第1話

 快晴。空を見上げると雲ひとつもなく、憎たらしいほどの青空が視界いっぱいに広がり、夏だと言うのに、涼しい風が吹き、爽やかな気分になる。


 少し標高のあるとある県の広場。今日、ここで俺は何をしているのかと言うとーーーーーー


「イタズライレブンの必殺技を再現しよー!!」


 ーーーー何故か殺戮兵器僕達の実写動画の特別ゲストとして登場してます。


 フヨ、キラ、コージ、ふーすけのいつものメンバーに俺ことみぃが混じってます。


 はい、緊張めちゃくちゃヤバいです。画面外ではメリィちゃんが応援してくれてるので、それだけが唯一の救いです。


「今回、えー特別ゲストとして、あの有名な!みぃくんにね、来てもらった訳ですが」


「あの……俺ほんとなんで呼ばれたんすか…?」


 昨日、初めて殺戮兵器僕達と一緒に棒人ゲーでコラボし、撮影が終わったあとも気分がハイになって2時間くらい狩りを続けたのだが。


 話もめちゃくちゃ意気投合し、フヨさんから『明日暇?メリィちゃんもおいでおいで』と誘われたため、L○NEで集合場所とか色々聞き、さていざやってきたら、まさか実写動画を撮るなんて……コージさんからマスク貰ったよ。


「みぃくんと話すの楽しいから。後メリィちゃんとの馴れ初めとかでいじろっかなって」


「おい」


 フヨさんが冗談交じりに笑いながら言った言葉にすぐさまコージさんがツッコミを入れる。


「あちらにね、メリィちゃん来ております!画面外ですが」


「みぃくん頑張ってー!」


「羨ましいなぁこのこのー」


「ちょ……キラさんちょっと痛いです。私怨入ってません?」


 ちょい強めに肘でつんつんとつつかれる。脇腹がちょっと痛かった。


「………よしやろっか!」


 何やら変な空気になり、沈黙が続いたところでフヨさんがちょっと強引に斬る。そしてふーすけさんがよいしょ!と言ってから散開した。


「みぃくんは部活何やってたのー」


 キラさんがのほほんとした感じで聞いてきた。


「一応、中学では卓球やってましたよ。楽勝だろと思ってたら意外とキツかった思い出がありまして」


 卓球は他の部活と比べたら楽に思われがちだが、そんな事はない。体力作りのために毎日校舎周りを1.5キロ走ったり、ボールを追いかけるだけで結構疲れる。カットマンだったから尚更疲れてたな俺。


 しかも、走る時はなんで陸上部とサッカー部と一緒に走らなければならんのだ。まぁちょっと楽しかったけど!


 過去のキツかった思い出に思いを馳せ、顧問の先生を思い出すと寒気がした。


「サッカーはないの?」


 フヨさんが、ボールを持って聞いてきた。


「小学生の時にゴール前に陣取っててオフサイド関係なくボール蹴ってました」


 あれかなり高確率で決まるんだよな。


 さて、ここでだが、イタズライレブンというものを紹介しておこう。ラベルファイブが出している超次元サッカーという中学生がサッカーで時を停めたり、炎まとったり、後ろから魔神出しちゃう厨二心が中々刺激される全年齢対象ゲームだ。


 最初に挑戦する技は、主人公である金堂守が覚醒するきっかけとなった『デウスハンド』という技だ。


 キーパーはフヨさん。キッカーはコージさんだ。


「蹴る前にデウスハンドって言うのおかしいから!蹴ってから言うね!」


「それほんとに大丈夫?」


 ちなみに俺は待機ということでメリィちゃんの横で座っていた。


「……あれ成功すると思う?」


「………絶対無理だと思う」


 カメラにこの声が入っていないことを祈り、二人の行く末を見守る。コージさんが助走を始めた。


「はぁぁぁぁ!デウスハンドー!」


 気合いの入った声が広場に響く。しかし、現実は無情である。1歩も動かないフヨさんの隣で虚しくゴールネットが揺れる。


 ………やっぱり?


「もう1回!もう1回!」


 フヨさんが笑いながらコージさんに講義を始めた。耳元でこしょこしょと何かやってるため、多分次はもっと弱くねとか言ってると思う。推測だけど。


 気を取り直して二回目。コージさんが助走を始めた。


「っ、デウスハンド!」


 ぼてっ、ぼてっと転がったボールに勢いよく飛び込んでキャッチするフヨさん。


「「「おいおいおいおい!!」」」


 その瞬間、三人からいっせいにツッコミが走った。色々とグチグチと言い争いが始まり、フヨさんの「こう、手の中に来たって!」という声がこちらまで届いた。


 それを見て俺達は大爆笑をしていた。


「我々は大人ですから。えー、妥協という言葉を知ってます」と言ったフヨさんは次の技へ移動しよう!と無理矢理企画を進ませた。


 次にやる技は『キルゾーン』という絶対に再現不可能な技である。蹴りあげたボールを3人が闇を纏いながら回転して蹴るという技だ。


 最初に蹴りあげる魔道というキャラだが、実は俺、そいつの声真似できるので、蹴るのはフヨさんとコージさんとキラさんに任せた。


「ユー○ューバーの人ですかー!」


 準備をしていると後ろから小学生が叫んできたのでびっくりした。


 ここら辺まで弱めで蹴ってねーと綿密な打ち合わせを行っていざ本番。腕を組んで、片足をボールに載っける。ちなみに、子供たちは飽きたのか帰ってました。


「……キルゾーン、開始」


 パチン!と指を鳴らしてからボールを蹴る。てい!と蹴ると、俺の後ろから三人が回りながらボールへ近づく。


 そして三人が止まったボールを中心にぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐる………傍から見たら怪しい儀式である。


「まだ!まだまだまだまだ!」


 ぐるぐる回る三人。今だ!と言って回転をやめると、せーの!と言いながらボールを蹴った。フヨさんが。


「やったー!決まったー!」


 俺はあそこまで3人のように喜ぶことは出来なかった。


 そして、最後なのだが………。


「……ゴールずらし!」


 ガンッ!



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

今回はネタ100パーセントでした。途中で語った卓球のやつとサッカーは全て作者のことです。毎日1.5キロ。休日は3キロを陸上部とサッカー部と一緒に走ってました。

たまに吹奏楽部が混じってました。


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