第6話

 第六面、第7面とそれぞれ1時間の攻略時間を有し、世間一般的に朝と呼ばれる6時。昨日の夜の10時から攻略を初めてから8時間が経過した。


 一日の三分の一である。この前寝ないで生放送をしていたキラさんが「生放送にすれば良かった………」とボソッと呟いていた。


 六面と七面のボスは、さすがにカメレオンゴーレムよりも厄介ではなかった。だって壁と同化なんてしてなかったもん。


 七面のボスである『ホワイトパラディン』という白の甲冑で全身を覆った巨大なリビングアーマー系の敵だった。俺の攻撃魔法が久々に輝いた気がする。


「やっと次でラスト……」


「疲れてきた……」


 現在は30分の小休憩中。ラスボス前なのでしっかりと集中力を養うために休憩ている。


 殺僕の皆さんは仮眠すると言っていたが、大丈夫なのだろうか。寝たことによって眠気が一気に来てそのまま寝過ごすのではないか?


 実際俺はあった。ある日、ソロでダンジョンに行っていた時だが、余りにも眠たすぎてダンジョンから出ることもせずに寝てしまったことがある。


 別にそんなに驚異ではないダンジョンに潜ったからということもあるかもしれない。だから俺は30分ねら放置しても大丈夫だろという気持ちの元、寝た。


 結果。当然健康的な8時間睡眠をしてしまっていた。さすがにキャラも死んでいた。


 よって大丈夫かなー?と心配するが、多分大丈夫だでしょ。


 ……あの面白アイマスクつけてるのかな。



 30分後。


「完全復活!!」


 フヨさんが大声で叫んだ。確かにさっきみたいに少し眠気の入った声ではなく、シャキシャキとした声になっていた。


「よく起きれましたね。俺、前にやった時失敗したんですけど……コツとかあります?」


「慣れ」


 おっふ。めちゃくちゃシンプルな答えだった。


「よし、そしたらラスト!初見クリア目指してがんばろー!!!」


「「「「「おー!!」」」」」


 ボス部屋の奥に設置された魔法陣の上に乗って転移する。ラスボス特有の長い一本道に転移させられたのでぱぱっと移動してボスの顔を拝見する。


『白亜の館の守り神』


 部屋に入った瞬間にシステムメッセージが画面の真ん中に出てきた。今までにない事だったのでちょっとびっくりした。


『その手に守りしはかつての主人の残したもの贈り物


『館に踏み入れるとき、最強の守護者がその牙を向く』


 咆哮。そして、目の前にある館のオブジェクトから何かが出てきた。


「……うそ、だろ……」


「まさかの称号プライド持ち…レアモンスターじゃん」


『白亜の館の守り神 白虎』それが、ボスの名前だった。


 このゲームには、いわゆるレアモンスターというものが存在する。


 出現する確率はうんパーセントとかのレベル。他のモンスターよりも強い代わりにたくさんのレアアイテムをドロップしてくれる。


 特徴としては、名前の前に先程の白虎のように称号が着くのだ。


 俺は見た事ないが、琥龍の雄叫びでも称号持ちが現れたらしい。


 公式設定では、他者を退け、その種の中での頂点に立ったものと書いてあった。


 故に誇りプライド。だからこその称号プライド


「ガァァァァァ!!」


 戦闘開始。白虎の叫ぶ声を開始の合図としてキャラを動かせるようになった。


 まず、ふーすけさんが盾スキル15で覚える『挑発』という、自分が狙われるスキルを使用し、ヘイトを集める。白虎がふーすけさんへ向かったのをメリィちゃんが見てから、移動、2人で横になり、攻撃してきた白虎の爪を綺麗に弾き返した。


 ジャストガード。タイミングよく盾で防御した時に相手の攻撃を弾き飛ばすという高等テクニックだ。


 すかさずフヨさんが突っ込み、俺とキラさんで補助魔法をフヨさんにかけて攻撃力の底上げを行う。


 四足歩行の白虎。復帰が早く、ほぼ完璧に突っ込んだフヨさんの攻撃をブロックした。そのせいで2割程度の攻撃しか通らない。


「チッ」


 フヨさんが舌打ちをして離れる。そして、白虎が攻撃の準備をーーーーって。


「はぁ!?」


 範囲予測の印が出る。その範囲の広さにブレス系の攻撃だと思われるが……如何せん、範囲が広すぎた。


 みんな慌てて退避するも、虚しく全員がブレスの生贄となる。


 同時に、バッドステータスがつく。棒人間が氷に囚われているマークなので、名前は『凍結』。棒人間が凍ってしまい、その際に受けるダメージが二倍になるという凶悪なバッドステータス。


 抜け出すのにはコントローラーをとにかくガチャガチャとやるだけ。既に耳からはガチャガチャガチャガチャとやっている音が聞こえる。


「まずい!これで攻撃くらったら本っ当にまずい!!


 ふーすけさんの本気で焦っている声が聞こえる。コージさんの「そんなの分かってるよ!」という声が聞こえた。


 白虎が前足を掲げ、それを地面に打ち付けた。


「あっ」


「あっ」


「あっ」


「あっ」


「あっ」


「あぁっ!」


 衝撃波が氷を割り、俺たちのHPが素晴らしい勢いでゼロになった。


 つ・ま・り……?


 画面が暗くなり、『GameOver』というゲーマーにとってはできるだけ見たくもない英文字が出てきた。


 …………………


 …………………………


 ……………………………………………


「「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?」」


 発狂した。


 もう二度と潜りたくないと思いました、まる


 殺戮兵器僕達プラス双棒。攻略時間、8時間42分。失敗。


 白亜の迷宮白虎戦。戦闘時間、30秒。

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