第2話

「ウレくんに彼女?」


「らしい」


 学校も終わり、家に帰り、夜ご飯も食べた後、俺とメリィちゃんはスティックヒューマン・オンラインにログインしているだけの状態でお話していた。


 メリィちゃんは逃げ出す際にノートパソコンとデスクトップPCとモバイルバッテリーと財布とスマホしか持ってきていなかったので、この前の服の買い出しに行く時には、あの伝説の「ねぇねぇどっちがいいかな?」をこの俺が経験できるとは思わなかった。


 なので、今の俺のPCデスクには二つのデスクトップPCが並んでいる。イスもこの前買った。


「へぇ……それはおめでただね!」


「あぁ。それは俺も全力で祝福してきた」


 全力で拍手しながらおめでとうと言ってきた。空き教室でのお昼ご飯だったため、祝い人は俺しかいないが、それでも嬉しいそうに「ありがとう」と言ってくれた。


 うん、友達が幸せなことってこんなに素晴らしいんだな。一年前までリア充タヒねとか言っていた頃が懐かしい。


「それでここからが本題なのだが」


「?」


 一旦言葉を切るとメリィちゃんが首を傾げる。可愛い。


「ウレがな、今度デートするから見守ってて欲しいと言ってきたんだ」


「………ほえ?」


 うん、分かるよその反応。俺も最初そう思ったもん。


「………え?いいの?そんなことして」


「ウレの彼女さんとも同意の上らしい。なんでもお互いかってと言うものが分からないから不安だと」


 ちなみにこれにはシルバさんも参加することになっている。なんでも「弟子の晴れ舞台には師匠もいかなきゃいけないだろう」とのこと。多分あなたは全力で弄ろうと考えてるだけですよね?


「と、言うことなので。メリィちゃん。デートしましょ?」


「はい!します!」


 ちなみにであるが、見事、この家へ住むことになったメリィちゃんだが、えー、一緒の部屋で過ごしています。


 勿論一緒に寝てるし、家にいる時は、風呂とトイレの時以外はずっと一緒。たまにベッドがアンアンキシムサウンドと化すが、それは仕方ないことである。だってメリィちゃんが可愛いんですもの。


 そしてデート当日。在原には「隠れて見守ってて欲しい」と言われたが、現在、俺は堂々と在原の隣に陣取っていた。


「………おい」


「あ?」


「俺は『隠れて』頼むって言ったよな?」


「言ったな」


 俺はスマホから視線を離さないで在原と会話をする。


「じゃあなんでーーーー」


「安心しろ。今日の俺とお前は名前も知らない赤の他人ーーーーお前らの前歩くから、それ見て参考にしやがれ」


 デートの待ち合わせで最近よく使われるようになったこの駅前。周りでソワソワと待っている男達や、彼女さんと合流した彼氏さんが初々しく会話をしている姿がなどが見受けられる。


 だがしかし、次の瞬間、全ての会話が止み、男女問わず、ある所へ視線が釘付けになる。


「………来たなこれ」


 スマホの画面には「もうすぐ着くよー!」とのメッセージ。


 視線を向けると、綺麗な銀髪をなびかせた、俺の愛しい人。


「みぃくん!」


「メリィちゃん!」


 ダイビングジャンプを繰り出して俺へ抱きつくメリィちゃんを2回ほどくるくる回転してからしっかりと抱きとめる。


 ちなみに、一緒に生活してるんだから一緒に出ればいいんじゃんという無粋な質問は無しな。なんでもこれがメリィちゃんがやりたいと言ったんだ。異論は認めん。


 今日のメリィちゃんの服装は、淡いピンク色のワンピースに薄い白色なカーディガンというとてもシンプルなデザインだが、それがメリィちゃんの美しさを殺さないで、服がメリィちゃんの可愛さをとても際立たせている。


 これを、シンプルに表現するとMMTである。ちなみにメリィたんまじ天使の略ね。


 情けないことに彼女がそこにいるやつも彼女待ちの男どもがメリィちゃんをガン見している。ちなみに彼女にビンタされてました。いい気味である。


「……あ、在原くんっ」


「……っ、佐倉ちゃん」


 ちなみに在原はこちらを一度たりとも見ずにずっとスマホを見ていた。


 チラッと一瞬だけ在原の方を見る。


(………なるほど、可愛いな)


(だね、可愛いね)


 アイコンタクトで会話をする。在原の彼女さんは黒髪ロングでめちゃくちゃ清楚って感じだった。


 ……あいつ確か清楚系が好みって言ってたな。


「行こ!みぃくん!」


「あぁ」


 俺とメリィちゃんは手を合わせて、そのまま指を絡める。後ろの方でも動き出す気配がした。


 さて、これより在原カップルのための先導デートの始まりである。


 あ、シルバさんみっけ。

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