第7話

「みぃくん!!」


「Why!?」


 殺僕の皆さんと白亜の迷宮を攻略した次の日の夜。俺は何故かメリィちゃんが自宅へ押し掛けるという謎事件(嬉しい)が発生していた。


 しかし、一瞬にしてその嬉しい気持ちが霧散し、一気に怒りの気持ちが沸き上がる。


 ーーーー誰だ。メリィちゃんを泣かせているクソ野郎は。


 すぐさまくるりと体を反転させてドアを閉める。一応周りを確認したけど、念の為に鍵もガチャりと閉めてチェーンもしっかりと掛けておく。


 そして、メリィちゃんを抱き抱えて俺の部屋まで運び、ベッドへと下ろし、持ってきていたリュックサックを床へ置いた。


「……話せる?」


「………」


 メリィちゃんは弱々しげに頷いた。


 簡単に説明すると、メリィちゃんがいわゆるリアル体で払え状態にあるらしい。


 詳しく説明すると、まず、今のメリィちゃんの親代わりゴミなのだが、その父がヤのつく職業さんから金を借りていて、父が夜逃げしたらしい。死ね。


 そんで今日の朝にそのヤのつく職業さんが家に押しかけてきて「あぁん?このツケどうしてくれるねん」って凄いメンチ切られたらしい。死ね。


 そんで、借金は一千万。どこからか調べたが知らないが、メリィちゃんを差し出せば一千万チャラにしてやると言われたらしい。死ね。


 そんでその親代わりちりあくたはそれを了承したらしい。滅べ。


 結論。とりあえずドラム缶と固まる前のコンクリートを準備してマリアナ海溝に放り投げる。


「ちょっと待ってねメリィちゃん。今からドラム缶とコンクリ用意してくるから」


「待って待ってみぃくん!何するつもりなの!?」


「どいて!メリィちゃん!あいつら殺せない!」


 俺はメリィちゃんのためならなんだってするぞ。それがメリィちゃんを悲しませるのなら全力で排除してやる。


 とりあえず、どうやったら証拠も残さないで奴ら殺せるかな。やっぱり丈夫な草とか?ほっといても自然に帰るべあれ。


「本当に………いいから」


「……………」


 今にも震えーーーいや、震えている両手で俺を全力で止める。


 放っておいて。メリィちゃんからの全力の訴えが聞こえた気がした。


 ……でもなぁ。ヤーさんって結構しぶといと聞きますからな。多分見つかるんじゃないかな。ほら、それにメリィちゃんを取り戻すために捜索願を出されるのも困るし………。


 ……やっぱ殺るしかーーーー。


「みぃくん!その今にも殺しに行きますみたいな表情辞めて!」


「でも、このままだとメリィちゃんが」


「大丈夫だから…………」


 震えている声と手。絶対大丈夫なはずじゃないのに、大丈夫と言い張る。


 ……やっぱり解決させるしかないのか……。


「……とりあえず、メリィちゃんは疲れてると思うから寝てていいよ」


 と、メリィちゃんを無理やり押し倒してベッドへ横にならせる。


「……みぃくん?」


「大丈夫だから……君は、俺が守るよ」


 手を瞼に当てて瞳を閉じるように手を動かす。しばらくすると、メリィちゃんからはゆっくりとした呼吸音が聞こえた。どうやら相当精神的にも体力的にも参っていたようだ。


 さて………メリィちゃんには悪いと思うが、ちょっとスマホを拝借させてもらおう……指紋か。指失礼。


 メリィちゃんの指を借りてスマホロックを解除し、某大手有名配達会社のアプリを開き、メリィちゃんの住所を探す……あった。多分これだな。


 住所を写真で撮る。具体的な場所は行きながら確認するとしてーーーーー。


 メリィちゃんを起こさないように移動する。目的の場所は、俺の通帳が入っている机の引き出し。


 開けてから通帳の残高を確認する。この中には俺が実の両親から慰謝料として存分にふんだくったお金が眠っている。あんなゴミみたいな親から受け取った金だけに、ぶっちゃけそんな使いたくはなかったが、この時ばかりは大量に使わせてもらおうか。


 ………しかし、足りんな。具体的には後指が三本足りない……。


 ……どうする……?借金は一千万。銀行なんてそもそもお金なんて借りれないし、そもそもお金を貸してくれるとこなんてーーーーあっ。


 俺は直ぐにスマホを取り、とある人へ連絡を撮る。


「……もしもし?どうした?こんな時間に」


「…………すいませんーーーーー」


 力を、貸してくれませんか?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る