第7話

 1週間後の金曜日。スティックヒューマン・オンラインの公式ホームページに、特別ゲストの詳細が発表された。


 まず、声優さんである。重要なNPCキャラの声を当てている人が五人、なんと参加してくれるようだ。


 そして、ゲーム実況者さん。とある大手の動画投稿サイトにてスティックヒューマン・オンラインの実況プレイをしている『殺戮兵器僕達』という四人組の人気実況者さん達がなんと参加してくれるらしい。俺あの人達の実況いつも見てるから素直に嬉しい。サインとか貰えるかな。


 そして、大目玉(らしい)である俺達ーーー運営の使徒スレイプニールである八人の全員参加。


『明鏡』ハナミ

『要塞』ゴラン

『聖剣』カリン

『賢者』アラン

『一刀』シルバ

『流星』スピカ

『双棒』みぃ&メリィ


 ……あれ、よく見たら俺だけ平仮名じゃん……そして、俺たち一括りにされてる。まぁいいけど。


 とにかく、八人全員の参加が決定したらしく、スレではえらい大騒ぎになっていた。


 そして、この一週間は俺たちにDMを送ってきた神崎さんと言う人と打ち合わせをしていた。


 会場入りは何時から~とか、ホテルには前日にチェックインを~とか、同室で大丈夫ですか~とか、まぁ結構色々。あ、勿論同室OKにした。だって付き合ってるからね。


 ちなみに、これはツイッテーでもトレンド入りをしていた。これで興味を持った人がプレイしてくれるといいんだけど。スマホのアプリでも配信されてるからぜひ軽くでもやって欲しい。


 そして更に1週間後。7月に入り、夏真っ盛りでセミもミンミンうるさくなってきたとある日。俺たち運営の使徒スレイプニールはハナミさんによって招集された。


 場所指定されたのは王都ユグドラシル中央広場の噴水前。無事全員集まった俺たちを見て周りのプレイヤーが何やらチャット欄でざわざわしている。


 ハナミ『皆、私が専用のメッセージ部屋を作るからそこに入って欲しい』


 スティックヒューマン・オンラインにはワールドチャット、パーティーチャット、個別チャット、そして限定チャットという複数人の知り合いとチャットをしたい時に使えるチャットがある。


 やり方は個別チャットに招待状が来るからそれを押したら自動的に切り替わる。便利な機能である。


 ハナミ『皆入ったか?』

 シルバ『問題なし』

 カリン『大丈夫です』

 ゴラン『問題ないぜ』

 アラン『大丈夫だよ』

 スピカ『おっけーだよ』

 みぃ『問題なしです』

 メリィ『大丈夫です!』


 ちなみに、今回はメリィちゃんとボイチャはしていない。理由はボイチャしちゃうとみぃくんの声に集中しちゃってチャット出来ないかららしい。なんか嬉しいような悲しいような……。


 ハナミ『よし、全員参加か……』

 シルバ『どうしたのよ明鏡さんよ。俺たちを呼び出すなんて珍しいじゃないの』

 ゴラン『そうだな明鏡。一体どうしたんだ?』

 ハナミ『あぁ、君達提案なんだが、今度このゲームにギルドが追加されるだろう?』

 みぃ『そうですね。ギルドがないのに違和感を感じたプレイヤーは結構いましたね』

 メリィ『みぃくんもその内の1人だね』

 アラン『俺もだ』

 スピカ『ちなみに、私も~』

 ハナミ『あぁ、そこでなんだが……みんな、私が作るギルドに入ってくれないか?ここの八人だけで』


 ……………ん?


 ハナミさんの発言に指が止まった。


 ハナミ『名前も既に決まっている。スレイプニールだ。まがりなりにも、私達はこのゲームのトッププライヤーだ……ギルドでもトップを取ってみたいと思わないか?』


 この時、ぶっちゃけ言うと俺は頭にはてなマークが沢山浮かんでいたが、ゲームプレイヤーというものは単純で、1度は一位を……!とかを夢見てるやつが多い。


 そう、この時ばかりは多分全員の心が一致した。


『何それ超面白そう!』と。


 ぶっちゃけるとトッププレイヤーはひじょーにやんわりとしており、当然、俺たち以外にもトッププレイヤーと呼ばれる人は多い。あの人とかあの人とか。


 在原?あいつはまだフロントプレイヤーだよ。


 とまぁ、トッププレイヤー沢山いるため、順位が付けられていない………とういうより付けられない。


 しかし、ギルドだったら順位は如実に出てくるだろう。他のゲームだってそうだからな。これから始まるギルド戦で、ちゃんとそういった順位が付けられるやつが出てくるはず。


 つまり、これで俺たちは名実共にトップに立てるという事だ。


 後、多分皆さんソロなのでギルドに入るメリットはあんまりないと思われ。こうやってギルドに誘ってくれる人がいたら入るだろう。


 スピカ『ちょー面白そう。乗った』

 ゴラン『同じく』

 アラン『同じく同じく』

 シルバ『乗った!』

 カリン『是非』

 メリィ『私も大丈夫です!』

 みぃ『俺もです!』

 ハナミ『そうか、皆ありがとう。みんなでこのゲームの正真正銘のトップになろう』


 おー!とみんながチャットを打つ。これでまた、新たな楽しみが増えた。


 そして、日は流れて7月29日。夏休みに入ったということなので、バリバリの平日でも遊びに行ける。


 課題は既に全力でやって終わらせた。後は遊び呆けるだけであるが、今日は明日と明後日にあるスティックヒューマン・オンラインの公式イベントに参加するために移動をしないと行けない。


 そして、前日から家で泊まっていたメリィちゃん。一緒に行きたいそうで、新幹線のチケットを俺と同じ駅からにしていたらしい。まじ尊い。


「それじゃ、行ってきます」


「行ってきます」


 親は既に仕事に行っているため、行ってらっしゃいの声は聞こえなかったが、前日にめちゃくちゃ頑張ってね!と言われたため、幻聴だが、行ってらっしゃいの声が聞こえた気がした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る