第6話

 玄関に向かい、靴を履き替えて外へ。さてと、メリィちゃんは一体どこにーーーーーあ、うん。はい。多分あそこですわ。


 目に映ったのは、何かに群がるように形成されている人波。あれだな。多分メリィちゃんがめちゃくちゃ可愛いから目立ってる&幽玄さんのコラボが珍しいからだろうな、うん。


「すいません……はい、ちょっと通して……」


 背中を屈めてから人波をするすると抜けていき、あっさりと最前線へ。いやー。ほんと、幽玄さんにメリィちゃんに変な虫がつかないようにとお願いしたかいがあったわ。まさか本人が出てくるとは思わなかったけど。


 人波から抜け、周りを見ているようでチラチラとメリィちゃん達を見ているその場を動かない訪問客を邪魔だなと思いつつ、誰も近づこうとしないメリィちゃん達の元へ。


 そして、幽玄さんと何やらお話をしていたメリィちゃんは、俺の存在に気づくと、綺麗な笑みを浮かべてこちらへ駆け寄ってきてーーーーあれ?あの……メリィさん?その勢い、俺にジャンピング抱きつきをする訳じゃないですよね?だってここ人の多い往来………。


 ………いやいやいや、何を渋っている俺!メリィちゃんが抱きつく?役得じゃないか!メリィちゃんが抱きつきたいと思っている=俺はそれを受け止めるのみ。


 走っていた足にブレーキをかけ、足を肩幅よりも少し広くスタンスを広げて、両手を広げる。


 さ、カモォォォォォォォォォォォォォンンンン!!


「みぃくん!」


 結果。俺はメリィちゃんの勢いを受け止めることが出来ず、そのまま地面へ倒れ込むのだった。


 ……痛てぇ、まじ背中いてぇ。ふぅ、今日のメリィちゃんはいつもよりもパワフルだな(遠い目)


「…………大丈夫かガキンチョ。お嬢の突進を真っ直ぐ食らったが」


「……こ、こんなの朝飯前だ……」


 胸に顔を擦りつけてくるメリィちゃんを抱えながら上体を起こす。全く。愛される彼氏もつらいぜ。


 周りの人だかり(ほぼワンチャン狙ってたクソ男共)が「なんだ彼氏持ちかよ」とでも言いたげに俺を睨んでからーーーあ、幽玄さんの睨みにビビった。


「それじゃ、これで俺はお役御免か?」


「はい。幽玄さん、護衛ありがとうございました」


「ありがとうございました」


 立ち上がってから二人でお礼を言う。


「気にすんな。俺とガキンチョ、そしてお嬢の仲だ。こういったことなら相談すればすぐ協力するからな。特にお前らカップル推しの奴が」


「あ、あははは………」


 俺は苦笑いを浮かべるしか無かった。


「幽玄さんはこの後どうするつもりですか?」


 メリィちゃんが幽玄さんに聞く。


「あぁ、俺はこの後適当に見てから帰る。それに、一応部下を五人くらい影から見守るために連れてきたしな」


 俺らどんだけ護衛されてるんです?


「え、まだいるんですか?」


「おう。だからお前らも楽しめよ。それじゃあな」


 と言って、一目散にチョコバナナを売っているクラスの元へ行く幽玄さん。最初に買うのそれですか……?


「行こ!みぃくん!」


 俺の手を嬉しそうにギュッと握るメリィちゃん。俺はその指を絡めてからしっかりとメリィちゃんを離さないようにする。


「うん。行こっか」


 こうして、俺たちの文化祭デートが始まった。


 今更だが俺が通っている高校の名前は長月高校といい、ごくごく普通の公立高校である。でも公立高校の割には校則もそこそこ緩く、またイベント事は盛大にやるということでそこそこ有名であり、毎年の受験の倍率は4倍くらいである。


 そして、この文化祭ーーー長月祭は色々な出し物がある。売店やらお化け屋敷やら展示室やらそりゃあもう色々である。


 そんな俺たちがまず最初に向かったのが、まずこの学校にあったのかこの部活と、思ったゲーム部である。


 内容は二人一組で協力し、ゲーム開発者であるゲーム部とスコアを競い合う教室の壁全体を使用したシューティングゲームだ。


 勝てたらなんと豪華景品が貰えるらしく、それがちょっと気になる。


 オリジナルゲームらしく、普通にどんなものか気になるというゲーマー魂が刺激される形でこのゲーム部の所へ来たが………。


「………えぇ?」


 メリィちゃんが困惑の声を上げる。内心俺もそう思った。


 なぜならその部室の並んでいる客は全員ミリタリー風な格好していたからだ。


 全員なんか迷彩柄の服来てるし、リュックサックも迷彩柄……一体これなんの集まりですかーー!?


 困惑はするが、まぁゲームはやりたいのでとりあえず並ぶと同時に、前の人に事情を聞いてみた。


「あの、すみませんーーーー」


 事情を聞いてみた所、なんとこのゲーム部でとあるシューティングゲームの日本二位さんがいるらしく、その人と戦うためにわざわざ集まったトップランカーの方たちらしい。


 なにやら2つ名が円を描くように舞、敵を殺すと言うことで『夢幻の円舞』とかいうご大層な名前がつけられているらしい。


 全くもって知らない人である。ジャンルが違うからね。スティックヒューマン・オンラインなら俺たちかなり有名人なんだけど。S○Aの舞台にも立ったし。


 ちなみに、俺とメリィちゃんもかなり待ってその夢幻の円舞さんに挑戦してみたが、二対一だと言うのに俺たちのコンビネーションが通じず、呆気なく撃沈。スコア差に5万もの差をつけられて負けてしまった。


 いや………だって飛び出してくるのがゾンビぬいぐるみってどういうことよ……ファンシーすぎて集中出来んかったわ。


 ちなみに、豪華景品はそのゲーム部の顧問が黙って文化祭で出す出し物の為の予算で買ったチョウチンアンコウの剥製だった。


 …………要らねぇ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

夢幻の円舞。伏字にするか迷ったけどまぁ多分大丈夫かな?まぁ2つ名だし。名前じゃないから多分セーフだよね。うん。


分かる人には分かります。

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