第5話

「………んだよ。そんな見るなボケ」


「新しい。暴言系メイドか」


 前日、メリィちゃんと母さんにこれでもかと言うくらい化粧をされ、見事何故か美少女にメタモルフォーゼしてしまったみぃこと俺、早川充。


 一昔前のクラシックメイドドレスに身を包み、目の前でたくさんの男子(メイド)と少しの女子に見られまくっている。


「………お前、昨日何があったんだよ」


「聞くな」


「………何があったか知らんがお疲れ……」


 在原がポンッ、と俺の肩を叩く。きっと今の俺の瞳からはハイライトが消えていることだろう。


「………な、なぁ早川。1回、1回だけでいいから俺を罵倒してーーーー」


「死ね」


「ありがとうございまァァァス!!」


 鼻血を出してぶっ倒れていくクラスメート。こいつ、1回足蹴にでもしてやろうか……?


「いいっ……その蔑む目もすごくいい……っ!」


 クラスメートの視線がそいつに全員冷ややかな目を送った。


 まさかクラスメートの男子一人にそんな趣味があったとはな。気持ち悪いから今後二度と近づかないようにしよう。


 ていうかなんでよりによって1番メイド服似合うの俺なんだよ。いるだろ!勝手な偏見だけどクラスに1人は女装が似合う男子!


 ………え、まさかその一人か俺なの?


 嫌だなぁ(遠い目)。


 そして月日は流れて文化祭当日。我が校では三日間に渡って文化祭が行われ、その規模も中々でかいものとなっている。


 え?準備背景とかないの?って?あるわけないでしょ。ただ単に教室の内装ちょっと変えて、なんのメニューを出すのか決めただけだよ。


 そしてその間の俺だが、メリィちゃんの力添えもあって、まだ少し違和感はあるが、女声を出す練習……あれだな、所謂両声類になるために特訓していた。多分これ終わったら二度とやりません。


 接客の練習中に披露して、勢いで告白してきた男子を二人くらい蹴っ飛ばしてしまった。俺は悪くない。


 ちなみにだが、メイド服の下には体操服を着ている。なんだかんだ動きやすし、あれだな、男のパンチラとか誰得?ってかんじだよな。思いっきりトランクス履いてきたし。


 とまぁ色々あったりしたが、無事、俺たちの文化祭は幕を開けるのであった。


「………あ、すいません幽玄さん。ちょっと力貸してほしいことが………」






「皆、ここまでよくやってくれた」


 文化祭実行委員である男子がクラス全員の顔を見渡す。


「ここまで紆余曲折。あまりにも可愛いメイド長にーーー」


「おい」


「ーーーー無惨にも(物理的に)ボロボロにされた可哀想な夢見る男子が二人ほどやられたが、概ね順調だったと思う」


 クスっ、とクラスから少し笑いが起きる。隣にいる在原から肘でつんつんと脇をつつかれた。お前彼女にその似合ってないメイド服の写真送るぞコノヤロウ。連絡先知らんけど。


「それじゃーーーー最優秀賞目指して、行くぞお前ら!!」


 おー!!とクラスから声が上がる。ほとんど同じタイミングで違うクラスからも気合いを入れる声が聞こえてきた。





「おかえりなさいませ、ご主人様」


「おぉ……すげぇ、メイド長だ」


「すげぇ……ベルファストって呼んでもいいですか?」


「はっ倒しますよ」


 なんで俺がイギリスの軽巡洋艦のメイド長の名前で呼ばれなあかんのだ。いや、まぁたしかに練習する際にその声をめざしたけども。


 ちなみにだが、俺は首から『私は男です』のプレートを首から下げている。今日始まる瞬間にこれを渡された。


 ちなみに、既に2時間が経過している訳だが、客入りは物凄い数になっている。どこの誰が噂を流したか知らんが、女装メイド喫茶にめちゃくちゃ可愛いメイド男がいるらしいとの話を聞いたようだ。


「二名様でよろしいでしょうか?」


「お、おう………ベルファーーー」


「はっ倒す」









 ………もうやだ、帰りたい。


 なんか一々知識ある客がやってきた瞬間ベルファストベルファスト言われるし、果てにはセクハラされそうになるし。あ、そいつはしっかりと叩き上げて(精神的にも)料理来る前に教室から叩き出した。


 だがしかし、もうちょっとで休憩………休憩………なった!!


 教室の時計が11時になった瞬間、俺は裏に引っ込み、メイド服を脱いだ。そして電光石火の如く、体操服から制服に着替えあげて教室から出ていき、メリィちゃんを迎えに。


 廊下は人がごった返してるので走れないが、できるだけ急いで廊下を早歩きでーーーー


「………シルバさん?」


「よ、奇遇だなみぃ」


 目の前から歩いてくる見覚えのある金髪に足を止めたら在原の心の師匠であり、最近コンビを組んだシルバさんだった。


 そしてその隣には見覚えのない人が。


「あ、こいつ、俺の彼女。よろしくな」


「あ、どもです」


「……………」


 シルバさんの腕に隠れてぺこりと会釈してきたので、俺も会釈で返した。多分この一連であまり話さないタイプなのだろうと予想を立てた俺はすぐさま視線をシルバさんへ移す。多分、シルバさん以外に長く見られるのは嫌な感じがする。


「やっぱシルバさんはウレの?」


「おう。ぜひ来てくださいって連絡来たからな。弟子のメイド姿でも拝もうと思ってな」


「ほぇー……」


 この人、あいつの事結構気に入ってるよねやっぱり。だって隠れて在原のデート見守ってたもんね。


「……あ、そうだ。入口にメリィちゃん来てたぞ。早く行ってあげたらどうだ?」


「あ、はい。ありがとうございます」


「おう……ただ、なんかめっちゃでかい男のやつと一緒にいたけど…あれ大丈夫なのか?」


「はい。応援ですから」


 応援?と不思議そうに呟くシルバさんに一礼してから隣を横切る。


 目指すは、鬼島組時期頭領が護衛をしてくれているメリィちゃんの元へ。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ちなみにみぃは銀髪のウィッグを付けてるのでまじアズ○ンのベルファストになってます。違うのはクラシックメイドなのと、詰め物をしてません。


新作、『フェアリーテイルと空想の旅人』の方もよろしくお願いします。休日更新ですが。


『俺一人だけ魔王軍の元に召喚されたのだが……っ!』の方もよろしくお願いします。もうちょっとで終わりますが。

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