第3話

 休憩も終わり、第三面のステージへと移動する。しかし、やはりと言うべきか当たり前と言うべきなのか……何も景色が変わんねぇ……。


「こりゃちょっと精神的にもきついかも……」


 コージさんがボソリと呟く。現在、この迷宮に潜って既に1時間以上経過している。一つ一つのステージが長い上にボスも超強い。気力と体力の勝負だなこれ……。


 集中力はちょくちょく休憩挟んでいるから問題はないとして、精神がどれだけ持つか……。


「しかもあれだよね。スレイプニールは五時間もクリアにかかったんだよね。ユニークアイテム使って。俺らもっとかかるんじゃない?」


「そうですね。ハナミさんから聞いた情報によると、第5面からめんどくさくなるって言ってました」


 ふーすけさんの言葉に事前情報を聞いた俺が答える。ぶっちゃけゴリ押しで行けるっちゃ行けるが、ボスが超面倒臭いとのこと。


「まぁでも、これ頑張れば、明日俺達MVSだよ!もっとがんばろーよ!」


「ちょっとフヨ煩い」


 ちなみにモストヴァリアブルスティックヒューマンの略ね。ボスにはモザイクが掛かっていて、なんとなくの全体像しか把握出来なかったが、スレイプニールがここをクリアした次の日はホームページに載ってた。


「……ってかフヨさん1番疲れてないですか?そこら辺大丈夫ですか?」


「大丈夫よ。慣れてますから」


 ヘッドホン越しでフヨさんがドヤ顔するのが見えた。



 第3面ボスはホワイトドラゴンという龍のボスだった。しかし、これ系の相手だったら何回も何回も戦っているため、そこまで苦戦しなかった。


 第4面のボスのシロアリという群体系だった。メリィちゃんが悲鳴あげながらバッタバッタ盾で吹き飛ばしていた。


 そして、ハナミさんがこっからうざくなると言っていた第5面。今までのステージよりも分かれ道やら行き止まりやらが体感倍ぐらいに増え、トラップの数は減ったもの、その全部が即死系のトラップだった。


「……め、めんど……っ!」


 つい心の声がボソッと漏れた。


 いや、ほんと……よくスレイプニールの皆さんここクリア出来ましたね!後でなんでクリア出来たか聞こう。


 合計時間は既に4時間まで迫っている。同じ景色が続くせいで、今までのダンジョンと同じように、景色を楽しむということは出来ない。


 ここまで来ると若干ストレスが溜まる。あ、今フヨさんが湧いた敵を無言で切り刻んだ。多分フヨさんも結構ストレスが溜まっている。


「今マップ進捗どれくらい?」


「えっと……あ、ほぼ八割埋まってますよ」


「……もうほぼ探索してるんだ。運悪いね、俺達」


「げ、元気だしましょう皆さん!ほら、なんだかんだこういう時ってボス部屋に続く道がーーーーありました!」


「「「「「あったの!?」」」」」


 急いでメリィちゃんの元へと行くと、いかにもな入口があった。流石紅一点のメリィちゃん。ゴールさえも引き寄せてしまうのか。


「はー……やっとボス戦だ……ストレス解消しよ」


「ねぇねぇフヨ。タンク辞めていい?」


「だめ~」


「はいはーい。エリクサー配りますよー」


 三桁あったエリクサーも、今では80個まで減っている。これは終わったら1人で素材集めかな。


 エリクサーで体力とMP、ついでに俺たちの気力も回復させてからボス部屋へなだれ込む。気のせいか、殺僕さん達の棒人間がギラギラと目がなってたような気がする。目、ないけど。


「殴り込みじゃァァァ!!」


 フヨさんが意気揚々とボス部屋へ突っ込み、その後に俺たちが続いた。


 ハナミさんからはネタバレになるからと言ってボスの情報はあまり教えてくれなかったが、ここのボスだけは少しだけヒントを貰っていた。


『いいかみぃくん。白亜の迷宮のボスには気をつけろ。全員が2回以上ーーー特に、タンク役のゴランは五回死んだ』


『ゴランさんが5回も……?』


『あぁ、だから言っておく。床と壁には気をつけろ』


 ボス部屋に入ると、白い床に青色のラインが所狭しと引かれていた。


「……なんでしょうかこれ……」


「……まぁ今までの経験から言うと、それ絶対触れない方がいいよね」


「……それよりボスはどこだ?姿全然見えないけど……」


 いつもは部屋に入ると、すぐさまボス戦だったが、その場でいくら待ってみてもボスは現れない。


「……試しに踏んでみます?ライン」


「……いや、今はまだやめとこう。みんな、ライン踏まないようにしながら探索しよう」


 フヨさんの言葉にそれぞれが行動。ジャンプを駆使して、ラインを踏まないようにボス部屋を移動する。


「……どゆこと?ほんとに現れないんだけど」


「ほんとに。これ結構時間の無ーーーあ」


「「……『あ』?」」


 キラさんが何かやっちゃったー的な感じな声を出す。フロアが揺れて、めちゃくちゃ嫌な予感がした。


「………おいおいおい?キラ?もしかして」


「…ごっめーん。踏んじゃった」


「「「お前ええええ!!!!」」」


 キラさん以外の三人の絶叫が響く。ごごごごと壁が盛り上がり、そこから奇妙な笑みを浮かべた何かが現れた。


 ボス名は……『カメレオンゴーレム』

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