。いやいや……これは感動するって。


 そして時間が来るまで、話し合い、残り10秒のカウントダウンが画面内に現れた。


 ゼロになった瞬間、『HAPPY NEW YEAR!!』という文字と共に、画面の至る所で花火が打ち上がる。チャット欄もあけおめー!!でいっぱいである。


 1月1日。新しい年の始まり。


 シルバ『あけおめー!』


 カリン『あけましておめでとうございます』


 スピカ『あけおめことよろ』


 アラン『今年もよろしく』


 ゴラン『今年は妻と一緒にする予定だから、妻の方もよろしくな』


 ハナミ『あけましておめでとう、今年もよろしく、皆』


 みぃ『今年もよろしくお願いします』


 メリィ『おねがいします!』


 それと父さんと母さんのL○NEにもあけおめことよろと送っておく。


「メリィちゃん」


「みぃくん」


 2人同時に見つめ合う。タイミングはほぼ同時。


「あけましておめでとう」


「そして今年もよろしくお願いします、みぃくん」


 正座状態になって、床に手をついてお辞儀をする。


「……これからも、末永くよろしく」


「………うん」


 そして、二人の影は重なり合う。メリィちゃんの柔らかな口に、優しく俺の口を重ね合った。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

チャットの掛け合い書いててメチャ楽しい……。


こえよめは書籍化を目指して頑張っております。もし宜しければ、星評価、フォローなどなどよろしくお願いします。


死霊術師ネクロマンサーってそうじゃねぇだろ!の方もよろしくお願いします。


新作『魔王です。ちょっくら勇者と一緒に魔王倒してきます。』の方もよろしくお願いします。

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