第1話

 とても素晴らしい光景だ。目の前で元気そうに跳ねる銀髪を見て本当にそう思う。


「みぃくん?ベーコンいる?」


「いるー」


 フリフリのエプロンをひらりと舞わせて、こちらへ振り向くメリィちゃん。


 うん……とても素晴らしい光景です。神様ほんとありがとう。メリィちゃんをこの世に誕生させてくれて。


 夏休み、メリィちゃんの親代わりというただのクズからメリィちゃんを救い出して以来、この家で過ごしており、もう同棲まで言ってしまった。


 荷物類は必要なものだけ予め持ってきていたらしい。リュックサックの中からデスクトップPCが出てきた時はまじで驚いた。一体何キロあると思ってるの……。


 そして、元々メリィちゃんが通っていた高校だが、自主退学をこの前父さんたちと行ってきた。俺が通っている高校に転校という事も考えたが、今の時期に転校しても無駄だろうという考えから、自主退学という結果になった。


 中卒では就職には色々と不利。なのでメリィちゃんはハナミさんの秘書の仕事を承諾し、現在一生懸命勉強中である。


 ネトゲで出会って3年。相棒として戦場を駆け抜けた期間が2年。そしてリアルで初めて会ってから四ヶ月。付き合ってから三ヶ月で同棲か………-。


 うーん。どこのエロゲーかな?


「おまたせ!スクランブルエッグ!」


「おぉー!きたきたー!」


 ………でも、色んなことが色々とどうでも良くなるほど、今、凄く幸せである。


 ……うん、なぜいつもと変わらないスクランブルエッグなのにいつもよりも美味しく感じるのだろうか。愛情か?やっぱり愛情なのか!?


「食べさせてあげよっか?」


「是非」


「ふふっ、はいあーん」


「あー………」


 遅刻しかけました。













「………お前、なんか今日の弁当いつもと違くね?」


「こわっ、え?なんで分かるの?」


 なんか久しぶりに会話したような気がするウレこと在原剛。最近では正式にシルバさんのコンビプレイヤーとして周囲に認知され始めたプレイヤーである。俺もボイチャして素敵な人見つける宣言はどうしたのだろうか。


「いや……なんでって言われても……まぁいつもお前の弁当見てるし……」


 まぁこいつは俺が自分で弁当作ってるって知ってるからな。


「それに……なんてーの?なんか……甘い」


「は?」


「いや………なんか甘いんだよ……上手く説明できねぇけど……弁当から漂ってくるオーラが……」


「…………………」


 心当たりがありすぎる。なぜならこの弁当、メリィちゃんの愛情がたっぷりと詰まっており、「えへへ……みぃくん好き好き……愛妻弁当……えへへ……」となかば無意識に呟いており、この日の早川家のブラックコーヒーの消費量が多かった。主に父さんと母さん。


「………誰が作った。おい吐け」


「……………」


 俺的には別に言いたいし、めちゃくちゃ自慢したいが、こいつにそうなった理由を説明するのはものすごく憚かれる。


「………詳しくは言えん。だが……なんかまぁ色々とあったな」


「……そうか。じゃあ質問変えよう。お前、なぜ最近殺戮兵器僕達の動画に頻繁に出ている」


「それはフヨさん達に聞いてくれ」


 最近、本当に何故か俺のスマホに殆ど毎日のようにフヨさんかコージさんから連絡が来る。それは一緒にゲームやろーだったり、今こんな企画してるんだけどさーとか、様々な。でも六割は企画に巻き込まれてる。


 是非質問コーナーをやって欲しい。その時に俺質問するから。でも、あの人たちの性格上、絶対にやらない。不満箱はやってたけど。


「あ、あと、白亜の迷宮クリアおめでとう。二組目だな」


「だな。まさかまたあの鬼畜迷宮に徹夜で潜るとは思わなかった」


 金曜日、棒人ゲーの運営に殺僕が生放送で配信してもいいかと問い合せたところ、OKを貰ったらしいので、またまた六人で挑戦することになった。


 クリアタイムは7時間49分。またまた徹夜するまでやってしまい、今度は称号プライド持ちではない白虎だったため、なんとか倒すことができた。


 そして、ここで今回の生放送がツイッテーのトレンド入りした事件があった。なぜなら、フヨさんが、第6弾アップデートが実装されてから初めて『ユニークアイテム』を手に入れたからである。


 もうチャット欄は大荒れ。こうして、スティックヒューマン・オンライン公式ホームページに新たな名前が連なることとなった。


 ちなみに、その時の投げ銭がなんと合計約30万になってたらしい。協力してくれたお礼ねと言ってアマ〇フ五万円分が送られました。


「それと充、俺……重大発表があるんだ……」


「……?」


 なにやら真剣そうな顔で俺を見つめる在原。


「………実は俺ーーーー夏休みの時に彼女が出来たんだ!」


「………………………はぁ!?」



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